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理想の仏教国。大分県豊後高田市。グーグルマップをゆく #53

 グーグルマップ上を適当にタップして、ピンが立った町を空想歴史散策する、グーグルマップをゆく。今回は、大分県豊後高田市。

 豊後高田市は、大分県北部の国東(くにさき)半島の一部である。宇佐八幡宮の荘園として栄え、同時に六郷満山による独自の山岳信仰も栄えた地でもある。

 私は、全国の八幡宮の総本山である宇佐八幡宮が、なぜ大分県にあるのかがずっと不思議であった。古代、文化は大陸から入ってきたので、必然的に日本海側の地域が影響を受けて栄えたことは言うまでもない。宇佐八幡宮のある大分県は、少し内陸側に位置しており、瀬戸内海の出発点とも言えるところで、対岸には福岡県や山口県が見える。

 瀬戸内海を通るためには、本州(山口県)と九州(福岡県)の間を通る。瀬戸内海に入った際に見えるのが国東半島であり、豊後高田市のあたりである。

国東半島 両子山(ふたごさん)
伝教大師最澄1200年魅力交流 コミュニケーションサイト「いろり」より転載

 日本国内にある寺院のほとんどは、大陸から来たものであり、時代によって建築技術が異なるものの大陸の影響を色濃く受けているわけであるが、国東半島に点在する寺院は一層に大陸の雰囲気を強く感じる。

 国内の磨崖仏の約7割が大分県にあるという。磨崖仏とは自然の岩壁や露岩に仏が彫られたもので、アジアの仏教圏では多く見られ、日本では奈良時代から作られている。磨崖仏に適した岩壁や露岩が大分県に多くあったと言うことではないか。
 豊後高田市の熊野磨崖仏は、紀伊國(和歌山県)の熊野権現を奉ずる一団によるものと言われているが、大陸からの距離で言うとこちらの方が近く、こちらが先だったかもしれない。ちなみに、和歌山県には磨崖仏がない。

豊後高田市の熊野磨崖仏
豊後高田市の公式サイトより転載

 例えば、水墨画に描かれるような岩山を日本で見ることは非常に少ない。あの岩山のモデルは中国の水墨画であり、ああいった風景は非常に中国的な感じがするのは私だけだろうか。

 何が言いたいのかといえば、大陸から船でやってきた人々が、瀬戸内海に入った時に、むき出しの岩山と湾のある国東半島を見て、祖国のような気持ちを抱いたのではないか?

 日本海側の土地であれば、人々の出入りが多すぎる。しかし、少し瀬戸内海側に入った国東半島あたりであれば、静かでちょうどよく、想像をさらに広げるならば、大陸の人々が理想の仏教国を作ろうとしたのかもしれない。

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