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【アイディア#30】7才と4才、在宅勤務中の親のために作ったおかしやさん

 ご家庭でお子さんと試していただきたい、ちょっとしたフィナンシェ(金融家)なアイディアをご紹介します。今回は「おかしやさんの創業を通して学ぶESG」です

 お仕事を増やしたい!と話をしていた子どもたち。そこで、「オフィスグリコっていうものがあるんだよ。パパとママは在宅でお仕事してるから、お菓子あると食べちゃうかもなぁ…」と話すと、早速やってみたいという反応に。

■ First week:初めて売るものを仕入れに行き、値段を付ける

Step1 お菓子を仕入れる
 そこで、小1の娘は週末に近所のお菓子屋さんに行き、お菓子を仕入れることにしました。Suicaに入れたお年玉を使って払います。「小分けにして売れるものの方が、食べやすくて良いだろう」という夫の夫のアドバイスや、事前に聞いていた私たちの味の好みを基に、買った物はこちらです。

こめつぶあげ 259円 8個入り
キットカット 258円 14個入り
メルティ―キッス 537円 37個入り
抹茶ドーナッツ 298円 7個入り

Step2 原価を計算する
 次にそれぞれ1個当たりいくらになるのかを電卓で計算します(まだ1年生なので割り算はできませんが、1個当たりという考え方は分かるようです)。

1個当たりの買った値段
こめつぶあげ 33円
キットカット 19円
メルティ―キッス 15円
抹茶ドーナッツ 43円

Step3 値段を決める
 最後に1個当たりいくらで売るのかを決めます。あまりにも高いと買ってくれないし、安いとあまり稼げないし…。いくらにしようか?と色々考えながら値段を付けていきます。

 娘が付けた値段はこのような感じでした。
こめつぶあげ 50円(17円利益)
キットカット 30円(11円利益)
メルティ―キッス 20円(5円利益)
抹茶ドーナッツ 60円(17円利益)

 これらの情報を紙に書いていきます。

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Step4 お店作り
 
売るものと値段が決まったら、どんなお店にするかを考えます。私が留守のうちに、紙にお店や商品の名前を書いたり、絵で可愛く見せたり。お菓子を置く台として子ども用の椅子を使ったり…と自分で工夫していたようです。

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Step5 いざ販売!
 初日は週末。在宅勤務中ではありませんでしたが、コーヒーを飲んでいるときに「買って買って! 美味しいよー」と早速売り込み。誘われるがままに夫婦でお菓子を買います。普段はあまりお菓子を食べない我が家。久しぶりにこのようなお菓子を食べて、ちょっとほっこりした気持ちになりました。

 そして、在宅勤務をしている間も、小腹がすいたら小銭入れのトレイにお金を入れ、その分のお菓子を取る、というシステムでちょっとずつ夫婦で食べていきました。ちょうど1週間で、娘の展開したお菓子屋さんはみごと完売。「もう一回やりたい!」と長女。「私もやりたい!」と次女。今度は2人そろってやることになりました。

■Second Week:ちょっとはESGの観点も入れながらさりげなく教えてみる

 順調に進んだおかしやさん第一週目。今度は売上で手にした現金を元手に仕入れにいくことにしました。妹は、Suicaに入ったお年玉を使います。

 4才の娘にとっては、1個当たりいくらとか、いくらで売ったら儲けが出る、損になる…という概念が難しかったようです。「それってどういうこと?」「いみわかんない…」と口にすることが多く、実践するなら小学生からが最適化もしれない、と思いました。

 2人でおかしやさんをやる、という時に課題になったのは、共同経営にするのか、従業員と経営者という関係にするか、別のお店にするか?という点。結局2人の意見を取り入れて、別々のお店にすることになりました。

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(妹が売ったお菓子)

 週の途中で、「これはちょっと高いから売れないな」と思ったら、値下げをしたり…。売っている最中も工夫をしていました。

 そして、ただお金を稼ぐという体験ができれば良いのか?というと、フィナンシェの会はそうではありません。ESG(環境、社会、ガバナンス)の視点も重要だと考えているので、さりげなく子どもにも伝わるように、次のような点を話してみました。

ESGの視点その1: ゴミ問題
 
一番、目に見える問題は「ゴミ」。特に今回は小分けの袋に入ったお菓子を仕入れているので、プラスチックのゴミがたくさん出ます。今までプラスチックに関する絵本や、気候変動、海洋汚染につながることを伝えてきたので、このように話してみました。

 「小分けにしているお菓子、買いやすくて便利だよね。でも、1つの袋で売っているものと比べると、ゴミがたくさん出ちゃうから困っちゃうな…。何かを売れば売るほど、ゴミが出ちゃうのは他の会社でも同じなんだよ。大人たちもどうしたら良いのか困っているから、何かアイディア考えられると良いよね」

