【長編小説】 閉じこもりの日々に別れが来るまで #4
2000年4月某日
海の音が聞こえる。
「先生、今までありがとうございました」
「僕は先生と色んな話が出来て良かったです。これが最後の言葉になると思います。僕は空白の3ヵ月間を過ごしました。先生は言ってくれましたね。『青野は、落ちこぼれなんかじゃない』って。あの言葉、忘れません」
「母さん、僕を育ててくれてありがとう。弟の悟へ、今まで兄さんらしいことは出来なかったけど、10年間を一緒に過ごすことが出来て楽しかった」
「父さん、これから会いに行くよ。父さんみたいになれなくて、ごめんなさい。そして、勝手に基盤を使ってしまいました。これが父さんの研究だったんだね」
「どうして・・・どうして、ここに?」
海に何かが落ちる音が聞こえた。
砂浜には足跡が残っていた。
しかし、優以外にも足跡がある。
どうやら、二人の男のもののようだ(つづく)
【第1章 彼について 完】