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【フィナンシェ話#8 後編】寄付や投資は日常生活にあるものと伝えたい

 様々なバックグラウンドの方に伺う、子どもとの買い物、お小遣い、お年玉、寄付や投資のこと…。そこから自分の子どもにつながるフィナンシェ(金融家)なヒントを探ります。

 前編では、寄付を中心にお話を伺いました。後半も引き続き、コモンズ投信の平田さんに金融教育全般について、お話いただきます。

■ 親以外の大人が教える金融教育の必要性

ー平田さんはFPの資格も取得されていますが。子どもの金融教育にはどのような関心を持っていらっしゃいますか?

平田さん:私は、2012年にFPの資格を取ったんです。地域の支部で4年ほどお小遣いゲームの開発担当をしていました。コロナ前までは、FP協会からそのお小遣いゲームを借りて、子どもたちにゲーム大会を開催するなどの活動もしていました。

 お小遣いゲームはすごろくの形式で、マス目によってお小遣いが出たり入ったりするようなものです。目的は、お小遣い帳をきちんとつけましょう、というもの。色々あるお金の使い方のうち、投資は小学生向けにはちょっと難しいので、それ以外の消費と貯金、保険、寄付のイベントをすごろくのマスにバランスよく散りばめて。寄付のマスに止まったら、こんな寄付の仕方があるんだよ、とゲームの中で伝えるような感じですね。

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(おこづかいゲームの様子。様々なイベントが組み込まれています)

 小学生くらいの子どもたちは銀行の存在を知っているんですね。そうすると今度は、銀行がどういう目的で存在するのか、預けると金利がつく、など銀行機能の説明が必要になります。このゲーム大会に参加した結果、じゃあ銀行口座を持った方が良いね、という会話が親子の間で生まれて、実際に銀行口座を作った、というご家庭もありました。

ー何年生くらいの子が参加されているのでしょうか。

 低学年向けと高学年向けがあるのですが、前編でお話した通り、高学年にもなると親がいくら「お小遣い帳をつけなさい」と言っても全くやろうとしない。でも、このゲーム大会に出ると、講師がいるし、みんなで書いていこう、となると割と素直に書いてくれるんです。いくら良いことでも、親から押し付けられた、という感覚にしないことが必要だと感じています。

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■ 誰かのために自分のお金を旅立たせる行為が、投資や寄付

ー投資信託の会社に勤めていらっしゃいますが、お子さまたちは平田さんのお仕事のことをどう理解されているのですか。

平田さん:投資信託とか、投資の会社に勤めている、ということは知っています。でも、私が思うレベルで投資信託や投資のことを理解していないんだろうなと。

 前編の寄付の話でもありましたが、「自分の持っている物を、誰かのために手放す行為は社会的に必要」、と昔から事あるごとに伝えてきたつもりです。その時に見返りを求めないのは寄付、将来に何らかの見返りを求めるのがおそらく投資なのだろうと。でも投資となると、難しい、怖いという情報も溢れている。その見分け方を社会人になる前に知っておいた方が良いとは思っています。社会人や大学生になった上の子どもたちには、お金が絡む契約などには「父がFPなので一旦相談させてください!」と言ってもらう。今はこれくらいしかやっていないですね(笑)

ー複雑な金融商品もありますよね。

平田さん:子どもだけでなくて親も分からないような、どんな仕組みで成り立っているか理解が難しい金融商品も増えてくる可能性があります。親もきちんと勉強しないと、自分の財産を守れないですよね。
 米国では、老後を考えると必ず投資の概念が入ってきます。金融資産には投資の割合が多いので、投資は日常生活になじんでいます。一方日本では、学校教育でも家庭でも金融の話題に触れる機会は少ないので、情報として知らないまま大きくなっちゃう。だから、親がどうお金を使って日常生活を送っているのか、ということを子どもに伝えるだけでも違うかもしれない、と思っています。

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ーキャッシュレスも進み、親が分からないことが更に増えてきそうです。

平田さん:現金を持ち歩いて、現金でしか決済をしない、というケースは減るはずで。子どもたちが大人になるころは、絶対スマホやカードでピッとするのが主流になるから、キャッシュレス決済も教えないといけないですよね。1円玉だって本当に1円の価値があるの?という話になってきそうですし、紙幣や硬貨を出して物を買う行為から物々交換のイメージを抱くかもしれない。そんな時代になりつつあるのかな、と思いますね。

ー最後に、今まで上のお子さまたちに教えてきた経験から、一番下のお子さまにはどんなことを教えてあげたいと考えていますか?

平田さん:お金は、自分のためだけに使う部分だけではなくて、他人のために使う部分が必ずある、ということをこれからもきちんと伝えていきたいと思いますね。
 長女の時にあまりちゃんと伝えられなかったのが、小さいころからの習慣として、お金こうやって使うものなんだ、ということ。習慣化できなかった部分があるので。生活の習慣として、これが当たり前の状態なんだよ、というとにしたいです。寄付や投資も、日常生活にあるものなんだよ、と伝えられたら良いなと思います。それが押し付けにならないように、子どもたちが将来選択できるような情報を提供できたらと思っています。

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 前編、後編に渡り、平田さんには家庭でお金のことをどのように伝えているかを教えていただきました。子どもが大きくなるときには、きちんとした金融の知識を付けていてほしい。そう感じるなら、「自分は分からないから」ではなく、「子どもと一緒に学んでみよう」というスタンスでも良いのかも、そう感じさせられる内容でした。
(取材日:2020年11月25日、取材:Mari Kamei)

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