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可能態|できるが「べき論」になる世界で

ふらにー。(望月花妃) です。社会人になりました、24歳になりました。大人になればなんでもできると言いますが、何もできないのは私が大人じゃないからでしょうか。身体ばかりが年を重ねて、心はまだ現実を受け止められていません。

「潜水艦の中で息をするような」時間のすえ、決意のような言葉を連ねました。人生は「やり直せない」から失敗したくなかったはずなのに、今では真逆になってしまったというお話です。短いので、冷やかしに読んでいってください。

東大卒なのに良い会社じゃなきゃ、「勿体無い」?
「選択的」夫婦別姓制が実現した後で、苗字を揃えたら「おかしい」?
Chu! 150cmのロングヘアに淡い色のスカートばかりで「ごめん」(?)
ChatGPTにファンレターを書かせられないのは、「愚か」ですか?

前半の概要、後半はお楽しみ。

選択肢は多い方がいい、できることが増えればいい。
東京から京都まで2時間で行けるようになった。
でも、青春18切符で行ってもいいし、自転車で行ってもいい。
歩くこともできるし、車も乗れる方が良くて、空も飛べる方がいい。

「できるなら、した方がいい。」

東大に入ったなら、良い会社に入ることができる。
なら、そうした方がいい。
「良い」というのはここで、年収とか社会的地位を表している。
自分の希望にかなうか否かということは、あまり考えられていなかった。

良い大学に入った方が選択肢が広がるし、いざというときの支えになる。
はずだった。
セーフティネットだったはずのものは、落下を防ぐとともに、
いつしか、それよりも「下」に行くことをも禁じていた。

いつからこうなったのか。
選択肢を増えることはいいこと。そこまではOK。
でも、その「できる」のなかに、いつしか優劣が生じていて、
結局「できる」もののなかに、した方がいいこととしない方がいいこと、
すべきこととしてはいけないことができていた。

選択的夫婦別姓制も、そうなってしまうんじゃないかという危惧がある。
違う苗字でいられるなら、した方がいい。
自分の名前を残せるのに、相手の名前にするなんて「おかしい」。
私は、夫婦別姓が実現したら嬉しい。
でも、同じ苗字にしたい夫婦が、その選択が「下」に見られるなんて、
そんなの絶対に嫌だ。

誰かにとっては建前かもしれないけれど、メイクをしなくても、家事をマスターしなくても、スカートを履かなくても、痩せていなくても、ピンクが嫌いでも、本人がそうだと言ったら「女の子」だと思う。
この時代に、かつてイデアと言われた要素で固めた、ふわふわの「女の子」でいるということは、「愚か」だろうか。

そんなことはないはずだ。
私、ずっと、そういうふうな社会にはしたくなかった。

べき論から逃れたはずが、新しい選択肢が「ベター」として優位に立つ。
そのなかで、「従来型」は下に見られることが多い。
Chat GPTが数秒で考えられる程度の文面だとしても、ゼロから自分の言葉で手紙を認めたい日もある。
この愛情表現が「非効率な馬鹿」と蔑まれる日が来るの?

「多様性の時代」「何もかもグラデーション」といえば聞こえはいいけれど、
そこかしこに「優劣」のグラデーションが生じていることに、
生じさせていることに、どうして気づけないのか。

本当の意味で、「みんな違ってみんな良い」が存在するのか。
24年しか生きていないけど分かる。
そんなの、この世界にまだない。

「みんな違ってみんなダメ」と、すごく口が悪くてすごく良い会社に入った知人が言っていた。
あの言葉を、今日では「酷い」と思わないようになった。

もう、ダメでいい。
「できない」とか「今は無理」って言えるように社会が変わっていくといい。
「要らない」って言われるのはまだ怖いけど、もう、そうなってもいい。
だって、何かひとつダメだって、それだけが私のでもない。あなたのすべてでもない。

いろんな選択肢を増やすくせに、どうして「ダメ」になる可能性を見ないのだろうと感じる場面が、この一年すごく多かった。
人間は機械ではないのだから、博士もマスターもいない。
異変を見つけてくれる人やストップをかけてくれる存在は保証されていない。
だから、選ぶ必要がある。

無限に増えたなかで、「したい」はどれなのか。
残存する「できないことは、しないほうがいい」を一蹴して、
「できないことを、できるようになりたい」と何歳までいえる?
有限の時間を「しておいた方がいいよ」に溶かしてきたことを忘れない。

「何にだってなれるよ。」
そうだね、ありがとう。
でも、6歳の時に憧れていたアイドルのオーディションには「未婚で22歳以下の女性」って書いてある。嘘。

「結婚しても、戸籍上も望月のままでいます。」
「周りに聞かれたら、何て答えるの。」

産める体に生まれたのなら、産んだ方がいい。
産みなさい。あるいは、「楽しみ。」「期待して待っているね。」
その言葉を、24の身体も聞くだろう。
14歳になってすぐに生理が止まって17歳の秋に戻った。
24歳の今日まで、ほとんど毎月下着を赤茶色で汚している。
それは、「できる」を意味している。

ほろ苦い「ベター」に包まれたなかでも、「私は、したくない」を言えるようになりたい。


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