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同化とか(高校理科生物)


★炭酸同化

生物は生きるために食べなければならない。
肉食の場合は肉を、植食では植物を、植物や細菌の多くは無機物を食べる。

では、無機物を食べて生きるとはどういうことだろうか?

多くの生物は食べ物から体の材料とエネルギーを得ているはずだ

だが有機物でなく無機物を取り込んだ場合、体の材料にはできるだろうがそこからエネルギーを取ることは難しいはずである。

エネルギーはどうやって調達しているのだろうか。

当然、植物(コケ、シダ、緑色植物)や光合成細菌は太陽からエネルギーを得ている。だが直接利用するわけでなく、それらを有機物として蓄え、有機物を消費して生きている。
この時行うのが光合成なのである。

その他、無理やり無機物(化学物質)からエネルギーを取り出し有機物に蓄え、これを消費する化学合成細菌も存在する。
こちらの方法は化学合成と呼ばれる。

いずれにしても炭酸ガス(CO2)を材料に有機物を合成する。
従って、炭酸同化と呼ばれる。

この他、無機窒素化合物(アンモニウムイオン等)と有機物を反応させ有機窒素化合物をつくることを窒素同化と呼ぶ。

★光合成

植物や光合成細菌が行う炭酸同化。植物では葉緑体で行われる。

大きく2つの反応に分けられる。
①光エネルギーを化学エネルギーに変換する過程
②化学エネルギー(還元力)を利用して炭酸ガスを組み込む過程である。

また、植物は移動性や恒常性が乏しいため環境の変化の影響(環境要因)に強く依存する。
そのため、光合成は光の強さ温度炭酸ガスの濃度などの影響を受ける。

●光の強さと光合成・呼吸の関係

光-光合成曲線で図示、表現される。

光合成の活性は光合成速度という量で表される。
これは光合成に伴うCO2吸収速度もしくはO2放出速度と同等である。
だがこれらは直接計測できない。
なぜなら光合成の逆反応である呼吸が常に行われているからである。

従って、計測された値に呼吸速度分を補正して光合成速度を求める。
これは計測された光合成速度(見かけの光合成速度)に呼吸速度分を足し合わせることを意味する。

呼吸速度が知りたいならば、光-光合成曲線の切片の値を読む。光合成していないときのCO2量や酸素量の変化は呼吸に由来するからである。

●光の強さと光合成・呼吸の間の関係

① 光の強さが弱い範囲のとき、その強さに応じて光合成速度が増加する。
② ある一定以上の光の強さ(光飽和点以上)で、光合成速度は変化しない。
光補償点以上の光を与えなければ、植物は成長できない。
④ 陽生植物は強光下で沢山の光合成を行うため、葉を発達させる。
 すると、その分だけ多く呼吸しなければならない。
 逆に陰生植物は弱光下であまり葉を発達させないから呼吸も少しでよい。

●光合成速度を変化させる環境要因

光合成速度を変化させる環境要因を限定要因という。

光-光合成曲線だと光飽和点までの範囲では限定要因は光であり、それ以上の範囲では他の環境要因が限定要因となる

●ブラックマンの実験

ブラックマンは光合成速度と様々な環境要因の関係を調べた。

その結果、or その他の環境要因がある一定以下になった時、限定要因が変わることに気付いた。

彼はこれに関して光合成には光が関与する反応それ以外の環境要因が関わる反応の大きく2つがあるためだと考えた。

イメージ的には、一人で作業するならば、その一人を頑張らせれば作業速度が上がり続ける。だが、2人で流れ作業をするならば片方がいくら頑張っても、もう一方が遅ければ作業は進まないという感じだろう。この予想は正しく、前者は明反応、後者は暗反応と呼ばれる。

ただし、光が無ければあとに来る暗反応も起きないので最近はこういう用語は好まれない。

●光が関わる反応(全体像)

光合成色素同化色素)が光を吸収し、それを化学エネルギーに変換する。
イメージは太陽電池。これを利用してNADPHATPが合成される。

・ 光合成色素

クロロフィル(a、b、c)やカロテノイド(カロテン、 キサントフィル等)である。

各色素が吸収する光の波長を図示したものを吸収スペクトルと呼ぶ。また、葉に様々な光を当て得られる光合成速度のグラフを作用スペクトルと呼ぶ。

・ 光リン酸化

光を利用したATP合成反応を光リン酸化と呼ぶ。
ミトコンドリアでの電子伝達系によく似た仕組みである。

光エネルギーで光化学反応が起こり、その結果クロロフィルの電子が励起されて酸化が生じる。すると引き続いて水分子の酸化、チラコイド膜の電子伝達系の働きに伴う水素イオンの輸送が連続して起きる。

その結果、チラコイド内部の水素イオン濃度が上昇し濃度勾配が生じる
これがATP合成酵素を駆動させ、ATPが作られる。
つまり、光→水素イオンの濃度勾配(電気化学的エネルギー)→ATP(化学エネルギー)とエネルギーが変換されていく。

