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井手正和著(2022)『発達障害の人には世界がどう見えるのか』SB新書

「木を見て森を見ず」という表現に納得

自分が癌になって初めて自分自身の身体すら自分では理解できなかったことを気づきとして、最近は目が見えない人はどう空間認知するのか等、人間の不思議に関する本を読むようになった。

この本も、発達障害の人がどのように物事を認識するのかに興味を持ち、購入した次第である。発達障害と思える人でも、ピアノが天才的にできる人や、アート感覚が素晴らしく、活躍している人もいたりする。

本書は著者の研究対象であるASD、自閉スペクトラム症について、その研究成果を紐解き、わかりやすく事例を上げながら解説している。

わたしは心理学では錯視に関して興味があるが、ASDを理解する上でも錯視の概念が使われていることが本書では面白いと共感した。

また、ASDをもっとも端的に表す「木を見て森を見ず」という表現に、良くも悪くも十分に納得がいった次第である。

僕らは物事の周辺状況を参考にしながら考える癖のようなものを経験から学ぶけれど、発達障害の場合は、注目する物事を本質的に狭く深く理解し解釈しようとするわけで、故に一般の人たちとの齟齬も発生するし、誤解もうんでしまう。

また、一般の人は脳を働かせるのに、何らかのリミッターがかかるが、発達障害の人は、そのリミッターが働かないという点で、より繊細なところまで脳が思考してしまうという意味で考えさせられる内容も解説されている。

わたしにとっては、本書との出会いで、また人間の内なる無知の一つが解明できたような、そんな感覚をもつことが出来た。この本をステップに、また内なる無知の解明に進んでいこうと思う。

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