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The 30 Best Albums of 2015

#1  DYNAMIC NATURE / NETWORKS

▼1位は何の迷いもなく嬉しい3人組による5年ぶりのアルバムである。もし俺がamazonでカスタマーレビューするならどこの田舎だよ!っていうくらい★を無限に撒き散らすしピッチフォークに在籍してたら問答無用で6億点つけるであろう大推薦盤。シンセ、ガットギター、ドラムという3枚の合わせ鏡の向こう側をのぞいてみたら反復や反射によって彩色された音そのものが光かがやく美しい光景が広がっている。NETWORKSそのものがもしかしたら千変万化という名の万華鏡なのかもしれない。彼らが形成する三角形の中に入ってみたらきっとパンは腐らないし、剃刀の刃の寿命が延びるし、植物の成長が促進されるし、食品の味がマイルドに変わる。個人的なハイライトはM④「Sizq」距離感と色彩とバランスがせめぎあいながら迎える4'13"〜6'10"までの時間帯(通称:聖なる117秒)、音の粒子を余すことなく聴いていたいがためにそれまで使っていたイヤホンをソッコーでお蔵入りにして税込¥36,720もする高級イヤホンを今年新たに買い増したくらいである。次にライブに行くことがあったらその時の領収書でも持っていこうかとひそかに思っている。

#2  LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD / CHRISTIAN MCBRIDE TRIO

#3  Dysnomia / Dawn of Midi

▼2位はクリスチャン・マクブライド・トリオによるライブ盤。新宿ピットインに行った時に開演前に流れていたのを聴いてその尋常ならざる疾走感に殺られて即購入→耳にひたすら叩き込む。ジャズの名門でのライブだというのに緊張感が漲っているわけではないし物語性だって何もない。だけど、だからこそ単純に演奏のうねりを聴いているだけで笑いがとまらなくなる。「前だけ見てろ、背中は守る!」と言われてるのかどうかは知らんがドラムとピアノがやんちゃに突っ走ろうが美意識剥き出しテンポに落とそうが鬼のウォーキング・ベースで追走するマクブライドが結局のところいちばんヤバい。超気持ちいい。

▼3位は元々はフリージャズで活動していたピアノ、コントラバス、ドラムの3人によるブルックリンのミニマルダンストリオ。淡々とタイトでパーカッシヴなリズムを叩くドラムとかミュートされたギターによる冷たい反復フレーズな感じはgoatを想起させるものがある。全9曲が独特な緊迫感を保ったまま曲間もなく繋がっているのでミニマルテクノ的な感じに聴くこともできる。MORITZ VON OSWALD TRIOが好きな人にもお勧め。

#4  THE INFERNO / NATURE DANGER GANG

#5  Music Exists disc 1 / テニスコーツ

#6  Klavikon / Leon Michener

▼4位はNDG。ライブで同時多発的におこる悪ふざけこそが全てで楽曲はさほど重要ではないと思っていたんだけどこのアルバムを聴いて根底からそのイメージを覆された。食品まつり、LEF!!!CREW!!!、KΣITO、国士無双などにトラックを外注したことによってレイブやベース・ミュージック、パンクやハードコアなどジャンルの垣根が壊されているし歌詞の意味の無さや何も言ってない感も更にパワーアップしている快作。最近のNDGのライブが誰も手を付けられないほどに強度を増している最大の要因はこのアルバムが完成したことによるものだと思っている。

▼5位はテニスコーツ。さや、植野隆司の2人だけで制作された作品であるがマスタリングで参加している宇都宮泰による音響ディレクションが全体的に冴えわたっている。テニスコーツの音楽は環境を問わず様々な場所やシチュエーションにぴたっと寄り添うものだが、今作における素朴な音を煌めかせる立体音像の美しさとか儚さとかマジで凄まじいのでお手持ちのイヤホンなりヘッドホンでじっくりと味わってほしい。M②「光輪」に至っては今後ずーっと残っていくであろう大名曲。