・ 光化学反応

光化学系Ⅱ光化学系Ⅰから成り、この2つが連動する反応。

発見された順にⅠとⅡが付されているが、実際に機能する順番はⅡ⇒Ⅰで、NADPHATPの合成に関わる。
光化学系Ⅱのほうが不安定な物質で分離が難しく発見が遅れたらしい

・光化学系Ⅱ 

680nmまでの光を吸収し、クロロフィルが酸化される

高いエネルギーを持った電子は酸化(電子の放出)と還元(電子の受容)によりチラコイド膜上のタンパク質間を移動し、これに伴うエネルギーで水素イオンが輸送される。さらに、クロロフィルの酸化に伴って水分子の酸化が生じ、酸素が発生する

・光化学系Ⅰ

700nmまでの光を吸収し、クロロフィルが酸化される。

これに伴ってNADP+の還元が起こりNADPHが生じる。酸化されたクロロフィルから失われた電子は、光化学系Ⅱから供給される電子で補給され、クロロフィルは元の還元された状態に戻る。

●温度やCO2濃度が関わる光合成の反応

ATPやNADPHを利用してCO2を有機物の一部にする
これをCO2の固定と呼ぶ。

・ ベンソンの実験

CO2 の吸収は暗所では起こらない。だが、事前にしばらく光を当てておくとCO2の吸収が暗所でも起こる
光が関与する反応が CO2 の固定に先行する。もしくは必要条件である

・ カルビン・ベンソン回路

ストロマで起こるCO2の固定に関わる化学反応。
標識したCO2を利用した二次元ペーパークロマトグラフィーで解明。

この反応は大きく3つの反応に分けて考えることが出来る。

CO2の固定(カルボキシル化)
② 還元
③ 再生

CO2の固定(カルボキシル化)
気孔から取り込まれたCO2は、RubisCOの働きでリブロース二リン酸と反応し、ホスホグリセリン酸(PGA)が生じる。

還元
ATPのエネルギーを利用してホスホグリセリン酸(PGA)が反応しやすい形に変えられる。
次いでNADPHを利用した還元反応でグリセルアルデヒドリン酸(GAP)に還元される。還元によりエネルギーを獲得する反応と言える

再生
グリセルアルデヒドリン酸の一部は解糖系や糖新生の基質となり、残りはリブロース二リン酸の基質(材料)となる

化学反応はエネルギー(正しくはギブズエネルギー)の高い方から低い方向にしか起こらない。従って、ATP等を必要としない①の反応が起こるためには高いエネルギーを持つリブロースニリン酸の再合成が必要になる。

・ よく出てくる物質名

RuBP リブロース二(ビス)リン酸 
Ru5P  リブロースリン酸
PGA  ホスホグリセリン酸 
DPGA  ビスホスホグリセリン酸
GAP  グリセルアルデヒドリン酸

・ C3植物

カルビン・ベンソン回路の場合、CO2の最初の固定産物は炭素数3のPGAである。このタイプのCO2固定のみを行う植物をC3植物という。
イネやダイズ等である。

●光化学系に関する研究史

・光化学反応の発見

CO2が無い条件でも酸化剤であるシュウ酸鉄(Ⅲ)があれば葉緑体から酸素が発生することをヒルが発見 (ヒル反応の発見)。
⇒光合成において、光を使った酸化還元反応が生じる事が示唆された。

・酸素の由来

酸素の同位体を利用し、光合成で発生する酸素がH2OやCO2のいずれに由来するかが、ルーベンにより調べられた。

水分子に酸素の同位体を利用した時のみ、発生した酸素に同位体が高い割合で観察された。
光合成で生じる酸素水の酸素原子に由来する

・エマーソン効果

種々の異なる波長で光合成量を測定すると、クロロフィルによる光の吸収は起きているにもかかわらず、緑藻では680 nm より長波長の光で光合成量が急激に低下する。

この現象は“レッドドロップ"と呼ばれており、より波長の短い光を同時に照射すると見られなくなる。つまり、波長が異なる2つの単色光(片方は680nm以上、もう一方は650nm以下の光)を同時に照射すると、光合成速度が回復する。こちらは発見者にちなんで、エマーソン効果と呼ばれている。

エマーソン効果の意味を考える。仮説として光合成電子伝達系には連続的に働く2つの光化学系があり、短波長の光は両方の光化学系を活性化できるが長波長では片方の光化学系しかうまく活性化できないと考える。

このように考えれば、680 nm より長波長を当てた時にクロロフィルが光を吸収していても、片方しか活性化していないので光合成が全体としてうまくいかないという状況を上手く説明できる。

