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【超短編小説】 第六感的な

「私には分かるよ。君のことが手に取るようにね」

佐伯さんは靴箱の近くで振り向き様に僕に言い放った。

突然の出来事に僕は声が裏返り、

「僕の、なっ、何が分かるんだよ」と彼女に言い返した。

「そういう感じ。言葉では言えないけど、そういうところだよ」

「どういうことだよ」

「なんか、あるじゃん。何となくさ。このぐらいの年齢になると、なんか分かっちゃうんだよね」

「僕には分からないよ」

「そうだろうね。君は鈍いから。でも、私は気付いたの。第六感的な」

そう言うと、佐伯さんは校庭の方に走って行った。

「何が分かるって言うのさ・・・」と僕は一人、靴箱の前で呟いた。



20年後、今でも僕は佐伯さんが言ったあの言葉が頭をよぎる。

一体、彼女には何が分かっていたのだろうか?

僕には分からない。

しかし、おそらく彼女には分かっていたのだろう。

コツコツと鳴り響いたあのローファーの音を聞けば(完)