▼6位はUKノンクラシカル派ピアニストであるレオン・ミッチェナーの作品。ループやオーバーダブを一切使わずプリペアド・ピアノ(弦に物を乗せて様々な音色や効果を出すピアノ)でエレクトロニクスな方向に振り切った謎のアルバム。これを聴いていると段々ピアノだかなんだかわかんなくなってくるし、なんなら自分が何を聴いているのかもわかんなくなる。そして時空が捻じれる。以下に挙げる動画はアルバム未収録曲なんだけど雰囲気を存分に味わえるので是非。ピアノの中にぶち撒かれた大量のキン消しが踊り狂うというオカルト。

#7  Tuxedo / Tuxedo

#8  SAMPLING MADNESS / HONDALADY

#9  カルチャークラブ / おとぎ話

▼7位はTuxedo。メイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンによるモダン・ファンクユニット。鬼のコンテンポラリーかつディスコ・ファンクなサウンドは正直あまり得意ではないがフルバンドを引き連れたサマソニのビーチ・ステージのライブがあまりにも最高の時間を演出してくれたのでそれ以降格段に音が入ってくるようになった。波打ち際できゃっきゃうふふしながら聴いていた最高の夏がいつでも呼び起こされる。継続的なユニットなのか定かではないがこの作品に関しては捨て曲なしの大傑作。

▼8位はHONDALADY。ファミコン世代が悶絶するブレイクビーツ、AKAIのサンプラー、泣く子も踊るTB-303がこれでもかってくらい炸裂しちゃってるいわゆるひとつの最高なやつ。そこになぜか四畳半フォーク的な歌詞がのっかっているんだけどそれがまた中年男性である俺にじんわりと沁みてくるのが厄介。初期の電気グルーヴが好きな人は問答無用でハマると思う。

▼9位はおとぎ話。felicityからリリースされたこともそうだがなにより史上最高の名曲M⑦「COSMOS」がついに収録されたことに驚いた。長年に渡って音源化されなかったのでライブで聴ける時は大切に聴いてきたこの曲が手持ちの再生機器から流れてくる喜びマジハンパない。PVもまた世界で最も美しい映像作品のひとつなので未視聴の人がいたら絶対に見てもらいたい。先に挙げたNETWORKSもそうだけどすげえ最高の場面でバンド名がドカーンと出てくるPVに間違いはない。

#10  MOON / 服部峻

#11  PETRICHOR / Yuji Katsui,U-zhaan & Miho Hatori

#12  FAMILY FIRST / MARK GUILIANA JAZZ QUARTET

▼10位は服部峻。取材旅行で訪れたインドで得たインスピレーションのもと「信仰」をテーマに現代音楽、民族音楽、ジャズ、ノイズ、ミニマル、ドローンなど様々な音楽の要素が盛り込まれたアルバム。前半の聴きやすさとは裏腹に後半すげえ宗教じみてくるのマジで熱い。天才すぎてヤバい。

▼11位は勝井祐二とU-zhaanが毎月ゲストを迎えてセッションしているランチライブの録音作品。外タレである羽鳥美保との共演は即興における語法や文法の違いが明らかであるがお互いに接点を求めて懸命に紡いだ結果、誰も聴いたことのない全く新しい音楽が創造された同企画史上屈指の名演である。ランチライブは自分にとっても本当に大切な現場なので今回このようなかたちで音源化されたことを嬉しく思っている。
 *関連記事 ←当日の感想

▼12位はマーク・ジュリアナがどっぷりジャズに浸かったアルバム。ブラッド・メルドーとのエレクトリック・デュオ「メリアナ」が全然ピンとこなかった自分としては今作のような新世代のドラミングとオールドスタイルなジャズが交差するこのようなアルバムを渇望していた。若き天才ピアニストであるシャイ・マエストロの多彩なバリエーションによる打鍵も◎

#13  Deep Thoughts / Giant Claw

#14  FLUX / WILD MARMALADE with PAUL GEORGE

#15  GARDEN OF DELETE / ONEOHTRIX POINT NEVER

▼13位はジャイアント・クロウ。ウィザードリィや女神転生を彷彿とさせるダンジョン感が炸裂し狂っている不穏なMIDIオーケストラ。しかもエンカウント率が高めに設定されているので聴けば聴くほどに経験値が上がっているような錯覚に陥る。

