作者の出身地で日本一周の旅(中部編)


初めに

今回は中部地方出身の小説家の本を紹介していきます。
中部地方は訪れたことのない県も多いですが、ここで本を挙げながら旅行気分になってみようと思います。

新潟県:ブエノスアイレス午前零時/藤沢周

芥川賞受賞作です。藤沢周の本は何冊かしか読んだことがないのですが、これは印象に残っています。雪深い温泉宿のでの話です。主人公がひねくれた感じなので(最初に読んだときにそう感じたのですが、ネットのレビューを見るとみんなそう書いている)、ちょっとやさぐれた気分の時に読むとちょうどいいかもしれません。

富山県:あの子は貴族/山内マリコ

富山と言ったら山内マリコですね。(そう思っているのは私だけかもしれません)
私は庶民である自負があるので、貴族VS庶民の構図では庶民に肩入れしがちです。でもいい家柄ではそれなりにしがらみもあって、普通ならば考えなくていいことに気を遣うのも面倒だな、と思うのでどっちもどっちですね。
この本を読んでいていて、心が痛い、辛い、と思うこともありますが、極端な生活を見ることで、今生きている平凡な世界が少しはましに思えてくるかもしれません。

石川県:OUT/桐野夏生

本当にOUTな話です。お金や自分の生活を守るためなら何をしてもいいのか、ということを真剣に考えましたが、こういう状況に追い込まれていなくて自分は恵まれている、と息をつくことで精一杯でした。
エンタメとしてOUTを楽しめる人と、自分の生活にリアルに差し迫ってくるように感じてしまう人といると思いますが、人間の怖さが苦手な方は、少し深呼吸してから読むといいかもしれません。

福井県:羊と鋼の森/宮下奈都

映画化もされていて、有名なので皆さん読んだことがあるかもしれません。同時期に恩田陸の蜜蜂と遠雷を読んでしまって、一瞬混乱したことがあります。(引き寄せられるように同じようなテーマの本をチョイスしてしまうことってありますよね。ピアノ好きでしょ?というお告げだったのか…)
ピアノを弾くのではなく、調律でピアノと向き合う青年の話です。自分はピアノが弾けないので、関わり方として、演者をサポートする人というのも素敵だなと思いながら読み進めました。宮下奈都の文章は柔らかい雰囲気で、安心して読めるのでお勧めです。

山梨県:太陽の坐る場所/辻村深月

辻村深月もおすすめを一冊に絞るのは難しいですね。
辻村深月は一気読みをしてしまう傾向にありますが、この本もそうでした。タイトルがなんとなく目に止まって読み始めたくらいのライトな気持ちで始めは接していましたが、とても面白くて印象に残っています。人間って怖い、という毒を含みながらも、現実に迫ってくる描写が好きです。

長野県:虚魚/新名智

ホラーはたくさんは読まないのですが、縁あって手に取った作品です。横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作で、新名智の処女作です。
私自身は幽霊が近くにいたことがなく(おそらくいなかったのでしょう…目撃したことも、怪奇現象に遭ったこともないです)、怪談の類は、本当にあるのかな?と疑ってしまうのですが、それは怖がりだからかもしれません。あるものがないのも怖いですが、ないものがあるのも怖い、ということを考えながら読みました。
少し怖い本を読みたいときにぜひ。

岐阜県:スター/朝井リョウ

朝井リョウと言えば「桐島~」ではあるのですが、あえて違うものを選んでみました。朝井リョウは本当に、人の欲望を描くのがうまいな、と「正欲」「スター」と続けて読んで感じました。ああいやだ、醜いなあと思いつつ、自分の中にも共感するような部分は隠れていることを自覚します。痛いところを突かれている、と思いながら読みました。

静岡県:推し、燃ゆ/宇佐見りん

私にも推しと呼ぶ存在はいます。その人が幸せそうにしている姿を見るだけで自分も幸せになれるのが推しだと思うのですが、もしその推しが炎上したらついていくのか?それでも推し続けるのか?と考えることがあります。推しと呼べるものを持つ人には、より一層心に刺さる小説かもしれません。

愛知県:もえない/森博嗣

森博嗣の著作は、エッセイも含めると大量にあるので、そのすべてを追いかけるのは至難の業だと思います。成し遂げている人がいたらすごいです。尊敬します。あんなにたくさんあるシリーズものに手を出すのはちょっと…という方におすすめしたいのが、もえないです。この1冊だけ、サクッと(ではないかもしれませんが)入門編として読んでみてもいいかもしれません。

終わりに

なんだか燃えるような燃えないようなタイトルのものが集まりました。(偶然です)だんだん自分の好みみたいなものが現れてきて面白いですね。中部地方もあまり迷わずにスラスラと挙げることができました。
次回は近畿地方です。

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