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アダム・スミス

誰もが知っていますが、実はあまり詳しくは知られていない偉人


〈サクッと解説〉


■人物の概要

アダム・スミス(Adam Smith、1723年-1790年)は、イギリスの哲学者、倫理学者、経済学者です。主著として、倫理学書『道徳感情論』(1759年)と経済学書『国富論』(1776年)などがあります。 

■近代経済学の父
アダム・スミスは「近代経済学の父」と呼ばれていて、現代の経済に多大な影響を与えた人です。『国富論』を書いた人としても有名です。

この『国富論』については、いくつかの重要なポイントがありますが、特に有名なのは「神の見えざる手」と言われるものです。

これは「市場経済において、各個人が自己の利益を追求すれば、結果として社会全体において適切な資源配分が達成される」とする考え方を指します。

つまり「各個人が利益を追求することは、一見、社会に対しては何の利益ももたらさないように見えるけれども、あたかも『神の手』によって導かれるように、社会全体の利益となる望ましい状況が達成される」というものです。

これは「市場メカニズムを重視する」考え方で、現代の経済学の基礎となっています。

アダム・スミスは、この「市場メカニズム重視」の考え方をベースにして、「分業の重要性」と「重商主義批判」を展開しました。

■分業の重要性
「分業の重要性」は、それにより労働生産性が上昇し、経済全体が豊かになるというものです。例えば、パンを食べるために、分業せずに各個人が1人で小麦を作って、それを製粉して、パンを焼きあげるとなると、かなり大変です。

それよりも小麦を作る人、製粉する人、パンを焼く人、と、それぞれの生産過程を分業すれば、効率よく作業できることになります。ここで重要なのは、分業過程において、各人が社会的効率を考えて行動している訳ではない、ということです

■重商主義批判
また「重商主義批判」では、それまでは「国の豊かさは、貴金属の蓄積である」という「重商主義」という考え方が主流だったのですが、アダム・スミスは「国の豊かさは労働生産によって得られる消費財の蓄積である」と主張しました。

重商主義は、簡単に言うと貯金主義ですから、お金や貴金属の蓄積のために、輸出(=輸出品代金として外国からお金が入る)を奨励し、輸入(=輸入品代金として外国にお金を支払う)を規制します。

しかし、アダム・スミスは、貴金属の蓄積より消費の拡大を重視しますから、外国からの消費財輸入を規制する考え方に反対しました。また市場メカニズム重視の立場から、政府による外国貿易へのコミットにも反対しています。 

■政府の役割
このようにアダム・スミスは市場メカニズムを重視し、政府の役割をできるだけ小さくすることを主張しました。このような考え方を「小さな政府と呼びます。

ただしアダム・スミスは、政府は何もせず、すべて市場に任せれば良い、と言っている訳ではありません。政府は次の3つに関して、コミットしなければならない、としています。 

・国防
・司法行政
・公共設備


これらは市場メカニズムが働きにくいものばかりです。たとえば司法行政がない社会では、人々が自分の利益を優先していけば、社会全体の利益となるどころか、お金や権力ですべて解決するような世の中になってしまうかもしれません。

このような市場メカニズムがうまく機能しないケースを、経済学では「市場の失敗」と呼びます。 

代表的な例としては、下記のものがあります。

・独占市場-例:航空業界、携帯電話、放送業界
・外部性-例:公害

たとえば独占市場では、価格が高くなる傾向があります。これは日本の航空運賃や携帯通話料が世界的に見て非常に高い点と合致しています。

また外部性に関しては、企業が工場排水を勝手に川や海に流してしまうと、公害が起きてしまいます。

アダム・スミスが主張したように、市場メカニズムは非常に重要です。しかし同時にアダム・スミスが注意したように、市場メカニズムがうまく働かないケースもあります。

「市場メカニズムのメリットを活かしながら、そのデメリットをいかに政府がコントロールするか」が、現代の経済にとって重要な課題となっています。


以上

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