▼14位はディジュリドゥとドラムのユニットであるワイルド・マーマレードとギタリストのポール・ジョージによる共作。やたらグルーヴィーでオーガニックなダンスサウンドに情熱的なフラメンコの旋律が絡み合うことで未知の領域に踏み込んでいる作品。

▼15位はOPN。テレビのリモコンを片手に鬼のようにチャンネルをザッピングしまくっているような全く持って落ち着きのない作品。雑なんだか緻密なんだかよくわかんないんだけどアヴァンギャルドにぶっ飛べるので問題なし。DE DE MOUSEが黒い悪魔によって殲滅もしくは捕食されているようなM④「STICKY DRAMA」がとくに熱い。

#16  衝撃の"アヴェ・マリア" / 鈴木勲

#17  GHOSTS OF TOMORROW / Jojo Mayer & Nerve

#18  エグすぎる秘蔵音源まん載CDR / 佐伯誠之助

▼16位は60年に渡って活動する天才ベーシストa.k.a.生きる伝説OMAさん。シューベルトとカッチーニの2曲の「アヴェ・マリア」を中心に据えた意欲作。現在の日本のジャズシーンにおいて先頭を突っ走っているような類家心平や纐纈雅代など自分の子供以下の年齢であろう若手プレイヤーとガリガリやりあっているとかマジ最高。

▼17位は超絶ドラマー、ジョジョ・メイヤーが率いる人力エレクトロニックジャムバンド。ジャズ的なインプロとクラブミュージックを圧倒的技量でマッチングさせているとんでもない作品。ベースの多彩なフレージングも◎バトルスとか好きな人はとりあえず聴いたほうがいいよ。

▼18位は自称、デジタル世代のジミ・ヘンドリックスである佐伯誠之助の秘蔵音源まん載CDR。セクシーブロマイドのオマケでついてきた代物である。俺たちの永遠の名曲「Movin' On Up」にのせてひたすらチ○コ、マ○コと歌われるM①「珍宝的悲鳴(Chimpo' on Up)」を筆頭にあらゆる音楽ジャンルを下劣な下ネタで凌辱する超クールな作品。あの七尾旅人も認める関西の宝。

#19  Solo Piano at Velvetsun / スガダイロー

#20  Music Complete / NEW ORDER

#21  INTO THE DEEP / GALACTIC

▼19位はベルベットサンに常設されている寿命をとうに超えた1940年代に製造されたピアノがくたばる前に遺影をきちんと撮っておこうという趣旨のもと幾多のライブで演奏してきたスガダイローと長年お店に置かれていた余命わずかなピアノ、またはその環境をまるごと含めた録音作品。ピアノが軋む音や外の青梅街道の音すらも注意深く聴いていれば聞こえてくるという。俺はまだ聞こえないけどね…Σ(゚д゚lll)

▼20位はニュー・オーダー。熱心なファンではないのでピーター・フックがバンドにいようといまいとそんなに重要ではないことが前提になるんだけど。新しいベーシストもよく頑張っているし復帰したジリアンのキーボードは全編にわたって大活躍。飛びぬけてヤバい曲はないけど全体的に良曲揃い。

▼21位はギャラクティック。メイシー・グレイとかブラッシー・ワン・ストリングなどをフィーチャリングしたボーカルアルバム。濃いボーカリストばかり参加してるからなおさら伴奏としてのギャラクティックの巧みな演奏にグッと惹かれる。歌伴ハンパねえ。

#22  CHAMBERS / Chilly Gonzales

#23  柴田聡子 / 柴田聡子

#24  NOCTILUCENCE / Mark McGuire

▼22位はチリゴンのピアノ五重奏。クラシックは全然詳しくないんだけど初回盤についてるオマケ(アップライトピアノ型のオルゴール)に惹かれて購入。適度な尺なので聴きやすい。室内楽の現代的な解釈と言われてもよくわからんけどチリゴンの頭の中にある膨大な音楽知識を再構築してるんだろうなということは俺でもわかる。

▼23位は柴田聡子。弾き語りのライブを観る機会が多かったので一聴した時はオーバープロデュースかなと思ったけど散りばめられている豊かな音のパーツにもだんだん慣れてきたので愛聴する機会も多かった。今まで見えなかった曲の表情を感じることができるのよね。

