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レシピだけじゃない料理の本

イタリア料理の本:米沢 亜衣

私がこの本と出合ったのはとある雑貨屋である。
調理器具が所狭しと並んでいる中、その本はささやかな存在感をはなっていた。

内容はタイトル通りで、イタリア料理についてのレシピが書かれていた。


表紙が使い込まれているようで雰囲気がある。

しかし、これはただのレシピ本ではなかったのだ。

本の表紙に書かれている
「A Spasso  per I' Italia」
「Spasso」はイタリア語で楽しみ、気晴らし、散歩などといった意味があるそうだ。

つまりこの本は、日常のなかでふとした時にイタリアの暮らしを感じることができる物語の本である。

例えばトリッパとジャガイモのトマト煮の食材リストを見てみると、
『かたくなったパン(田舎パンなど)』と書かれてある。
かたいパンではなく、「かたくなったパン」。

他にも、緑のサラダの食材リストには

生で食べておいしい新鮮な緑の葉もの・・・食べたいだけ

p165

と書かれている。 …なんだこの曖昧さは。

この本は内容を一方的に読むのではない。
作るタイミングや食材を入れる量は自分が、あるいは時間が決める。

つまり読む人が物語を完成させるのだ。

そしてもう一つこの物語の本に夢中になった理由がある。
それは調理に手間がかかることだ。

ある日私は本で紹介されているミネストローネを夕食に作ろうと本を開いた。
そしてはじめの調理手順をみると、

白いんげん豆は、洗ってたっぷりの水に浸してひと晩おく

p141

…その日の夕食に何を食べたか今は覚えていないが、ミネストローネではなかったと断言できる。

私の中のミネストローネは、近所のスーパーで買った人参や玉ねぎなどの具材を鍋あるいは電子レンジで加熱して、次にコンソメや炒めたベーコンを入れて、最後にトマトのペーストを入れて完成していた。

1時間くらいあれば余裕で作れる、そんなミネストローネ。

いつかミネストローネを作るためだけの一日を過ごしたい。

そう思いながら、今はこの本の物語を楽しんでいる。


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