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イスタンブールの路地裏

今朝何気なく巻いてきたストールについて。
これを買ったのはもう3年も前、2月のイスタンブールだった。
ちょうどその年の4月、新市街あたりでテロがあった頃だろうか。今はだいぶ落ち着いたんだろうが、当時はなんとなくきな臭いイメージが、日本の中にはあったんじゃないかと思う。
これを買ったのは「何かトルコらしいものを一つは買って帰りたい」という願望から。
ストールがいい、と思ったのは、そう今思い出したのだが、サークルの先輩がヨルダンだったかシリアだったかで買ってきたという緋色のストールをずっと素敵だと思っていたから。
その先輩はアラビア語を履修していて、そのあたりの国を歴訪する長期休暇プログラムに参加した時に買ったと言っていた。(確か内戦が激化する直前で、シリアに行けたのは先輩の代が最後だったはずだ)
シルクのストールは寒い時はあったかいし、暑い時は風通しが良くていいんだよ、と言ったあの飄々とした先輩は、今どうしているんだろう。感傷に浸ってしまった。
そうそれで、トルコに行く前に購入したガイドブックにストールのお店が載っていて、それを目指して冬の寒い中、ブルーモスクの裏手の道を彷徨い歩いた。とにかく寒かった。2月だったのでひと気もほとんどなかったと思う。
そのお店の主人の父親らしいおじいさんが近所の人と椅子に座ってチャイを飲みながらおしゃべりしてたっけ。店主は思ったより若めの人だった。そんなことばかり、なぜかよく覚えている。日本でいうなら商店街の一角の小さなお店、と言った佇まいだった。
いくつか見せてもらったけれど、二番目くらいに見せてもらったものが、ぴんときた。
トルコ石みたいなブルーと、砂漠色のオレンジの取り合わせが本当に素敵だったのだ。
思っていた予算より多少オーバしてしまったが、思い切って購入した。帰りにうっかりガイドブックを忘れて、慌てて取りに戻ったら気づいていた店主のお兄さんが追いかけて持ってきてくれた。

そんなこと今の今まですっかり忘れていたのに、思い出すとあの時の気温や街の匂いまで蘇るようだ。おかしいことに、本当にその場にいたその瞬間はあまり大事に思っていなくて、こうして遠ざかって思い出す時が一番綺麗に思えたりする。でもこの感覚がたまらないから、旅は大好きだ。

アジアとヨーロッパの境目は、今日はどんな天気だろう。
街の人は、あの小さなカップでトルココーヒーでも嗜みながら、おしゃべりに興じているんだろうな。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!