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【ビジネスの成長のために】ブランドから考えるUIデザイン

みなさんはUIを作る上で、何を意識してデザインを作っているでしょうか。

仕事柄、他のデザイナーが作ったデザインを拝見させてもらうことが多いのですが、よく陥りがちなパターンとして以下のようなことが思い当たります。
※この記事でのデザイナーはUI/UXデザイナーを指します。

ユーザーにどういった印象を与え,どう感じて欲しいかを重視しすぎている
クライアントが表現したいことだけに注力してデザインをしてしまっている

必ずしもこれは間違いではありません。
ただし、これだけにフォーカスしてしまう、では話は別です。

こういった考え方のみで作っていく問題点として

1. プロダクトやサービスの体験と、ちぐはぐなデザインになってしまう
2. デザイナーの主観に寄り過ぎていると言われてしまう
3. 別のデザイナーに引き継いだ際に、全く違うデザインに変わってしまう

などが挙げられます。

このようなことが起こることにより、ブランドとしての一貫性が担保しづらくなってしまう懸念があります。

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それだけでなく、結果としてプロダクトが表現したい世界観をユーザーに十分に伝えきれずに、本来の良さを体験してもらえないままプロダクトから離れて行ってしまうことに繋がる可能性もないとは言い切れません。

日々プロダクトを良くしよう、と切磋琢磨している中、このような少しのボタンの掛け違いでユーザーを逃してしまうことは、すごくもったいないのです。

これらの問題を解消するために1つ、ブランドから一貫したUIを作る手法が挙げられます。

今回はなぜこのような問題が起こってしまうのか、そしてブランドからUIを考えることについての重要性について、自身の考えを含みつつ書き記したいと思います。

 1.プロダクトやサービスの体験と、ちぐはぐなデザインになってしまう

プロダクトやサービスは、何かしらの社会的目的があり作られていることがほとんどです。その根源が持つ目的を理解しないまま、ユーザーにとって使いやすく共感しやすいデザインを作ることは困難であるといっても良いでしょう。もし仮に作れたとしても、あくまで「それっぽい」ものであり、長く愛されるサービスにはなりづらいと感じています。

なぜそのようなことが起こりやすくなってしまうのか、少し具体的な例を用いながら説明していきましょう。

みなさんは初頭効果終末効果という言葉をご存知でしょうか。

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最初に「知的で感じのいい人」という印象を持った人と、「横暴そうで無愛想な人」という印象を持った人では、その後の言動や行動が同じでも、受け取り方は大きく異なります

UIデザインやWebデザインの世界においても、この考え方は同じです。

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もし、何かしらの業務改善のためにツールを導入しようとした人がいたとしましょう。その人はきっとさまざまな媒体経由を経て、サービスサイトにたどり着きます。クチコミではある程度評判がよかったものの、いざ使おうとしたサイトのデザインが古めかしく、ニュースなども一年以上前から更新されていないことに気づきました。さて、大体のユーザーはここで使う気が失せてしまうのではないでしょうか。その理由は、実際には日々グロースし機能が充実させているにもかかわらず、それがユーザーには見えていないからです

これが初頭効果です。
このようにユーザーはファーストインプレッションで使うか使わないかを決めてしまうことが多いのです。

では次に終末効果で考えてみましょう。

クチコミやSNSで、サポートが充実しているという触れ込みに好感を覚え登録した転職サイト。会員登録までは上手く進めれたものの、登録後に確認のメールは来ず、次に何をすれば良いのかも分からないような設計になっていたらどうでしょうか。そして、ある日突然膨大なレコメンドがきたものの、どれも自分の希望の仕事にはマッチしていない…と。

どうでしょうか。
こちらも長く使い続けたいとは思えませんよね。

結局のところ何が言いたいかというと、正しい印象で、最後まで正しく手を抜かないコミュニケーションが大事ということです。

そしてそのようなコミュニケーションが、プロダクトの本来の目的と結び付いていることを、ユーザーに伝えることができれば顧客ロイヤリティの獲得につながります。

【顧客ロイヤリティ】
顧客があるブランドや商品、またはサービスに対して感じる「信頼」や「愛着」のこと。

そして、この顧客ロイヤリティの獲得こそが、プロダクトのファンを作るということなのです。


2.デザイナーの主観に寄り過ぎていると言われてしまう

これは、役職が細分化された組織になってしまっているなど、デザイナーがプロダクトの理念や戦略などを理解しづらい立場にいる時に起こりやすい問題です。

基本的にデザイナーはどんなに小さな情報でも活用できそうなものは全てかき集め、それらを正しく組み合わせることでデザインを作っていきます。

もし実際に作り上げたアウトプットが「デザイナーの主観により過ぎている」もしくは「思っていたものと違う」と言われてしまった場合は、自身のインプットが圧倒的に足りていない証拠だと思ったほうが良いでしょう。

ユーザーにファンになってもらうためのよりよいデザインを作るためには、そのサービスが持つ「強み」や「想い」「大切にしたいと思っている理念」など、その会社の「らしさ」を理解する必要があります

なぜなら、その理解した「らしさ」を、ユーザーに伝わる形でデザインに落としていく必要があるからです。

デザインは情報の発信者と受け取り手がいないと成立しません。プロダクトやサービスの「想い」に寄り過ぎても、ユーザーに寄り過ぎてもいけないのです。デザイナーは常に第三者の視点が必要になります。

ではいったいその「らしさ」はどのように見極めていけば良いのでしょうか。

まず、デザイナーとして1番最初にできることはプロジェクトメンバーに軽くインタビューを行うことです。
自分たちが何を大事にし、何を思ってそのプロダクトに関わっているのか。プロダクトに関わっている上で良かったなと思ったこと、反対にこれは良くなかったと思ったことなどを根掘り葉掘り聞いていきます。そうすることで、共通する「らしさ」というものが見えてきます。

