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財務官僚からPdMへ。プロダクトづくりに携わって、はじめて見えた世界

官公庁や公的機関の出身者が、政策提言領域だけでなく事業の現場でも活躍しているマネーフォワード。今回は、官僚の世界からベンチャー企業に転職して、はじめて「プロダクトづくり」を経験したというパブリック・アフェーズ室の澤田に、入社の経緯や現在の仕事内容、キャリア観の変化について話を聞いてみました。

瀧 俊雄 パブリック・アフェアーズ室 室長
2004年野村證券株式会社入社。株式会社野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学MBA、野村ホールディングス株式会社の企画部門を経て、2012年より株式会社マネーフォワードの設立に参画。内閣官房 デジタル行財政改革会議有識者構成員、一般社団法人電子決済等代行事業者協会 代表理事等。5歳の娘と最近買ったカメラで遊んでます。

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澤田多実子 パブリック・アフェアーズ室 Public Affairs Officer
2010年財務省入省。海外税制のリサーチや社会保障と税の一体改革に携わる。2013年より金融庁へ出向し、金融商品取引法改正や諸外国との金融協力業務に従事。2017年シカゴ大学公共政策学修士課程修了。財務省帰任後は財務省の組織風土改革プロジェクトを担当。2022年5月よりマネーフォワードにジョイン。現在は政策提言業務に加え、PeppolコネクトのPdMも担当。6歳と3歳の乗り鉄息子と一緒に、日本全国の電車に乗る旅を楽しんでいます。

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成功は自分次第。キャリアと育児の両立を目指し、転職へ

瀧:澤田さんは、もうすぐマネーフォワードに入社して2年になりますね。澤田さんの採用を始めた頃は、2021年まで当社執行役員として政策対応の多くを担っていた神田潤一さんが、新しい門出をされた時期でした。澤田さんも入社当初は、政策対応の専任者としてご活躍いただく予定だったのですが、入社後にここまで業務内容が変わったパターンも珍しいのではないでしょうか。改めてなのですが、これまでの経歴について、教えてください。

澤田:マネーフォワードに転職するまでは10年以上、新卒で入省した財務省で働いていました。財務省に入ってまず配属されたのが、主税局調査課というところで、ここで2年くらい海外税制の調査をしました。マネーフォワードでも例えば韓国のインボイス制度など海外の税制を調べることがありますが、このときのスキルが役立っているなと思います。その後、国税局で税務調査をしたり、金融庁で金融商品取引法の改正に携わったり、アメリカに留学したりとさまざまな経験を積ませてもらったのですが、子どもが生まれたタイミングで働き方の見直しを迫られることになりました。

瀧:最近は男性側の育休取得もかなり進んできていますが、子育てに際してはいろいろと皆さん悩まれますよね。とはいえ、官僚としてのキャリアを築いている人が、いち民間企業に移るのも大きな意思決定なわけですよね。

澤田:財務省の仕事は面白く、やりがいもありましたが、テレワークが一般的ではなかったり、深夜まで国会対応が必要だったりして育児との両立を難しく感じる場面もありました。もちろん比較的育児と両立しやすい部署もありますが、「時間に制約があることが理由で限られた配属先にしか行けない状況を自分は望んでいるのだろうか。大切な子供を預けてまで働くからには心からやりがいを感じられる仕事がしたい」と考えたときに、転職という選択肢が浮かびました。そうしたところ、偶然にも瀧さんからお声がけいただいたんです。

瀧:当社は税務に関わるソフトウェアを提供していますし、Fintechの会社でもあるので、金融庁の政策も密接に見る必要があります。初めて澤田さんと面談したときに、勝手ながら「この人はマネーフォワードのために生まれてきたんじゃないか!」と思った記憶があるのですよね。

澤田:そう言っていただけて光栄です。当時は自分の中で、これまでのような政策まわりの仕事しかできないと決めつけていたんですよね。いろいろと悩んでいたところに、さきに霞が関を離れた親友から「選択した道を正解にするのは自分の努力次第だよ」と言われ、ハッとなりました。それで、他にもあった転職先候補を断り、事業会社ならではのキャリアの可能性があるマネーフォワードに決めたんです。

瀧:澤田さんからキャリアの希望を聞いていたので、入社後数ヶ月は、社内でどんな業務にフィットしそうかを見極めてみようと思いました。私から見たら、何でもできそうと思っていましたが(笑)。

開発側に回って、はじめて見えた世界

澤田:入社当初は、パブリック・アフェアーズ室でいわゆる政策渉外の仕事をしていました。デジタルインボイス推進協議会(EIPA)やFintech協会などの業界団体に参加して、広報イベントや政策提言活動を行ったり、財務省や金融庁の方と業界が抱える課題について意見交換し、新しい政策に繋げてもらったり、というのが主な内容です。

私が入社したときはちょうど、グローバルな標準規格「Peppol」を使ってオンラインネットワーク上で請求書(インボイス)を送受信するプロダクト『マネーフォワード クラウドPeppolコネクト』(以下『Peppolコネクト』)を開発しようとしているタイミングでした。これにより煩雑な請求業務の負担が軽減できる大きなプロジェクトなのですが、そのサービスを提供するにはデジタル庁の認定が必要となるため、私がその認定に至るまでの書類準備や調整を担当しました。そして無事に、2023年1月にサービスプロバイダーの認定を受けることができました。

