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パルプ小説:West Side Stream

「ギャーっ!!」
何やら叫び声が聞こえる。しかし、街を歩く人々は、その叫び声にリアクションも起こさない。
もしかしたら、ただアタマのオカシイやつが叫んでいるのかもしれない。
猫か?動物かもしれない。
そんなことはどうでもいい。この街では、そんなことはただの日常だってこと。
日常ってのは、朝起きてクソをして、歯を磨く。そして、タバコをまずいコーヒーと共に、吸う。これが日常だ。
歯を磨いた後にタバコを吸う。意味のないことの繰り返しだ。歯を磨くのは、タバコを吸った後か?吸う前か?どうせ、毎日は繰り返しだ。後に前にもタバコは吸うし、歯も磨く。

ドンキの前で酒を煽っている。ドンキの前の広告には5ヶ国語の言語が書かれている。一番上には中国語、次に英語、その次はベトナム語、ポルトガル語、最後に日本語だ。
治安の悪いところに、大抵、ドンキはある。ここも例外ではない。
ドンキの店主もわかっている。何が一番読まれる言語なのか、この街で。

深夜の2時。パトカーのサイレンが鳴っている。日本語で話しているのは、俺とその隣にいる友人だけだ。

「一人暮らし始めるとさ、クリームシチュー食べたくなるんだよね。」
友人は手に持っていた金麦を置き、話す。
「俺は、クリームシチューよりカレーだな。」
「俺も、一人暮らし始める前はそうだったんだよ。でもなぜか、クリームシチューが食べたくなっちゃうんだよね。」
「よーわからんわ。」
交差点挟んだ中華系の飲み屋でカップルが喧嘩している。女の方が、中国語で男を捲し立ててる。
「むしろ、嫌いだったんだよ、家族で暮らしている時は。米に合うオカズが好きだったんだよね。俺は。」
フィリピン人のおばちゃん軍団が、俺らを素通りして客引きをヤっている。
「あー、今その波が突然、来てるんだよね、クリームシチューの波が。」
「何だよ、それ。」
「この波に乗るしかねぇか?」

「私とキャバクラ行きません?」
突然、俺らに女性が話しかける。

【続く】

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