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【フィナンシェ話#2】子どものお金の使い方を見守る

 様々なバックグラウンドの方に伺う、子どものお小遣い、お年玉、寄付や投資のこと。そこから自分の子供につながるフィナンシェなヒントを探ります。
 今回お話を伺ったのは、株式会社Warisにて女性の復職支援や職場の多様化推進のためのコンサルティング、鎌倉サステナビリティ研究所ではESG(*)投資に関する人材育成など、その他マルチなご活躍をされていらっしゃる小崎亜依子さん。現在、高校2年生の息子さんと中学3年生の娘さんとの関わりを通したお話は、未就学児2人を抱える筆者にとって新鮮でかつ、同じ立場だったらどうするだろうと考えさせられるものでした。

ESG(*):企業の持続的な成長には、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の視点が必要という概念。ESGに各社が考慮して経営することが、経済社会の持続性にも寄与する。

■ これがスマホ現役世代のお小遣い事情!?

──新卒でアセットマネジメント、その後ESGの評価分析などもされていた小崎さんですが、ご家庭ではお子さんへのお小遣いなど、お金について教える工夫は何かされているんでしょうか?

小崎さん:私、そんな大して教えていないんですよ! なのにお話してしまって大丈夫ですか? お小遣いといえば、実は失敗したなと思うことがあって。
子どもたちが小学生のころの夏休みの時です。息子と娘に家事、特に料理のお手伝いをしてほしくて、洗濯物を畳んだらいくら、この家事をしたら50円、この家事は少し難しいから200円…、という形でお小遣いをあげることにしたんです。1日一つでもやってくれたらなぁくらいの軽い気持ちでしたけど、お金欲しさにものすごい働いたりして。結果、意図していなかった金額になっちゃったり。そもそも、家事の手伝いは自主的なものなので、夏休みが終わってこのお手伝いのお小遣いをやめたんです。そうしたら、子どもたちが本当に家事を手伝わなくなってしまって。なかなか思うようにはいかないですね。


──お小遣いを単純にあげるだけでは子どもの身にならないので、そこは私も工夫したいと思っています。でも、何の対価としてあげるのが良いのか、という点は難しいですよね。

小崎さん:そうですね。今はSNSを通して子どもたちはいろいろなネットワークを形成しているので、そこでグッズの売り買いもしていたり。気づいたら、子どもたちの間で人気のあるグッズを手作りしてメルカリで売りさばいていた、なんてこともありました。


──えっ、メルカリで!? 親から売ったらというアドバイスをした訳ではなくてですか?

小崎さん:そうなんです。見よう見まねで学んだようで! 実家の母が趣味のものを売りたいときにも、子どもたちがメルカリの使い方を教えたりしていました。


──まさに今時でたくましいですね。

小崎さん:ほんとうに。スマホ時代、どこまでをコントロールするのかは本当に悩ましいですね。

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(幼少期のお子様と小崎さん)

■ 自分で物事の本質を考えられる力と稼げる力を

──来年から私の長女が小学校入学ですが、これからどんどん親の目の届かない世界に行ってしまうんですね…。ここまでお子さま自身のために使うお金について伺いましたが、寄付の体験はどのようなものあるのでしょうか。

小崎さん:子どもたちが小学校の時に被災地に寄付しましょうといった取り組みが小学校であったんです。親からお金をもらって募金している子もいたようなのですが、それでは意味がないので、出すなら自分のお小遣いから出そうね、とは話しました。結局出さなかったように思います。でも、できる支援はお小遣いから募金することだけではないので、子どもたちとできることを考えて、好きな絵本をいくつか寄付することをやりました。
 あと、その時思ったのが、小学校とかで子ども達みんなでクッキーなどを焼いて、それを学校や地域で販売して得た利益を寄付する、というような取り組みができれば良いのに、ということです。海外のレモネードスタンドのような自分でお金を稼ぐことを学ぶ機会は、日本ではまだまだ少ないですよね。お金を稼ぐ体験からは、いろいろなことが学べるのになと思います。


──盲目的に寄付をするよりも、自分のお金を出したいかと決めて、寄付しない選択を子どもがするのも大事だと思いました。寄付のような話はお家の中でも話すことはあるんでしょうか。

小崎さん:よく話しますね。該当で募金を集めている団体をみると、その団体がターゲットにしている問題、この募金活動で稼げるであろうお金、そこにかかるコスト含めて、これが本当に効率的なのか?みたいな話を仕向けてみたりします。やみくもに募金集めをすることが解決策とは限らないし、一見よさそうに見えることを盲目的に信じるのもよくないし、とにかく自分だったらどうする?と考えてもらいたいなと思っています。本当に良いことは何なのか。正解はないのですが、今振り返ると子どもたちとはそんな話をしていましたね。


──そのような会話ができるようになるだけでも、子どもの視野が変わりそうです。

小崎さん:そうですね。子どもは親の「こうなってほしい」「これはして欲しくない」と言う思い通りにはなってくれません。いくら親がやってはダメ!と言って監視をしても、親の目が届かないところで友達の助けを借りながら、禁止されていることもやってしまう。スマホもゲームも。そんな例はたくさんあります。ですので、すべてをコントロールすることはそもそも不可能なので、私からは人としての基本的なスタンスくらいしか教えられないかなぁとは思っています。あとは、娘には将来自分で稼げるような力をつけてほしい、というところでしょうか。自分の人生は自分で切り開くしかないですからね!


【インタビューを終えて】
 中学生になると親の知らないところでお金を貯めて使ったり、そして稼いできたり、という話を聞き、とても驚きました。そして同時に、私だったら子どもの行動が気になってしまいそうだと思いました。小崎さんの管理しないで、価値観の軸になることだけを伝える、といった方針だからこそ、子どもが自ら考えて工夫するようになるのかもしれません。皆さんはどのように感じられましたか?
 またこの場をお借りして、お忙しい中取材にご協力いただきました小崎亜依子さんにお礼を申し上げます。

お話を伺ったのは・・・
小崎 亜依子さん
野村アセットマネジメント株式会社を経て、留学・出産育児で5年のキャリアブランク後、NPOでのアルバイトで復職。2007年より株式会社日本総合研究所で、企業のESG側面の評価分析を行い、社会的課題解決を投融資の側面から支援(日本証券アナリスト協会、企業価値分析における ESG 要因研究会委員)。「なでしこ銘柄」における企業分析などを担当した後、2015年株式会社Warisに参画。
自身の経験を活かし、キャリアブランクのある女性を対象としたインターンシップ事業を手掛けるとともに、プロフェッショナル女性を対象としたプロジェクト型ワークの創出や多様化推進のためのコンサルティングを行う。
著書に『女性が管理職になったら読む本』(翻訳・構成を担当)、『スチュワードシップとコーポレートガバナンス―2つのコードが変える日本の企業・経済・社会』(共著)、『子どもの放課後を考える』(共著)などがある。
1996年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2002年ピッツバーグ大学公共政策国際関係大学院修了(公共政策マネジメント修士)

(取材、文:Mari Kamei)
2019年9月取材


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