すなわち、エマーソン効果は光化学系Ⅰおよび光化学系Ⅱと呼ばれる2つの光化学系が存在し、連動しているという概念の確立に役立ったといえる。

●強い光と乾燥に適した光合成の仕組み

・ C4植物

CO2の最初の固定産物が炭素数4のオキサロ酢酸である植物。
このタイプのCO2固定を行う植物をC4植物という。
トウモロコシやサトウキビ等である。
効率的な炭酸固定のため葉の断面構造がC3植物と大きく異なる。
強い日差しの環境でCO2が足りなくなることへの適応と言える。
(強い日差しの環境では光よりCO2が不足しがちなのである)

① C4植物は葉肉細胞で炭酸固定を行い、オキサロ酢酸を生じる。
② オキサロ酢酸がリンゴ酸もしくはアスパラギン酸に変えられる。
③ リンゴ酸等は維管束鞘細胞に輸送されていく。
 そして、脱炭酸反応でCO2を放出する細胞内のCO2の濃度が高まる
高い CO2 濃度条件で、カルビン・ベンソン回路を回す。
 RubisCO は CO2 濃度が低い、相対的に O2 濃度が高いと効率が悪化。
 これを改善するための適応と考えられる。

すなわち、C4植物は強い光の環境でCO2濃度がすぐに限定要因となるのを防ぐ仕組みを備えている

・ CAM植物

ベンケイソウ型有機酸代謝を行う植物。強光と乾燥への適応と言える

夜間の湿度が高い時に気孔からCO2 を取り込み、炭酸固定(オキサロ酢酸の合成)。そして、リンゴ酸等に変えて、液胞に蓄える日中、光の強い環境ではこれを利用して、カルビン・ベンソン回路を行う。

●光合成産物の行方

浸透圧が上昇しないようにデンプンにする。運ぶ際はスクロースで運ぶ。

グリセルアルデヒドリン酸
(カルビン・ベンソン回路に由来)

フルクトース二リン酸

同化デンプン葉緑体内部に存在、不溶

・転流の仕組み

圧流説により説明可能である。
一般に、活発に光合成を行う葉などの部位をソースと呼ぶ。
そして糖などを消費する根や茎頂といった場をシンクと呼ぶ。

ソースでは高い浸透圧が発生しシンクではそれが小さくなる。
ではこれらのソースとシンクがつながっている場合、何が起こるだろうか

ソースでの高い膨圧の結果ソースからシンクに流れが発生するはずである
つまり、細胞内や師管ではソースからシンクへの流れが生じる。一方で細胞外においては逆に水やそこにある物質がソースに向かって流れ込む。
これらを圧流と呼ぶ。

●細菌の光合成と化学合成

・ 細菌の光合成

光合成色素としてバクテリオクロロフィルを利用する。
代表的なのは緑色硫黄細菌紅食硫黄細菌であり、光合成細菌と呼ばれる。

光合成細菌は酸素を作らず、また緑色硫黄細菌や紅色硫黄細菌は光合成に水ではなく硫化水素(H2S)を利用し、硫黄(S)が蓄積する。葉緑体の祖先と考えられるシアノバクテリアはクロロフィルを利用し、酸素を生産するため光合成細菌には含めないこともある。

・ 細菌の化学合成

無機物を酸化し、その際のエネルギーで炭酸同化を行う。
これを化学合成と言い、これを行う細菌を化学合成細菌と呼ぶ。
代表的な化学合成は硝化である。
色素を持たないので、名前に色がつかないので試験問題では区別できる。

★窒素同化

生体に必要な有機窒素化合物を合成する働きを窒素同化と呼ぶ。
植物では、主に無機窒素化合物を吸収して有機窒素化合物の合成を行う。
動物では、摂取した有機窒素化合物を直接、もしくは作り変えて利用する。

・ 有機窒素化合物

窒素を含む有機物。
核酸、タンパク質、ATP、補酵素、クロロフィルなど生体に必須な成分であるものが多い。

・ 無機窒素化合物

窒素を含む無機物。アンモニアや亜硝酸、硝酸。

●植物の窒素同化

① 土壌に含まれる無機窒素化合物(主に硝酸イオン)を吸収。
NADPHを使って硝酸イオンをアンモニウムイオンに還元
ATPを利用してアンモニウムイオンとグルタミン酸を反応させる
④ 生じたグルタミンケトグルタル酸と反応させる。
⑤ 2分子のグルタミン酸ができる。
⑥ グルタミン酸を利用して、様々な有機窒素化合物を合成
アミノ基転移酵素の作用でアミノ基を移動させてやる)

●窒素固定

窒素分子をアンモニウムイオンに変える働きを窒素固定という。
これを行う細菌を窒素固定細菌と呼ぶ。
根粒菌ネンジュモアゾトバクタークロストリジウム放線菌が代表的である。
このほか、空中放電や肥料工場でも生産される。

●脱窒

硝酸イオンや亜硝酸イオンを窒素分子に変える働きを脱窒と呼ぶ。
これを行う細菌は脱窒菌と呼ばれる。
呼吸で必要となる酸素の代わりに硝酸イオン等を代用する。
つまり、酸素が乏しい環境、還元的な環境に生息する。

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