見出し画像

[焚火/基礎技術01]大定番の焚火型ロングファイヤー再考

野営の習慣として手の内にしておくべきベーシックスキル
自然界での自給自足に欠かせない、サバイバルスキルの醍醐味とも言える焚火。多種多様な手法が存在する焚火だからこそ、まずは定番技法を完璧にマスターしておきたい。ここでは多くのアウトドアマンが独自に発展させている焚火の型と炊飯術を整理し、それらの「基本形」を抽出。すべての根幹となるベーシックスキルとして解説する。

01.ロングファイヤー再考

火の原則を理解すれば自ずとこの型に辿り着く

 焚火にまつわる名言の中に〝火は薪の間に存在する〞といった言葉がある。これは先人の度重なる経験から紡ぎ出された賜物と言えるが、火の発生を端的に捉えたモデル〝ファイヤートライアングル(※1)〞と照らし合わせてみても、見事に本質を言い当てている。実際、安定期に入った焚火を観察してみると、確かに炎は薪の上方ではなく、下方から薪を包み込むように上がっている。これは大気に熱が逃げてしまう上面より、隣り合う薪によって熱された下面〜側面から可燃ガス(※2)が噴出しているからなのだ。ゆえに焚火を俯瞰すると火は薪の間に存在するように見えるのである。
 というわけで、この現象を最も効率よく火の維持能力として発揮できるのがロングファイヤー型である。丸太の間に薪が挟み込まれるこの型なら熱が大気に逃げず、薪同士が互いを熱しあって効率よく可燃ガスを引き出せるのだ。当然、薪同士の間隔が狭くなるため純粋な吸気効率は犠牲になるが、この問題も付近を流れる川と平行に設置する、丸太の下にゲタを履かせるなどの手法で解消できる。火熾しから調理や暖房に必要な熱を得るに至るまで、確実に火が育つ実用的技法と言えるのだ。
 最終的に焚火は、個人のスタイルに最適な手法を選択するべきだろう。とはいえ、焚火をライフラインとする山ヤや沢ヤ、釣り師たちがこぞって採用するこの型は〝実用性〞という面で最高峰である。

※1:下の記事で解説
※2:固体である薪自体が燃えるわけではないことも、下の記事を参照


熱を閉じ込めて火が絶えない最も実用的な焚火レイアウト

当然焚火を熾す環境によって最善の型は変わるが、平地に単独で焚火を熾すならロングファイヤーが最も有効だろう。熱を逃がさないので火が絶えにくく、地面と平行に薪が積み上がるので調理時にコッヘルなどもおきやすい。

02.ロングファイヤー型のメリット

メリット①

焚き付けを大量に置いても酸欠にならず火熾しが簡単

焚火の型自体にそれほど吸気能力はないが、火熾し時の焚き付けは風通しの良い平面に置くことができるため火の回りが早い。大量に焚き付けが置ける点もメリットで、薪の可燃ガスを引き出すに足る熱量をすぐに確保できる。

メリット②

周辺の川と平行に配置すれば酸素も効率的に取り込める

川と平行に配置し、谷を吹き抜ける風を利用すれば、本来風通しのあまりよくないロングファイヤー型でもオートマ感覚で酸素を供給できる。この写真を見ての通り、風が吹き下す上流側から炎を上げて燃えてくれるのだ。

メリット③

丸太の間隔を調整するだけで火力を自由自在に変えられる

純粋に丸太の間隔を開けば熱が逃げて火力減、間隔を開いて薪を追加すれば火力増、薪が炭化して小さくなったら間隔を詰め、熱を再び溜め込んで火力安定……など、調理や暖房といった用途ごとに火力を自在に操れる。

メリット④

火床が水平かつ広面積なのでコッヘルなどが置きやすい

他の焚火型であればポットハンガーが必要となるシーンでも、ロングファイヤー型なら火床を少し整えるだけでそのままコッヘルなどが置ける。火力を得られる面積も広く、置く場所によって強火~弱火を使い分けられる。

メリット⑤

丸太の下にゲタを履かせれば、より吸気効率は向上する

ロングファイヤーのメリットは何より単純な構造にある。丸太間隔による火力調整もそうだが、丸太の下に石や木片などでゲタを履かせれば、下方からの吸気でより燃焼効率を上げられる(高くしすぎると熱が逃げるので注意)。

メリット⑥

その使い勝手を生かして焼き鳥もできる

薪が炭化してきたら丸太間隔を広げて炭をならし、鳥肉を串刺しにして焼き鳥ができる。炭火は煙が出ないため、肉本来の味をしっかり味わうことができる。もちろん丸太に網や鉄板を置いても良し。

03.ロングファイヤー型の構築法

ブッシュクラフトの教則本などでも定番の焚火型となる、丸太を両サイドに配置し、ゲタを履かせたタイプのロングファイヤー型。他にも地面に細長い穴を掘って薪を囲うバリエーションもあるが、所要時間や吸気効率を踏まえると、今回の型が最善である。

ステップ① 
キーポイントは太い丸太

はじめに太い丸太、細い丸太、枝、焚きつけを用意する。太い丸太は囲いが主な役割なので濡れていても、あるいは生木でもOK。

ステップ② 
吸気効率を上げるゲタをセット

太い丸太をそのまま地面に置いても良いが、ゲタを履かせた方が吸気効率も高まり火が絶えにくくなる。こちらも濡れ・生木でもOK。

ステップ③ 
丸太を2本平行に置く

薪の囲い役となる丸太はできるだけ真っ直ぐなものを選んだ方が後々コッヘルなどを置きやすい。時間を割いても良いものを拾おう。

ステップ④ 
底面には太めの枝を渡す

一番下に置く薪は太めの枝(細めの丸太)を渡しておく。すぐに燃え崩れてしまうと地面に熾がたまり、ゲタの効果が薄れてしまう。

ステップ⑤ 
メインとなる薪を置く

先ほどの太い枝の上にメインとなる薪を置く。この際、欲張って両端の丸太間隔を広げすぎると、火が安定しなくなるので注意。

ステップ⑥ 
焚き付けを大量に置く

ここまでくると、ロングファイヤー型の上面はほぼ平らになっているはずである。大量の焚き付けを置くことができるだろう。

ステップ⑦ 
火をつけてしばし待つ

焚き付けに火をつけて、細い枝で蓋をするように覆い隠し、熱が溜まるのを待つ。メリットの項で書いた通り、しっかりと薪に火が移る。

この記事が参加している募集

アウトドアをたのしむ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?