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2030年、石油産業の大壊滅が始まる。

石油産業の壊滅は2030年ころだと言われている。これは世界の常識だと思っていた。少なくとも中東諸国や石油メジャーはそのための手を着々と打っている。

昨今の地球温暖化、海洋プラスチック汚染、相次ぐ異常気象、自然災害。地球環境は、人間の経済活動を支えきれなくなって来ているのは明白だ。それをもたらした最たるものが化石燃料の利用なのだ。

EUも国連も、このままではまずいと警鐘を鳴らしている。2050年には完全ゼロ・エミッションを公約している。つまり二酸化炭素を全く出さない社会を実現しなければまずいと考えている。しかし、私はもっと早くするべきだろうと考える。人類は絶滅の瀬戸際にいるのだ

我々は、モアイ建造のために豊かだった島の資源を狩りつくし、最後は住民通しで争ったイースター島の教訓に学ばねばならないだろう。これを地球規模で行うことはできないのだ。

と、いうことで、2050年にゼロ・エミッションを達成するためには、今から10年後、2030年頃には技術的なロードマップが見えていないければ行けない。いや、そのロードマップを描くぞという気概をもった者にならなければいけない。

日本の石油元売り最大手はJXTGエネルギーだが、その社長の一問一答が日経新聞に載っていた。あれ?と思った。

別に悪いことを言っているわけではない。しかし、この記事を読んで、2つ心のモヤモヤが残った。

一つは、「2040年とはずいぶん悠長すぎるのではないか?」という点。

前述のとおり、世界は2050年のゼロ・エミッションを掲げている。そのための技術的ロードマップは2030年には完成しているというのが世界のコンセンサスだ。つまり、2030年にはもう、石油に依存したこの200年の文明の終焉が見えてくるという意味なのだ。

当然ながら終わりが見えているものに投資をする者はいない。2040年にたとえ需要そのものが半減で済んでいたとしても、半減した状態で安定しているということはないだろう。その数年後には石油依存の文明自体は終わるのだ。石油に依存した産業は壊滅し、なくなっていると考えるべきが自然なのだ。

2040年という見通しが、非常に悠長に見えるのはそういうことだ。往々にして、業界の中の人にはその急激なスピード感が見えていない。いや、コダックの幹部がデジカメをおもちゃだとみなしたように、見えていても見ないふりをしてしまうのかもしれない。

例えば、国際エネルギー機関の専門家が出している再生可能エネルギー容量の予想は非常に直線的な見通しを毎年提示しているが、実際には指数関数的に伸びた。毎年予測値を見直した結果、下記のようなグラフになってしまったのである。

そして、もう一つの違和感は、あくまでガソリン需要の半減が外部的環境としてどこかから訪れるような口ぶりだ。これぞ、高度経済成長期以降の内部純粋培養人材による「ザ・他人事」の象徴だ。

戦後日本の石油産業は荒武者のような開拓者が多数いて、市場を切り開いていったはずだ。日本の石油産業の今があるのは、「ガソリン需要がすごくなるかもしれないけど~」という受け身であっただろうか。否、「ガソリン需要の高まりは我々が作り出す!」という気概があった荒武者揃いだけであったはずだ。

たとえ、2040年にガソリン需要が半減するとして、それをアナリストのように正確に予測するようなことが経営者の仕事なのであろうか。いや、そうではない価値を創り出すのが経営者の仕事のはずだ。

真の経営者とは、自ら壮大な夢を持ち、それに対して会社を鼓舞する人のことである。サラリーマン経営者をたてて、縮小市場で撤退戦をやるだけになってしまうのか。

市場は変わる。世界は変わる。何もかもが劇的に変わる時代がやってくる。力の所在は変遷し、今までの戦い方は全く通用しなくなる。

石油を取り巻く環境が変われば、石油化学の需給関係も変わる。グローバルダイナミズムの中で先を見越した戦略を積極的に立てていかねばならない。体力のあるうちに劇的な方向転換を図らねばならない。ゾンビ企業として生きながらえることだけはやめてほしい。

発電にシフトしていることを記事中では書かれているが、世界にはもっとでかいことを考えている人もいる。例えば中国はABBと組んで、アジア全域に大電流直流送電網を組み上げることを計画している。これができると日本は全く発電所が要らなくなるかもしれない。

これは、重電の世界だけで起きることではない。例えば人工知能による電力グリッドの効率化やナノテクノロジーによる直収送電の効率化などで起きるのだ。中国やロシアとのゲオ・ポリティクスも非常に重要であろう。

やるべきことはいくつかある。日本にはまだその技術がある。例えば、水素サプライチェーンだ。石油精製所はもう日本にはなくなるかもしれない。その時には水素の循環エコノミーができてくるかもしれない。水素は日本が技術優位性を持っているエリアの一つだ。世界に先んじて手を打っておくことは非常に重要な意味を持つ。

実は、あと10年たつと、人口光合成の技術に目途が立ってくる。日本から出ている技術を他国に先を越されて実現されることは避けたい。であれば、日本の企業は、もっと積極的に投資をしてもよいのではないだろうか。

指をくわえて撤退戦をやることだけは避けよう。我々の未来は我々の手で作り出す気概を持とう。そのためには若者が立ち上がらなくてはならぬ。2040年には引退している人たちに未来を任せておけるか、だ。この数年が勝負だ。やろう!


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