最近は、その会社らしくふるまいビジネスを行うために、Vision / Mission が社内で設定されていることがほとんどです。その他にもエグゼクティブインタビューや、ネットに上がっているプロダクト関係者のインタビュー記事、公式Twitterなど、いくらでもサービスの「らしさ」を見極める情報は転がっています。

【Vision / Mission】
ビジョン(vision)とは、実現を目指す、将来のありたい姿のことです。 ミッション(mission)とは、企業が果たすべき使命であり、存在意義です。
【エグゼクティブインタビュー】
経営層や意思決定者の方を対象としたインタビュー

例えば無印良品では、「無印良品がやらないこと」として14の決まりを定めています。

・ 製品にブランド名をつけない
・ 機能を追加しすぎない
・ 無印良品のためにデザインされたもののみ売る
・ 無印良品のためにデザインされたものを他に売らない
・ 製品に強い色を使わない
・ 製品に過剰な包装をしない
・ 有名人を広告に起用しない
・ 有名デザイナーの協力を宣伝しない
・ 什器、品揃え、レイアウトを管理できる場所でのみ売る
・ 値引きを客寄せの道具として使わない
・ 顧客対応以外の作業を店舗で極力やらない
・ 2DKか3DKのマンション・アパートで日常使わないものは扱わない
・ 人口統計的な側面からターゲット顧客を絞り込まない
・ 出店基準にあわない出店、商品開発力を超えた出店はしない

このように、プロダクトを表現する上で押さえておかなければいけないポイントは、デザイナー自身がしっかりと理解をした上でアウトプットに落としていく必要があります。

そしてその軸がないのであれば、チームで作る必要があります。(3を参照)

 3.別のデザイナーに引き継いだ際に、全く違うデザインに変わってしまう

これもコアとなる「らしさ」がチームの中で言語化されておらず、共通認識が図れていないことで起こりやすい問題です。

この問題を解決するべく近年重要視されているのが、「インナーブランディング」「デザインシステム」などといった手法です。

「インナーブランディング」とは、企業が従業員に向けて行うブランディング活動のことを意味します。

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インナーブランディングの目的は、企業の「why(存在意義)」と「WHO(何者なのか)」を従業員が正しく理解することにあります。

これに対し、顧客などの外部のステークホルダーに向けて、商品やサービス、そして企業のブランド価値を正しく伝える活動のことを「アウターブランディング」と呼びます。前述の1, 2で触れた内容が「アウターブランディング」に関わる部分になります。

一方、デザインシステムとは以下のように定められています。

インナーブランディングの一貫としても行われるデジタルプロダクトの目的を達成するために守備一貫したルールで編成された、お互いに関連づけられたパターンとその実践方法。
【引用:デジタルプロダクトのためのデザインシステム実践ガイド

多くの場合、デザインシステムの中には、パターンとルールが記載されています。

パターンとは繰り返される要素で、これらを組み合わせてインターフェースを作成します。パターンの例としては、ユーザーフロー、インタラクション、ボタン、テキストフィールド、アイコン、色、タイポグラフィ、リードテキストなどが挙げられます。ルールでは特にチームで作業を行う場合にどのようにパターンを作成、保存、共有、使用するのかなどを記載されていることが多いのが特徴です。

このようにブランドとしてどう振る舞うべきか、どういうデザインで表現するべきかを言語化し、常にチームで共通認識をはかることは、プロダクトを作る上で重要です。

そしてこの指針を作るとインナーとしてのコミュニケーションだけでなく、アウターブランディングとしても活用でき、いくつかのメリットも生まれます。

以下はあくまでその一部です。

・社内議論が活性化するだけでなく、生き生きと働ける
・目標が定めやすくなる
・明確な柱で意思決定を早くできる(高速PDCA)
・イキイキと働ける
・誇りを持てる

このようにして社員全員が、自社やプロダクトの強みや良さを自覚し、一丸となって育てて行くことでより強いプロダクト、そしてデザインは生まれるのです。


そもそもブランディングとは

ブランディングとはプロダクトやサービスをよく見せるためのものではありません。ブランディングとは

・戦略的に、企業、商品やサービスの強みを引き出し
・環境や時代、消費者のニーズを踏まえながら
・消費者や社会に伝わる形で表現し
・企業のブランド価値を向上させること
【引用:ニューヨークのアートディレクターが日本のビジネスリーダーに伝えたいこと】

あくまでプロダクトが本来持っている「強い理念」や「想い」を高め、磨いていくこと。コアとなる軸を定め、品質を高めていく、つまり経営戦略こそがブランディングです

また、ブランドイメージとはユーザーが作るものです。ロゴやネーミングやビジュアルだけでなく、ユーザーのさまざまな体験から蓄積されたイメージによって構築されます。そこを私たちデザイナーは理解した上でUIやデザインを作っていく必要があると言えるのではないでしょうか。

そして何より大事なのは、マーケティングよりトライアル。とにかくPDCAを回していくことです。

マーケティングを丁寧に行い、じっくり考えてリリースするのは今の時代は遅れを取ってしまう一方です。

大切なアイディアだからじっくり育てたい気持ちも分かります。デザイナーとして完璧なデザインを出したい気持ちも。

ですが言い換えると、リリースすることがマーケティングなのではないでしょうか。

ブランドとして一貫したUIを作りつつ、どれだけPDCAを早く回せるかは、ビジネスを成功させる上では必要不可欠な要素であるということは、肝に銘じていきたいと思います。


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