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ケセラセラ、ということで

好きだったドラマの最終回は、気が向くまで見れなかった。終わってしまう淋しさもあったけれど、きっと美しいラストを見れないと思ったから。どんなに酷い終わり方だったらば僕の心を掬ってくれるだろうと何度も妄想した、けれど案外見てしまえばそれはそれはいい終わり方で、生まれ変わるならこういう恋愛をしてみたかったな、なんて。アップルパイを頬張り、乾いた口にホットワインを流し込んだ。

ドラマはおろか、恋愛ものに一切の関心を持ってこなかった人間がここまでハマるとはね。余韻を噛み締める。ふっとジョン・ダンの詩を思い出したので、部屋の隅で怯えていた紙を手でぴんと伸ばしてあげて、机に転がってたクレヨンで書いた。こんどはいいところで余白が足りなくなってしまい、最後まで書けなかった。

マルボロを吸いたくなった。もう日も跨いだけれど明日は休みだからと、夜の街へ出かける。冬の夜空は綺麗だ。この街でさえ星が近くに見えるんだ。いつか道端で寝転んで眺めた星もあったっけ。二十年も生きると大抵の光景をそれそのものとしてではなく、過去の出来事のフィルム越しに覗いてしまう。それは美しかったり汚かったりするのだけど、歳を重ねると言うのはそういうことの繰り返しなんだと思う。

信号機は車の走らない道を忙しなく赤から青へ塗り直す。いつものコンビニでマルボロを手に入れ、一本吸ってみた。…なんてことない、普段の煙草のほうが美味い。ほのかな甘みがなんとなくつらくて、二本目にマッチで火をつけた。三本目、はやめておいた。「たばこやめなよ」と言ういろんな顔が浮かんだから。

帰り道はちいさな音でケセラセラを流して歩いた。なんてことはないさ、恥の多い生涯だったとしても、なんとかなるものだ、まだこれからなのだ、とよくわからない微かな希望のようなものに取り憑かれてみた。他人もドラマも信じてこなかった人間が、それでもアガペはまだどこかにあるはずだと信じるのは愚かでしょうか。まぁクリスチャンでもないし僕は神社のほうが好きなのだけど。

ふと向かいのアパートの街灯がチカチカ点滅してるのを見た。電球が切れたのだろう。5回点滅はアイシテルのサインだって言うけれど、チカ、チカ、チカ、チカチカ、チカ、、チカチカ、チカ…そんなに愛されちゃ困るのだけれども。ま、そうしてあまりにも短い小旅行も終わり家に着いたというわけです。

…何の話をしているのかよくわからなくなってきた。まぁ書きたいことなどもとからなかったし、ぼやけるくらいが美しいと思うから今日はここまでに。久々に長めの文章を書いた。もう寝よう。おやすみなさい。よい夜を。

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