私の名は能條まどか。糞フェミだ。

糞フェミだって好きな男の子供が生みたいのだ、というか、女にとって好きな男の子供が産みたい以上の欲求などない、それは、男にとって好きな女に子供を産ませたい以上の欲求などないのと同じだ、だって、自分が惚れた男、もう、好きで好きでたまらない男、その男の子供を産むのだ、うれしくないわけがない、それも、女の子ですらうれしいのに、もし男の子だったら、好きで好きでたまらない男のミニチュアが手に入るのだ、自分のものになるのだ、どれだけ可愛がっても許される形で、自分が好きな男の分身が手に入るのだ、毎日毎日、面倒をみて、毎日毎日、世話ができるのだ、祝福あれ、栄光あれ、これにまさる快楽はない、慈愛、育て慈しむ、女の本懐、つまり、私だって綺羅君の子供が欲しいのだ、綺羅君がまだ子供だとか、そんなことはどうでもいい、もともと武家の男子は十六歳で元服だし、町家ならもっと小さい頃から奉公に出て働いている、社会の中で立場を得て、誰かの役に立っている、認められている、社会構造の機能には、もともと年齢など関係ないということだ、江戸時代は女だって、二十歳過ぎれば年増だった、私なんか二十歳過ぎまくっている、冗談ではない、子供を産みたいのだ、中学生男子の綺羅君の子供を産みたいのだ、好きで好きでたまらない綺羅君の子供を産みたいのだ。

だって、ただそのためだけに私の膣と子宮と卵巣はあるんだもの。

冷静になって考えてみれば、どういうタイミングでどういうことになるか、わかったもんじゃねーな、私のやり方で準備しとかなくちゃ、いざとなって慌てても困るもんな、うちの雌豚に言われて、なんかちょっと気付いた、というか、なるほどそうだよなと思った、いざとなったときに、万事丸く収まりはしないにしても、どうにかまとまりそうな程度には根回ししておかなくちゃいけないんだ、世の中というのは不思議なもんで、ほんの少しでも言い訳が立てば、あれこれ言われつつも許されるものなのだ、なにもなければ、そのまま爆ぜてしまうことだってある、それは避けたい、避けねばならない、そういう結論に達したので、しっかりと手順を踏むことにした、まずはうちの雌豚を口説き落として、綺羅君と綺羅母の、というか先方御一家の身上調査を、興信所に頼まなければならない、そこでなにか決定的な問題がみつからないことを祈るばかりだが、まあいいや、いざとなったら死ぬという選択肢がある以上、なにも怖くはない。

夜になってご機嫌伺いのために綺羅母に電話すると、なにやら気になることを聞いた、このごろ綺羅君がちょくちょくひとりで出掛けているっぽいというのだ、まどかさんいっしょじゃないよねとか、聞かれちゃった、びっくりした、もちろんそうだし、私といっしょならべつだん隠すこともないですから、と、惚けたみたいに返事しちゃった、いやいやいやいやいやなんだそれ、私は知らないぞ、どういうことだ、綺羅君の心理状態に、なんか変化があったんだろうか、でもきっと綺羅君のことだから、悪気があってやってることではないんだろうけど、あああああああああああ気になるなあ、気になる、綺羅君のほうから言い出さないうちは、私から聞くのも、なんだか咎めるようで嫌だし、それは優しくない気がするし、かといって気にしないでいられるほど、私の器は大きくないぞ、どうすればいいんだ、こんなとき、あわわわわわわわわわわわわ、試験勉強にも身が入らず、SNSを見てもyoutubeを見てもぜんぜん頭に入ってこず、かといってオナニーする気にもならず、ただぐるぐるぐるぐるぐるぐる妄想がまわって、ほとんど吐きそうになりながら、じたばたじたばた、部屋で煩悶していると、スマホが鳴った、綺羅君からのメッセージだった。

[おねえ　さん　いますか]

　　　　[いますいますいます綺羅君大好き綺羅君大好き]

[おねえ　さんに　ちょっと　そうだんしたいことが　あって]

　　　　[はいはいはいはいお姉さんなんでも聞くよ綺羅君大好きだよ]

[ぼく　というより　あっちの　ぼくの　ことで]

　　　　[はいはいはいはいはいはいなんでも聞きます]
　　　　[綺羅君好き好き好き好き好き好き好き好き   ]

というわけで、次の週末に綺羅君と会うことになって、なにやらわからないけど、あの綺羅君についての相談を受けることになって、なにやらわからないけどぜんぜん蚊帳の外というよりはちゃんと私のことを考えてくれていたのがうれしいので、自分内協議の結果、問題ないという結論に達し、安心してオナニーして寝たのだった、私はなんというかそんな程度の人間なんだと自分で思ったが、実際そんな程度の人間なのでどうということはないのだった。

つづき→ https://note.mu/feministicbitch/n/n0caa8d15b1f8