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「新しい星」を就活で疲れた今読んだら心に染みた。

新しい星:彩瀬まる

あらすじ

「普通」の人生を謳歌していたはずの四人に訪れる、思いがけない転機。コロナ時代の「普通」に揺れる、ある四人の男女のリアル。
幸せな恋愛、結婚だった。これからも幸せな出産、子育てが続く…はずだった。順風満帆に「普通」の幸福を謳歌していた森崎青子に訪れた思いがけない転機―娘の死から、彼女の人生は暗転した。離婚、職場での理不尽、「普通」からはみ出した者への周囲の無理解。「再生」を期し、もがけばもがくほど、亡くした者への愛は溢れ、「普通」は遠ざかり…。(表題作「新しい星」)美しく、静謐に佇む8つの物語。気鋭が放つ、新たな代表作。

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4人それぞれが、何か重い悩みや葛藤を持っている。
4人の男女の1人1人の人生を感じることができる。

物語には、自分が経験したことがない「離婚」についての話題があったが、物語を読み進めていくと離婚に関する言及に共感したり、言葉が身に沁みることが何度もあった。すっと何の抵抗もなく言葉が頭に入る感じ。

フィクションだからといって、何か大きな事件が起こったり、特別な力が使えるといったことはなく、変えることができない時の流れの中で、自分の人生の歩み方を模索している。

本を読んでいる中で、特に印象的に感じたことは、彩瀬まるさんの言葉選び。
特にはっとさせられた言葉として、他人の「死」に関する場面で述べられていた、

他愛もない質問の答え、その人しか発せられない眩い答えを、もう永遠に得られないのが亡くすということだ。

p192

という言葉がある。

人が亡くなると、ただ物体として自分の目の前から存在しなくなるだけではないのだとふと思った。自分はまだ「人の死」に触れた機会が少ないけれど、人の死はその人の「在り方」を感じることができなくなることなんだと納得した。

この本を読んでいると、就活のことを思い出した。
つい最近まで行っていた就活の中で、これからの人生について考える機会が多くあった。
ーもし、自分の家族や友人が亡くなると、自分はどう思うのか。ー
ー何か後悔したくなくて、今のうちに家族や友人とでやりたいことをやらないといけないのではないのか。ー
などと、焦燥感に囚われていた。
でも、相手が人生悔いなく過ごせるようになってほしいといった思いが強くなったあまり、「自分が何とかしないと」「自分には相手に対して何ができる?」などと、相手を無意識にコントロールしようとしたり、自分のことを考えていなかった。そして、この先の自分の人生をどう過ごしたいのか分からなくなってしまった。
そんな気持ちを持ったまま内定先のインターンシップを行う中で、詳しくは言えないが自分が苦しんだ状況になり、精神的に限界を感じてしまった。
親に内定を取り消したことや病院に行って言われた自分の今の状態を伝えると、両親2人とも「周りもそういった人は沢山いるし、自分もそうだよ。」と言ってくれて、両親のその言葉にとても救われた。

両親のこの言葉から、家族の幸せを自分は願っていたけれど、きっとそれだけでは自分には足りていなくて、自分自身のことを考えた方がきっと良いと思えるようになった。

今は、自分の中で抑え込んでいた本当にやりたいことへの思いが浮かび上がってきて、実行し始めたばかりだ。
今でも精神的に余裕がない時や感情の波が激しい時もあるけれど、自分の「在り方」にはいい加減な気持ちでは接さないようにしようと改めて思った。

人や自分自身の人生について考えて、そしてどこか心が温かくなる1冊でした。

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