レポート『お寺葬 事例勉強会』 - 懐かしくて新しい葬儀の選択肢

みなさん、こんにちは。未来の仏教ラボの遠藤卓也です。
2019年4月16日に、大阪市西淀川区にある遍満寺にて「お寺葬」事例勉強会をおこないました。

「お寺で葬儀って当たり前のことじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、お寺で葬儀をすることはままあります。しかしどうでしょう。ご葬儀への参列経験のある方は思い出してください。その多くは、お寺ではなく葬儀会館にてとりおこなわれていなかったでしょうか。

地域によって差はあるかもしれませんが、そもそものご葬儀は自宅でおこなわれることが主流でした。村の人たちで協力しあって葬儀を出していた時代です。しかし近年、住環境が変わり多くの人が集まれるほどのスペースがとれなかったり、地域コミュニティの縁も薄れて自宅はプライベート空間であるという認識が強まったこと、葬儀会館をもつ葬儀社が各地に増えてきたことから、自宅やお寺での葬儀の頻度は減ったと推測されます。

お寺で葬儀を行なったとしても、その準備運営は葬儀社任せということが多い現状において、こちらの遍満寺ではお寺が主体となり専門家チームを組み、DIYスタイルでの「お寺葬」を2017年よりおこなっています。
今回は、遍満寺住職の河野清麿さんたっての依頼にて、未来の仏教ラボにて「お寺葬」の現代的なあり方を探る勉強会を開催いたしました。

なぜ「お寺葬」か?

今回の勉強会は寺院主体の「お寺葬」に興味のある方や、既に実施している方が集まり、河野さんの事例を聞きました。
そもそも河野さんが「お寺葬」を志した理由は様々にあります。まずお寺の事情としては檀信徒のゆるやかな減少があるということ。その檀信徒の変化については月参りを欠かさずに行なっている遍満寺のよく知る所となります。少子高齢化で高齢者の支え手が少ないこと。経済的な問題から菩提寺であるはずの遍満寺に葬儀を頼めないこと、等など。
外部要因としては火葬場不足等で葬儀日程の確定に時間がかかることも課題です。社会の無常なる変化に、現在の葬儀のあり方が対応しなくなってきているのではないかという問題意識がありました。

葬儀のひとつの選択肢として寺院主体の「お寺葬」が何らかの糸口になるのではないかと気づいた河野さんは、葬儀に関する講演会に参加したり、檀信徒にヒアリングを行なうなど、「お寺葬」実現のために動き出しました。

そしてある時、元葬儀社勤務で葬祭コーディネーターをつとめる株式会社F-LINEサービスの倉内誉斎氏と出会います。「ゆっくり時間をかけた葬儀がしたい」という志向が一致した二人は「理想のお寺葬」を検討し始めます。

専門家チームと作る、ハンドメイドの葬儀

日頃から檀信徒に対し「お寺で葬儀するのはどうですか?」とこまめにヒアリングしていた河野さん。その行動が功を奏したのか「お寺で葬儀がしたい」と望む方がついに現れました。
一回目は無我夢中だったそうですが、無事に終えることができました。遍満寺の「お寺葬」は回を重ねるにつれブラッシュアップされ、寺院主体で葬儀を行なうために必要な要素を揃えていくうちに司会者や遺体保存・メイク技術を行なう方々、法律家など、専門家チームが誕生していました。
信頼の置けるチームに任せられるからこそ、河野さんは遺族にしっかり寄り添い、要望に沿った形での葬儀が可能となります。「チームケア」は遍満寺 「お寺葬」の大きな特徴です。

当初は、スケジュール調整の難しさから葬儀までの時間があいてしまっていたのですが、いざ「お寺葬」として実施してみるとその「間」がグリーフケアにおいて重要であることがわかりました。そしてできるだけ、遺族の希望を聞いてあげて一緒に葬儀をつくりあげていきます。これが遺族が死に向きあい受け入れるまでのプロセスになっていると考えています。

遍満寺としては、檀信徒や今後檀信徒になるかもしれないご家族との関係性を築くことができ、さらにお寺という舞台に根ざした「死の物語」をしっかり伝えることで、ご葬儀以降の法事も大切に感じてくれるようになります。

少しマクロな視点にたってみると、2030年の年間死亡者数は160万人を突破し、深刻な火葬場不足が予測されています。また、葬儀費用をおさえようと公営の斎場の需要が増え、現在でも1週間〜10日待ちの場所もあるそうです。では増やせばいいいかと言うとなかなか難しいところで、斎場や火葬場の建築には地域住民の反対が伴います。新設も難しいとなると、遍満寺のお寺葬のように、ゆっくり時間をかけて葬儀を行なうことや、斎場の代わりにお寺を使うということは、火葬場や斎場の不足に対応するソリューションのひとつとしても捉えることができそうです。

もちろん良いことばかりではなく課題もあります。特に少人数のチームで行なっている為のマンパワー不足や、寺院で葬儀を行なうことに関してご寺族の負担も大きいものとなっていることも事実です。
また、お寺の状況によっては、葬儀社や周囲の寺院との関係性から、遍満寺のように自由に葬儀を作れないという場合もありそうです。河野さんのように、情報収集や人脈形成をしっかり行ない、寺院それぞれ固有の「お寺葬」スタイルを確立するプロセスは必須となります。

「お寺葬」の一般化を目指して

今回、河野さんが未来の仏教ラボへ呼びかけたのは、ひとえに「仲間を増やしたい」という思いがあります。遍満寺周囲の寺院で助け合えることももちろんですが、「お寺葬」という選択肢を一般化するためにも全国各地の寺院でそれぞれの「お寺葬」が実施されていくことを願い、惜しみなくノウハウを開示してくれました。遍満寺さんとお寺葬専門家チームの皆さま、ありがとうございました!

未来の仏教ラボ、そして未来の住職塾のつながりは、こうした横のつながりを作り、点を面として社会に見せていくことも意義であると、私達もあらためて実感させていただきました。
今後も「お寺葬」テーマはもちろんのこと、様々なテーマの勉強会やセミナーを開催し、寺院間の横のつながりを強めていく手助けをしてまいります。

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未来の住職塾

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