瀧:その当時の働きぶりを見たCTOの中出さんから「調整役だけではなく、Peppolのプロダクト開発(PdM)もやりませんか」と澤田さんにお声がけいただいたんですよね。私はかねてから「プロダクトづくりは仕事への向き合い方が変わる。チャンスがあれば絶対に関わった方がいい」と言っていたんですが、澤田さんは自身でその機会を創出したんです。実際PdMとして活動してみて、いかがですか。

澤田:前述の通り、民間企業に転職したからには民間ならではの仕事もやってみたいと入社前から思っていたので、お声がけいただいてとても嬉しかったです。新しいサービスを生み出すというのは、すごく前向きで楽しい仕事だなというのを、毎日実感しています。パブリック・アフェアーズももちろん前向きな業務ではあるのですが、守りに入る場面もあります。その点『Peppolコネクト』はまだ日本で全く存在していないサービスで、挑戦の要素しかないという感じで、新しいものが好きな私としては、とてもワクワクします。PdMという仕事について何もわからないまま「やります!」と言ってしまったんですが、引き受けて本当に良かったなと思います。

瀧:そう言ってもらえて、送り出した身としても安堵しました(笑)。とはいえ、PdMの仕事ははじめてということもあり、キャッチアップが大変だったのではないでしょうか。

澤田:私はPdMとしての経験が皆無だったので、先輩PdMに付いてもらってOJTで覚えていきました。『Peppolコネクト』は関連プロダクトが多いので、プロダクト間の調整も必要ですし、OpenPeppol(Peppolネットワークを管理している非営利団体)やデジタル庁とのやり取りもありました。マネーフォワードのこれまでのプロダクト開発と違うところも多く、リリース直前は毎日のように調整事項が発生していました。ただその解決プロセスは、問題点を整理して、関係者の意見を整理して、合意を取って、その合意内容を周知して…と公務員時代にやっていたことと同じだったので、PdM業務に前職の経験が初めて活かせた気がします。

一番苦労したのは、これまでのキャリアでは開発に携わることがなかったので、はじめはエンジニア間で行われる会話に全くついていけませんでした。例えば会議でPRという単語が出てきて固まっていると、プルリクの略です、と教えてもらうのですが、今度はそのプルリクがわからないという…。今はだいぶわかるようになりましたが、はじめは一事が万事この調子で、このレベルの私によくPdMを任せてみようと思ったなと度量の深さに感謝します(笑)。

逆に、開発側に回ったからこそわかることも、たくさんありました。デジタルインボイスをはじめクラウド会計ソフトは政治家や中央省庁からも関心を持って見ていただいているので、こうした立場の方々と定期的に意見交換の機会があり、プロダクトに対する提案も受けます。もちろん取り入れられるものもありますが、技術的に難しかったり、マネーフォワード個社だけでは解決できない課題だったり、費用対効果が見合わないものだったりして、対応できるものばかりではありません。実現が難しい提案を受けた場合には、なぜできないのか、行政側でこういう条件を整えることができれば別の着地点があるかもしれない、といった点を丁寧に伝えて、デジタル化社会の実現に向けて協働できる方法を探ることができるようにしていきたいです。

『Peppolコネクト』はインボイス制度の開始に合わせて2023年10月にリリースしましたが、今後はさらに使いやすいプロダクトに改善していくとともに、デジタルインボイスそのものの広報にも力を入れていきたいと思っています。デジタルインボイスは会計業務を大きく効率化するものですが、インボイスを送る側と受け取る側の双方が対応していないと送受信できないという難点があります。発行側・受領側ともに企業に導入していただくことで社会全体の会計業務の効率化が図れるので、業界団体であるEIPAと一緒にデジタルインボイスが実現した後の世界観を伝える取り組みを行っています。

民間企業だからこそ感じるやりがい

瀧:まだまだPdMとしてやることが盛りだくさんですね。ところでプロダクトづくりに携わってみて、キャリア観に変化はありましたか。

澤田:転職活動を始めたときは、どういった業界で働きたいという強い想いもなく、10年間官僚の仕事しかやったことがなくて、しかも小さい子が二人もいて勤務時間に制約があって、こんな私でも受け入れてくれる職場があれば…くらいの緩い気持ちでした。マネーフォワードに転職し、1年経たないうちに思ってもみない仕事に携わることになり、自分自身も驚いています。でも今プロダクト開発に携わる中で、前職の知識がとても役に立っています。他に覚えることがたくさんある中で、仕入税額控除や簡易課税の仕組み、請求書の種類といった、税制に関する基礎知識をイチから勉強する必要がないですし、また行政側の視点もわかるということが私の強みにもなっています。

公務員時代は「役人の仕事はつぶしが利かない」と言われていて、私も実際そう思っていましたが、今はどんな仕事であれ、目の前の仕事に誠実に取り組んでいれば、新しいフィールドに縁が繋がると思うようになりました。まさにスティーブ・ジョブスの「Connecting The Dots」ですね。私は日本の未来の役に立ちたいと思って公務員の道を選びましたが、民間企業に転職した今でもその想いは変わっていません。むしろ民間企業にいるからこそ、GDPにも貢献でき、事業を通じて日本をより良くすることができると学びました。

瀧:澤田さんは流れに身を任せているようでいて、実は強い「執着心」を持っているんですよね。それが「Connecting The Dots」の真髄なのではないでしょうか。今日はありがとうございました!

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