▼24位はマーク・マグワイヤ。音の塊が鼓膜に侵入した瞬間、心地よいミニマリズムが泡を上げて溶け出す。カラフルに彩られたギターとの化学反応によって発生する幸せの炭酸ガスで温浴効果が高まり血行が促進される「バブ」のような作品。とツイッターで呟いたら入浴剤と一緒にすんじゃねえよというお叱りをうけました…Σ(゚д゚lll)

#25  KAGERO Ⅴ / KAGERO

#26  Guitar Solo 2015 LEFT / Otomo Yoshihide

#27  ニューアルバム / DOTAMA

▼25位はKAGERO。物理的な破壊力を武器にリスナーと刺し違える覚悟で放たれたであろう暴力的な暴力。ヒットチャート原理主義者の人権を残酷なまでに蹂躙するもはや恐怖政治の類。もし俺が宝くじとかで高額当選したらこの作品を大量に購入して前途有望な中高生どもにこっそり渡して青少年に悪い影響を与えるおじさんになりたい。

▼26位は大友良英。「解体的交感」を聴いた時に速攻で耳を傷つけてきた高柳昌行のGibson ES-175を譲り受けた大友良英によって地獄の金属音と心を揺さぶられる温かみのある持続音が現代によみがえっている。M⑤「教訓Ⅰ」(加川良のカバー)では大友さんの味のあるボーカルも聴くことができる。 

▼27位は自称ギャグラッパーDOTAMAによる飽くなき自問自答を突き詰めた作品。音楽不況時代を生き残る方法だったり名曲の作り方という根源的かつ答えることの難しいテーマから逃げることなく、かといってシリアスにもなりすぎず軽妙なライミングで巧みに己の存在を証明した一枚。

#28  LEFT TOKYO RIGHT / PASCAL SCHUMACHER

#29  ART ANGELS / GRIMES

#30  ずんぐり型 / 獨古勇

▼28位はルクセンブルクを代表する天才ヴィヴラフォン奏者パスカル・シューマッハによる日本に迎合した作品。ジャケットもダサい。だがここで鳴らされているヴィヴラフォンやフルートの音が澄み狂っているので心地よさだけは尋常じゃない。

▼29位はグライムス。ぶっちゃけ買ったばかりなので聴きこみが浅いことは否めないので現時点で高い順位はつけられないが屈折した少女の家内制手工業がどうしてこんなにポップ・ミュージックに昇華できんのかマジ謎。ライブをすごく観てみたいけど来日公演が平日なので詰んだ。

▼30位はザ・クレイジーSKB入魂の全作詞・完全プロデュース作品。COMPLEX「恋をとめないで」、BUCK-TICK「ICONOCLASM」などの歌詞を1981年に獨古勇がおこした強盗殺人の経緯に勝手に改ざんしてぶっ放しているカルト音源。発売後数日で即完売。「ずんぐり型」という言葉を無駄にフィーチャーしているところにバカ社長ならではのユーモアを感じることができる。

以下、今年の愛聴盤のなかで2015年以前に発売した作品を20枚紹介。

Wolds / PORTER ROBINSON

Dataplex / Ryoji Ikeda

LIVE / HILIGHT TRIBE

TEN RAGAS TO A DISCO BEAT / CHARANJIT SINGH

MANA / 森山威男

My Little Ghost / Kidkanevil

V.A. / First Remix

LIVE / THE WOODEN GLASS feat. BILLY WOOTEN

TANUKI SONGS / パリッコ

TAKAHASHI ATTACK 2006 / DieTRAX

In The Pocket / N'gaho Ta'quia

Hitoshizuku / GO-ZEN

北島三郎、魂の唄を… / 北島三郎

V.A. / Beauty of Tradition ミャンマーの伝統音楽、その深淵への旅。

Polygon Fane / Pixelord

ウポポ サンケ / 安東ウメ子

BLACK MESSIAH / D'ANGELO AND THE VANGUARD

Le Monde Fabuleux Des YAMASUKI / YAMASUKI SINGERS

1000 Forms of Fear / Sia

Muacy / TRIO 3-63

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