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イカ子


はじめに


1 本稿では、ジョン・ダナハーの「Solo BJJ Training Drills  」を用いて、「High Leg Spin」と「逆エビ」について解説する。

 唐突だが、皆さんは「サザエさん」の友人に「イカ子」というキャラクターが存在するのをご存じだろうか?
 私の幼少期から今日に至るまで、日曜の夕飯時には「サザエさん」が放映され続けているが、私が「サザエさん」を見た限りでは・・・あの時間帯のTVには昔も今も退屈が流れている・・・「イカ子」が出てきた記憶がない。
 それもそのはずで、彼女は原作(漫画版)の冒頭にしか登場しないらしく、子供の頃の私は「イカ子」という名前を聞いたことがあっても、容姿その他は全くの謎に包まれていた。
 後に復刻された原作を立ち読みして、20年来の謎が解けたわけだが、本稿で取り扱う逆エビも「イカ子」ほどではないにしても、知名度の割に、正しく理解されていないmovementのひとつに数えられるだろう。

 ウチの道場でも練習が始まると、全員でエビに続いて逆エビ(Reverse Shrimp) をしている。
 ある時、私と仲の良い会員さんが逆エビをしようとマットの上をのたうち回っているのを見て、「逆エビをいつ、何のために、どのように使うのかご存じですか?」と尋ねてみると、「考えたこともありません」という答えが返ってきた。
 この会員さんと同じく、私も白帯の間は逆エビを「いつ、何のために、どのように使うのか?」全く知らなかった。
 道場で毎日のように「ムービング」としてやらされていたから、「何となく」これを繰り返していたに過ぎない。
 だが、練習は「何となく」やっても時間の無駄である。
 逆エビも他の「ムービング」と同様に「何のためにこれをやるのか?」という点を明確に理解して取り組まなければ、いつまで経ってもウォームアップ以上の効果は得られないだろう。
 
 話がエビであれば、ボトムがトップとの距離を詰めたり(反対に、離したり)するのに使っている光景を道場で見る機会もあるから、これをドリルする意義についても何となく分かっている人もいるだろう。
 これに対して、逆エビの場合、(過去の私も含めて)ウチの道場の会員さんの大多数がこれをドリルする意義について「考えたこともない」状況にある点に鑑みると、BJJを練習している他の多くの人々も似たような状況にあるのではないかと危惧している。
 そう、逆エビは「イカ子」より知名度はあるだろうが、それを使ったテクニック(move)となると、「イカ子」と変わらないくらい謎に包まれているかもしれないのである。

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