 1年生の娘にどこまで伝わったかは分かりませんが、物を売ることとゴミが増えることがリンクしていることに、気が付いた様子でした。

ESGの視点その2:健康面
 ESG投資の中でも最近注目されているのは、「健康」。始めはチョコレートのお菓子が多かったので、全く運動もしていない在宅勤務中にチョコレートを毎日食べるのは…とも思っていました。そこで、「甘いお菓子もとても好きなんだけど、運動もしていないから食べすぎるとお腹がパンパンになっちゃうかもしれない…。もうちょっと健康的なお菓子、無いかな・・・?」と聞いてみました。すると「おせんべいだったらどう?」など、どんなお菓子なら良さそうか、色々質問が来たのです。
 このようにお客さんの健康まで考えたお店作りができるかどうかも、必要な視点かなと思います。

ESGの視点その3:サプライチェーン
 そのお菓子はどこで作られて、材料はどこからどのように作られたのか?は、意識する機会が少ないと思います。実際、子供が買いに行くようなお店にあるお菓子は、オーガニックやフェアトレードなどに関わるものが少なく、大人が説明しようとしても商品そのものがないことが多いのです。
 今回は、直接フェアトレードなどの話はしませんでしたが、さりげなく「このお菓子もあのお菓子もこの県で作られているんだね」「エコレールっていうマークが付いてるよ。お菓子を運ぶときに、地球をお熱にする空気をあまり出さないようにしているんだね」と言った形で、独り言のように伝えていました。
 ゆくゆくは自身の買い物でも、サステナブルなサプライチェーンを意識した選択をしてほしいものです。

ESGの視点その4:ガバナンスの視点でもエシカルなお店かどうか?
 
子どもにエシカルかどうか、と言ってもあまりピンとこないかもしれません。でも、普段の生活でいつも兄弟を叩くような人がやっているお菓子屋さんだったら、買いたい? 買いたくない?
 そんな身近なケースを題材に、エシカルを学ぶ、ということもできるかなと思っています。

■ Third Week:そろそろ飽きてきた様子・・・

 2週目も3週目も、ちょうど金曜日には2人ともお菓子は完売。夫婦ともに満足度は高く、またやってほしいなと思っていました。しかし、次の週もやってくれるの?と聞くと、「もう飽きた・・・」とのこと。結局その後は続きませんでした。ちょっと残念・・・
 率直な感想を聞くと、「儲かるというよりも、売れたということが楽しかった」という言葉を聞けました。

■ おかしやさんを通して学べたかなと思うこと

① 買いたい気持ちを兼ねながら、増やす手段を体感する
 とにかく、子どもたちのお金を使いたい、何かを買いたい欲を、お菓子屋さんという仕事を通じて満たせたという点があります。お店に行くと「これ欲しいな」と思う娘たち。仕入れるときにお金を使い、またそのお金が売ることで増えて戻ってくる、という経験をすることで、買い物欲が落ち着いたような気がしました。

② お金の流れを意識した体験ができる 
 「ママとパパに売ってもらったお金を、妹が売っているお菓子を買うために妹にあげて、また妹が私のお菓子を買うためにそのお金は私のところに来て…」という形で、家族のなかでお金がぐるぐる回っていることを体験することができます。大きくなるにつれ、家庭の外ではどう巡っているのだろうと想像できる力を身に付けていけるよう、いろんな情報を伝えたいです。 

③ お客さんは何が欲しいのか?を考えるきっかけに
 今回、特に長女の方が「何を食べたい?」「どんなものだったら食べやすい?」とマーケティングのように消費者ヒアリングを積極的にしていました。このようにお客さんの意見を聞くことが、ビジネスでも大事なんだよということがちょっとは感じられたのかなと思います。

④ ESGの要素もきちんと押さえたビジネスを考える
 お金を儲けておしまい、ではビジネスは持続的に続きません。自身が起こしている社会的、環境面での影響はどうなっているのか?をこのお菓子屋さんを通して考えるきっかけにしてほしいなと思っています。

* * *

 もしご覧になっている皆さまのお子様が小学生でしたら、今すぐお菓子屋さんが始められるかもしれません。軍資金がなかったら、銀行として貸してあげるとか、株式会社化してみたらと提案してみる、などより金融を学ぶような仕掛けを取り入れられるかと思います。大人も美味しいお菓子が食べられますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

 フィナンシェの会では、「お金がどこからきて、どこへ行くのか」という流れを意識した金融教育を目指しています。他にも、日常生活で子どもとお金のことを学べるさまざまなアイディアをご紹介しています。宜しければ他のアイディアもぜひご覧ください。




















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