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マラソン1週間後の生理学的指標とパフォーマンス

※本記事は、私が研究者として取り組んだ研究成果(下記論文)を解説・紹介したものです。論文の全文はリンクからご覧いただけます。

Takayama, F., Aoyagi, A., Shimazu, W., & Nabekura, Y. (2017). Effects of Marathon Running on Aerobic Fitness and Performance in Recreational Runners One Week after a Race. Journal of sports medicine (Hindawi Publishing Corporation), 2017, 9402386. 


42.195kmを走るマラソンは、身体に大きな負担をかける競技として知られています。
ただ、従来の研究では、マラソン後のダメージは主に血液検査などから推定され、マラソンのパフォーマンスに深く関わる生理学的要因についてのエビデンスが不足していました。少なくともこの論文が発表される時点においては。
そこで、この研究では、マラソンのパフォーマンスに深く関係する3つの要因(最大酸素摂取量、ランニングエコノミー、酸素摂取水準)が実際にどの程度ダメージを受けるかを明らかにすることを目的としました。
この際、通常、マラソン大会は週末に開催されることを考慮し、1週間後の回復状況を評価することで、より実用的なエビデンスを得ることとしました。

11名のランナーを対象に、マラソンレースの前と1週間後にトレッドミル上でのランニングテストを実施し、生理学的指標を測定しました。

その結果、マラソン後の最大酸素摂取量、ランニングエコノミー、酸素摂取水準(無酸素性閾値)は、レース前と比べてほとんど変化していませんでした。
また、3要因を反映し、マラソンのパフォーマンスと相関が強いパフォーマンス指標(無酸素性閾値のランニングスピード、最高ランニングスピード)も、レース前と比べてほとんど変化がありませんでした。


回復は「ある特定の活動における事前のパフォーマンスを再び達成する、またはそれを上回ること」と定義できます。
【出典:Bishop, P. A., Jones, E., & Woods, A. K. (2008). Recovery from training: a brief review: brief review. Journal of strength and conditioning research, 22(3), 1015–1024. https://doi.org/10.1519/JSC.0b013e31816eb518

この定義に基づいて、私たちも、「マラソンを走った後の身体的な能力は、通常、7日以内に元に戻ることが示される」と結論付けました。

もちろん、生理学的指標やパフォーマンス指標が回復するだけでは、レースで最高のパフォーマンスを発揮することは保証されません。
したがって、この論文を読んで、「マラソンは1週間に1回走っても高いパフォーマンスが発揮できる」と解釈するのは短絡的過ぎます。
それを前提としても、マラソンは(思ったほど?)生理学的指標や生理学的指標が強く反映されるパフォーマンス指標にはダメージを与えないと言えます。

執筆家としての活動費に使わせていただきます。