『前へ!前へ!前へ〜Do it! Do it! Go Ahead!!〜』を読んで。

昨日の夜、税所篤快(さいしょ あつよし)さんの『前へ!前へ!前へ!〜Do it! Do it! Go Ahead!!』を読んだ。朝から夜まで課題に追われ、息抜きにと思い図書館で借りた本だ。22時を過ぎていたのにも関わらず本を読む手が止まらず、課題のことは忘れあっという間に読んでしまった。

この本の大まかな内容としては、世界を変えると意気込んでいるが中途半端な生活を送っていた20歳の早稲田大学に通う税所篤快さんが、失恋を機に、ムハマド・ユヌス博士に会いにバングラディシュまで行ったり、そこで社会起業家育成のプロジェクトを立ち上げたり、そして最終的にバングラディシュでビデオ教育を通して都市部と農村部の教育格差をなくしていくという、バングラディシュ教育界に革命を起こしたというお話しだ。

この本のメインのメッセージは、タイトルの通り、「前へ!前へ!前へ!」である。税所さんは、*ムハメド・ユヌス博士の著書に出会い、チャリティーばかりで見せかけのソーシャルビジネスではなく社会を本当に変えるグラミン銀行の考えに圧倒され、その場で翻訳者である秋田大学の坪井先生に電話をし、その次の日には夜行バスで秋田まで会いに行った。そして、坪井さんとの話を通して、その場でバングラディシュに行くことを決意し、実際に一ヶ月後にはグラミン銀行を見にバングラディシュに行ったのである。税所さんは、著書の一ページ目から伝わってくるほど熱い人物だ。そして、考えるより先に行動をすることができる人だ。その税所さんのいう「前へ!前へ!前へ!」という言葉には心が揺さぶられるものがある。
*ムハメド・ユヌス博士:グラミン銀行の創始者であり、小規模融資を行うことでバングラディシュの貧しい人々に資金を貸しつけ、スモールビジネスを促進や自立を促しバングラディシュに革命を起こした人。

しかし、僕がこの税所さんから受け取ったメッセージはまた少し別なものである。税所さんは、バングラディシュで教育革命を起こした人物だが、その道は決して順風満帆ではなく、むしろ読んでいる僕が辛くなるほど厳しいものだった。

税所さんは、ユヌス博士の著書を読み、そして坪井さんに出会い、バングラデシュに行くことを決意し、実際にバングラディシュに行きグラミン銀行を視察することができた。そして、帰ってからは九州大学のアシル先生に会いに行き、九州大学とグラミン銀行の共同事業の日本人初のコーティネーターに任命された。ここまではトントン拍子に進んで行く。
しかし、そのあとは、波乱万丈であった。共同事業として日本の大学生をバングラディシュに招き、そこでの経験を通して社会起業家として育成するというプロジェクトを行ったが、その準備段階では、税所さんはグラミン銀行内では浮いた存在で、誰にも相手にされず、事業を進めるための書類の作成すらうまくいかなかった。何度も帰りたいと思ったが、グラミンで働いている方々の空き時間を見つけ、声をかけ少しずつプロジェクトを進める上で、なんとか大学生の渡航前日に書類に判子を押してもらい正式にプロジェクトをスタートすることができた。
その育成プロジェクトの中で日本人大学生が現地で見たことを通してバングラディシュの課題の解決策をグラミン銀行の方々にプレゼンする機会があった。そこでグラミンのアシル先生からかけられた言葉は、「バングラディシュには、実現されていないアイデアが山のようにあります。この国で求められているのは実践者です。あなた方には、この実践者になって欲しいのです。」という言葉だった。

この言葉をきっかけにして、税所さんは、実践者としてバングラディシュを変えることを決意する。そこで取り組んだのが、ビデオ映像を通した教育格差の是正であった。税所さんは、東進での映像授業を通して、偏差値20台から1年間で早稲田大学に受かることができた。このように映像を使えば、農村部で予備校に通うことのできない高校生も都市部の学生と対等に受験で戦えるのではないかと考えたのである。それからは、バングラディシュで神様と讃えられる英語の先生の講義を毎日聴講しプロジェクトの仲間として口説き続けて、最終的にはビデオ授業を撮らせてもらった。そして、その先生の紹介で他にも国語と社会の超一流講師に協力してもらうことができた。ここまでは、色々ありつつも順調に見えた。

しかし、プロジェクトを進めていくうちに税所さんとグラミン銀行の間で考え方の違いが出てきた。税所さんは、村の受験勉強は6月からスタートするので早く進めなければならないと考えていたが、グラミン銀行の官僚的なプロセスを取っており、確認と承認を踏まなけば前に進めなかった。税所さんは、そのスピードの遅さについていけず、グラミンに無断で講師と契約を結び授業の映像を撮り始めていた。日本の恩師に出資してもらった活動資金を強盗にすべて奪われてしまい、グラミン銀行にも無断で映像を撮っているのがばれ、グラミンからはプロジェクトの無期限中止を言い渡された。そして、プロジェクトも進められず資金もなくなりそのまま日本に帰国することになった。

そうやって失意のどん底にいた税所さんであったが、恩師の方々はそんな税所さんに「僕は、お前の可能性にかけたんだ」という言葉とともに、もう一度活動資金を提供してくれた。税所さんは、もう一度バングラディシュに行き、今度はグラミン銀行とは独立して、映像授業のプロジェクトを行った。

無事に50時間分の授業の映像を撮り終わり、そして講師の方にも謝礼を払うこともできた。その後は、村の高校生に映像授業を届けた。普段はお目にかかれない超一流講師の授業を受けながら、一年かけてバングラディシュの東大と言われるダッカ大学を村の高校生が目指すことになった。途中、「自分たちにはやっぱり無理だ。自分が大学になんて行けるわけがない」と諦めかけた子どももいたが、税所さんはダッカ大学へのバスツアーを企画し、ダッカ大学と学生との交流もし、自分たちにもできるという自信をつけてもらった。

結果としては全員が大学受験に成功したわけではなかったが、競争倍率10倍と言われるダッカ大学に村からの合格者が出た。そして、それ以外のナンバー3クラスの大学にも続々と合格者が出た。これは、都心と村の教育格差における革命であった。このプロジェクトはその後も続いていき、村の高校生の進路に馬車引きや家の手伝いや家事、育児という選択肢だけでなく、大学進学という道を加え続けている。以上が、本書の大まかな内容である。


僕自身としては、ありきたりな言葉になるが、この本から最後まで諦めず前を向いて進み続けることの大切さを改めて学んだ。どんなに道が困難でも、明確な使命を持ってできることをガムシャラにやっていけば、前に進むことができるということを本書から受け取った。僕は、社会をよりよくするためのアイデアを持っている。しかし、それを実現するための行動が自分に伴っていないことに自分の中途半端さを感じていた。本気でやるなら、本気の行動がそこには生まれている。税所さんの行動力に心からの尊敬を抱きつつも自分もそうなりたいと思った。今は、何もできない自分を悔しく思う気持ちもあるが、目の前のできることを全力でやることが今やるべきことかなと思っている。

以上が、税所篤快さんの『前へ!前へ!前へ!』のまとめと自分が感じたことである。

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