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明日のバス未来のバス

先日、木更津の山奥に行った。

内房総一帯を会場とする「百年後芸術祭」のライブイベント、《スーパーフォークロア》に参加するためだ。

芸術祭とリンクしているので、ふだんの野外フェスとは趣が少々異なり、ダンサーが華麗にポールダンスを舞うなどした。

いっぽう夜空には、400基ほどのドローンが舞い、星空や、音楽にリンクする絵が描かれた。

人間は星空も操れるようになったのか、と畏怖の念を抱きつつ、バグる1基をめざとく見つけて、愛おしさも抱く。

行きは電車を使ったが、海沿いをぐるりとまわるため、ゆうに2時間を超えた。寝ても寝ても着かない。

帰りは、川崎と木更津を直線で結ぶ東京湾アクアラインで、最短距離を駆け抜けることにした。

とはいえ免許がないので、高速バスの世話になる。
千葉から神奈川まで1時間かかっていない。そわそわと車窓を眺めていたら、あっという間。

なんなら、木更津駅からライブ会場までも、シャトルバスの世話になった。

いま、「ニャトルバス」と打ち間違えた。ネコバス、臨時運行始めたってよ。

話がそれた。

そういえば、高速&シャトルバスに乗り込むときと降りるとき、自然とこう言っていた。

「おねがいしまーす」
「ありがとうございました~」

自分で言ったわりに、なにか引っかかるものがあった。

わたしは、普段からよくバスに乗る。

それなのに、路線バスに乗るときに「おねがいしまーす」や「ありがとうございましたー」を言ったためしがない。

運んでもらう距離の違いか、日常と非日常の違いか、料金の違いか。
ワクワクを前に、遠足や修学旅行の記憶がよみがえったのか。

と考えていたら、こんなニュースを目にした。

ドライバーの時間外労働規制が強化されたことによる、2024年問題。

人材確保のため、処遇を改善したり、採用方法を見直したりする、という報道だった。

わたしが使う路線も、この春から1時間につき1本減便になってしまった。

ラッシュ時は、客を積み残すこともある。
需要はあるのに、供給が全然足りていない。

車内広告も、「キミもバスの運転手になろう!」「女性も活躍中!」と強めにいざなうものが明らかに増えた。

猫の手も借りたい状況とはこのことだろう。

だからといって、ネコバスはいまのところトトロじゃないと呼べないし、ニャトルバスの臨時運行もない。

自宅からJRの最寄り駅までは徒歩60分、高低差50メートル。高齢化がすすむ近隣住民にとっても、バスは生活必需品だ。

在宅勤務は定着しなさそうだし、リアルサヨナラバスになってしまうと困る。

とはいえ、転職する予定もないし、免許もないし、わたしにできることないなァと思って読み進めていると、記事はこう結ばれていた。

横浜市交通局の田中省吾人事課長は「横浜の風を感じながらバスを運転し、ありがとうの声を受け、日々やりがいを感じる職種はほかにありません。ぜひチャレンジしてほしい」と話しています。

むしろ、路線バスの運転手さんにこそ「おねがいしまーす」「ありがとうございました~」を声に出して言うべきだな、と思った。

公共交通機関は存在があたりまえで、そのありがたみを忘れがち。

猫の手おろか、鳥の羽、魚のヒレにも及ばないかもしれないけれど、協力できることはありそうだ。

大切に思うほど大事なことが言えなくなって、と、『サヨナラバス』の歌詞中でゆずも歌っているじゃないか。

あとは、未来の運転手さんに運転したいと思わせるような、愉快な車体も一般道を走ってくれれば。

こういうバスなら、日常の中で非日常を感じられて、お願いしますとありがとうも自然と口から出そう。笑みとともに。

百年後芸術祭は、千葉県誕生150年を記念して開かれた、あなたもわたしもここにいない、百年後について考える芸術祭だという。

芸術祭の意図に反しているかもしれないが、あなたもわたしもここにいる、まさに「今」について考えさせられてしまった。

いや、これが未来へ思いをのばすことに繋がっているのか。

百年後は、人が乗れるドローンが公共交通機関と化して、夜空をせわしなく行き交っているかもしれない。

そのドローンはバグらないといいけど。

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