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映画コットンテールを観て🐇

昨日から公開になっている「コットンテール」を映画館で観ました。パトリック・ディキンソン監督が脚本も書かれた日英合作の作品です。第18回ローマ国際映画祭で、最優秀初長編作品賞を受賞されました。
この映画が撮影されたのは、2021年。コロナ禍真っ只中です。スタッフもキャストも、イギリスや日本で入国のための隔離生活を経験しながら、撮影されたものです。 

内容は、リリー・フランキーさん演じる主人公が、木村多江さん演じる妻を亡くし、妻の遺言で遺骨をイギリスの湖に散骨しに行くというものです。主人公夫婦役のお二人は、以前見た「ぐるりのこと。」という映画での夫婦もとても味わいがありましたが、今回は、また別の深いものがありました。二人の息子を錦戸亮さんが演じています。父と息子の間にはわだかまりがあり、母の死についての思いも複雑なのです。

私は、この映画を観て、家族の一人一人への言葉に出来ない思いの深さに心を揺さぶられました。夫から見た妻。妻から見た夫。父から見た息子。母から見た息子。息子から見た父。息子から見た母。セリフはとても少なくて、俳優さんの表情が物語を進め、観る者を引き込んでいきました。一人息子役の錦戸亮さんが、その表情や仕草、声の感じから伝えてくる苦しさ寂しさが、圧巻で、身に詰まされるものがありました。

この映画が、イギリスの監督によって作られたものであることにもとても深い意味があると思いました。主人公が出会う、キアラン・ハインズさん、イーファ・ハインズさん演じるイギリス人親子とのやりとりにも、感動しました。国は変わっても変わらない、家族の家族への思いの切なさやそこからくる温かさを改めて感じられました。

そして、一人一人が思いを募らせてこんがらがって孤独になってしまっていても、その糸を解きほぐすものはあるのです。今、悲しくても辛くても、きっときっと救われる時は来るのです。
イギリスの湖畔地方の広々した美しい景色が、スーッと胸のつかえをおろしてくれました。

息子の妻を演じた高梨臨さんが、現実をしっかり受け止めている姿も素敵で共感しました。主人公夫婦の若き日を演じた工藤孝生さん、恒松祐里さんの瑞々しさも強く心に残りました。主人公の孫役の橋本羽仁衣さんの可憐さや健気さも物語を彩っていました。

コロナ禍で何もかも不自由な状況で、この映画は制作されました。人との繋がりが絶たれた時期に人との繋がりの物語が作られたのです。
そして、今、これまでと違う価値観で様々なことが動き始め、新しい問題を抱えることが多いこの時に、こうして公開されることで、気持ちを落ち着かせることができる人は、たくさんいると思います。自分の問題は、自分だけのことではない。それぞれの立場に辛さも悲しさもあり、それは、日本の社会だけではなくて、どこの国にもあることなんだと思えることが、今、とても大切なのかもしれません。

監督はじめ、制作された全ての方々に感謝いたします。

イギリスの文化や、景色の美しさにも、安らぎをたっぷり感じさせてもらえるこの映画を是非、映画館で観てみてください。🐇





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