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「スタジオIZ」 with FASTNER. (後編)



スタジオIZは 京都の阪急西京極駅から徒歩2分の線路沿いにある音楽スタジオ。大きな倉庫の中に入れば秘密基地のような空間が広がっている。
これから何が生み出されていくのか、FASTNER.メンバーがスタジオIZの今と未来を聞いてみた。

NEW WAVE in西京極

―「変わる」にあたってベースにしているもの、軸にしているものってありますか。

 ベースとしてあるのは「やりたい気持ちがあるならやったらいいやん」ですね。そもそもそこに面白さや好奇心があるからこそやってみたいわけじゃないですか。それを大事にしていれば、変わることはある種必然なのかなと思いますね。だからこそ一番はやりたいって気持ちがベースで、あとはやる気だったり覚悟が軸になるって感じですかね。その部分を理解して大事に思える人が多く集まる場所でありたいですね。

―積極的な人が集まるような場所ってことですかね。

 そうですね。積極的に何かやりたい、発信したいという人はここを通して何かを発信するきっかけにしてもらいたいですね。やっぱり西京極ってメインではなくて外れているわけで、今や「京極」といえば新京極じゃないですか。でも元々は向こうが「東京極」でこっちが「西京極」なんですよ。あくまで京都の辺境の端でしかなかったものが向こうは発展して、こっちは全然過疎っているなあ、みたいな(笑)。だからこそこっちは緩い連帯なんですけれど、飲食店や新しい繋がりの中から少しずつ、ゆっくりと着実な流れが生まれればいいなという思いはあります。

夜道の駆け込み寺

―地域性みたいなのを大事にしているんですね。

  人も限られているのでそうせざるを得ないというか(笑)。ここにある意味というか。この周辺って夜は道とか暗いんですよ。で、スタジオIZってほぼ一日中開いているんです。朝から夜までスタジオが開いていて、さらに月曜日と木曜日以外はBARもやっているので時々朝方まで営業していたりするんですよね。普段はうるさかったり、迷惑をかけていると思うんですけれども、それでも周辺の道が明るくなっているのは、多少防犯としても地域の役に立ってたりするのではないかなと。なんかあったらこの中入ったらいいやんという側面でも地域に貢献できていたらいいなあと思っていますね。案外今までずっとそうだったのかもしれないですしね。やっぱり夜道はおっさんといえど一人で歩いていたら怖いですし(笑)。

変化を面白がる人に来てほしい

―今後どのような人に利用してもらいたいですか?

 本当に、なにかやりたい人。「あ、それええやん、おもしろい。」ってのがここの原動力なんですよ。少し前にあったのは、「肉焼きましょう」ってやつで。「オッケー、じゃあ肉焼こうか」って店の外でバーベキューする流れになりました。知り合いが結構いるのでそのときはお肉を卸してくれる人にちょっといいお肉を卸してもらったり、魚屋さんの社長とかから格安でお魚を譲ってもらったり。最終的に肉、魚介、マツタケ、野菜が揃う大バーベキュー会になりましたね。

 あくまで誰かが発信して面白ければ乗っかってくる人もいるので、やりたいという気持ちがあるなら来てもらって。ちなみにあっち(取材させてもらっていた部屋の奥のスペース)とかも今はアーティストさんに作業場として貸していますね。そのアーティストの企画で、ピコピコハンマーで作品を作るっていう参加型のイベントには杉山さん(FASTNER.カメラマン)が参加してくれましたね。そういった毎回趣向を変えた企画を月1くらいでやっています。規模によっては難しいこともあるとは思うんですけれど、基本的にはできそうなら一旦やってみようかと。ある種どうなってもいいなあと思っていて。それを楽しむというか。変わっていくことを楽しむ場でありたいし、それに共感を持ってくれる人が来てくれればいいな。「また変わってるやん」みたいな。ここ(階段)の手すりとかも前は黒だったんですけれど、緑になっていたり。

―半年でメンバーもすることも変わるのでFASTNER.と一緒ですね。

 そうですね。きっとFASTNER.の中にも軸みたいなものがあると思うので、そういう意味では似ているかもしれないですね。

夢はでっかく、スタジオIZの未来

―これから挑戦したいことはありますか?

 大した挑戦でもないですけれど、防音設備を整えたらフロアでもライブをやってみたいですね。あとは一日建物すべてを貸しきってなにかやってもらうとか、もっとIZ全体を使ってなにかやるのも面白いなと思います。

―ここ(2階のテレビやソファーのあるスペース)とかでも弾き語りライブをしてもいいですよね。

 そういうのも月1でしています。アーティストが前で演奏して、みんなはソファーに座って聴いて、アットホームな感じでやっていますね。


―このスペース(部屋の奥のCDが沢山飾ってある壁面)はスタジオで録音された方々のものですか?

 そうですね。IZのメンバーやゆかりのあるバンドのCDや雑貨などが置いています。もう少し色々増えるとより広がりが出るのかなと。まあここもそうですし、外にもフィールドを広げることも考えています。最近あったのは、仲のいい西京極にあるラーメン屋さんで機材を持ち込んで、IZでBAR「漾々」を運営している「村島洋一」っていうシンガーソングライターがいるんですけど、彼の主催で協力してライブしましたね。諸所に音楽文化はそれぞれあると思うんですけれど、西京極は西京極で、今もこれからもそれぞれがやっていることが緩く繋がって、「西京極も結構やってるんや」みたいな。そういうのができたらいいですけどね。夢はでっかく、西京極競技場でやるくらいのね。せっかくあるならそれくらいまでできたら面白いなと思っていますけど、正直わからないです(笑)。

一番自由で面白い。スタジオIZ

―たくさんのことに挑戦されていて、「広がり」というのを大切にされていると思うのですが、スタジオIZさんの「ここだけは他に負けない、劣らない」という自信のある部分や、こだわり、大切にしているものとはなんですか?

 やっぱり、面白さかな。他のスタジオは多分こんなに面白くはないと思うし、貸しスタジオっていう業種というか、同業者の中ではいちばん面白いんじゃないかなあと思う。まだまだ面白くなるんちゃうかなと確信していますね。でも別に敵視しているとかではなくて、音楽業界って特に日本国内だとすごく小さい規模での争いでしかなくて。それで、アイツがどうだとか、単純にしょうもないじゃないですか。なに言ってんねやろ、くらいの感じなので、みんなでなんかやったらいいやんと思っていますね。そうやって動いている方々もいっぱいいらっしゃるので、そういう行動は見習っていかなければならないし、ここはここで、音楽を軸としながらもそれぞれが自由に活動できる場として、これからもここにあり続けるのが理想ですね。

 だから音楽をやらない人でも入ってこれる、というのが売りみたいなもので、そこをもっと打ち出していきたいし、理解してもらえたらと思っています。そういう広がりを作っていけるというのが武器であり願望であるというか。ここで学校行く前にコーヒー飲みに来るとか、用事があった時にふらっと寄って、「あ、めっちゃ変わってるやん」とか。実際色んな人がいて、色んな利用のしかたがあるんですよ。スタジオとして、カフェとして、BARとして、あるいは漫画を読みに来たりボードゲームをやりに来る人もいますね。ありがたいことに(僕も)そういう使い方を望んでいて、少しずつですが広がってきているように感じています。

―西京極の憩いの場みたいな感じを目指しているんですね。

 そうですね。ハブというか。「西京極といえばIZ」「IZ行ったらなんか面白いことあるんちゃうかな」と思ってもらえるスタジオでありたい。「スタジオIZ」というのも、元々は「リハーサル&レコーディング スタジオIZ」だったんですけれど、もう別に頭の部分は必要ないかなと思っていて、ただの「スタジオIZ」というふうに今後はなっていくんじゃないかなと思っています。

 やりたいことは他にもいっぱいあるので、今はここを面白くする種をまいている状況というか、仕掛けづくりをしている段階です。それが僕がいる間に花開かないかもしれないけれど、それはそれでいいかなと。別にここからビッグアーティストが誕生しなくても、ここがずっと面白い場であり続けるならそれが希望ですね。それがこの地域への希望でもあるし、こんないい大人が、働いているとはいえ半分遊んでいるともいえる状況が許される社会でもあってほしい。誰でもウェルカムだし、自由にやっていいよっていう場として完成形というか、完成はしないんですけれども(笑)。まあ、建物が壊れない限りは変わりながらそういう場であり続けるというのがスタジオIZなのかな。


やりたければやればいい、
そう背中を押してくれる場所が西京極にはあった。


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Interviewees / Yassan @ studio_iz_kyoto
Photographer / Natsuki Sugiyama @ 0371li
Write /Yuka Umino, Rena Okamoto @ 01re__na30
Edit /Nodoka Watanabe @ _ndk27
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