ジビエコース開催


まず前半は料理人などプロ向けでは全くないのでご了承を。


2月、当店にてジビエのコースたるものを始める。その上でこのジビエについて意外と知られているようで知られていないこともあり、提供するにあたって知っておいていただきたいことがある。


ジビエとは何か。


狩猟によって食材として捕獲された狩猟対象の野生の鳥獣、またはその肉をいう。野生鳥獣肉と畜産との対比として使われる狩猟肉のことだ。ジビエはフランス語で、イタリア語ではセルヴァッジーナ。

それでは最初に主なジビエについてと勘違いされやすい家禽類についてを。

<鳩類>
山鳩(森鳩)・ジビエ。
鳩・家禽。レストランで通常メインディッシュなどで提供されるのはこの育てられた家禽の鳩。ちなみにエトフェというあえて血抜き処理をしない家禽の鳩はテイストはジビエに近い。

<鴨類>
一般的には家禽で、合鴨や家鴨と呼ばれアヒルと掛け合わせたもの。フランスではバルバリー鴨が有名。スーパーや肉屋さんでみられるのは全て家禽。
天然鴨がジビエ。
マガモ、オナガガモ、ヒドリガモ、コガモなどなど多くの種類がある。フランスではマガモをコルベールと呼び高価なものとされている。肉質が家禽と比べるときめ細やかで繊細でありつつ旨みが強い。

<鶉類>
鶉は日本では家禽を指す。卵が一般的だが肉も食される。野生に比べて優しくマイルド。
山ウズラ。ジビエ。海外では半野生ものも多い。

<兎類>
野兎。ジビエで肉質は真っ赤で野生味も強い。
家兎。家禽。ヨーロッパでは鶏肉のように一般的食材で肉質も鶏肉に近い。日本でも生産者が存在する。

その他、「当たり前」と思われるだろうが一応ここに記す。
猪は野生だが育てた猪豚というのもある。また豚は猪を家畜に改良したものである。

雉も野生、半野生、家禽とある。

鹿はほぼ全て野生。

他、メジャー級ジビエ
・熊
・シギ
・雷鳥
など

因みに、羊、山羊、鳩、兎など一般的で無い食材をジビエと間違えてしまうケースもあるが、育てられたものはジビエではない。特に羊や山羊は海外では古くから家畜。近しいジビエとしてはカモシカなどだろうか。

日本では他に多くはないが、キョン(房総半島に増えた東アジアの鹿)、アライグマ、たぬき、カラス、雀、などが出回る。

それから輸入野禽類には、捕獲後に餌付けをして育てたり、育てた後に自然環境に近い状態に放ちその後狩猟するドゥミ・ソヴァージュたるものも存在する。

また日本では無双網漁などにみられる餌付けをして、集まったところ狩猟する猟もある。


ジビエとはこうした背景があるものの、基本的には自然の恵であり、人間はこれらの命をいただいて食物とし自分の生の糧とするわけだ。

自然環境の問題はここでは触れないが、僕が思う大切なことは、
無駄にしない。必要以上に乱獲しない。ありがたく頂く。
ということであり、ジビエの美味しさ、素晴らしさをコース料理としてお伝えできれば、と思っている。

前半はその上で知っておいていただきたいことを乱列させていただいた。



ジビエコースについて。


今回のジビエコースは通常のコースの皿数全てをジビエ料理で提供するというコースだ。何故そんなことをするのか。それはジビエは基本的には11月から2月までのものであり、レストラン料理の醍醐味の一つであるからだ。
しかしながらレストランは12月までは繁忙期であり、ジビエというのは大変手間のかかる食材でジビエフルコースを作れるのは実質この時期だけのにものとなる。

またここで一つ知っておいて頂きたいことだが、ジビエは臭くない。

いや、確かに臭いものもある。今回ここでの「臭い」は本来のジビエの香りに反するもを云わせていただく。

臭い要因
①、熟成させすぎている。
②、狩猟捕獲時から精肉に捌かられる間の、血抜き、冷やし、温度、時間などの環境問題からくる匂い。
③、野禽類が銃で撃たれた時の打身、鬱血の損傷による匂い。
④、その個体が食べて来た餌の質、これは熊が一番差があるようだが、鹿などは基本的に山のものを食していれば臭いことはない。

他にもあるがお伝えしたいことは、これらの要因が無い限りジビエは山の自然の恵の良い香りであり、逆に「家畜の方が餌の匂いで臭い」ということだ。
その証拠に、スープをとると明らかに家畜の方が臭く、一緒に炊く香味野菜の量が多くなる、ジビエでスープをとるときは香味野菜が本当に少なくて良いスープがとれる。


そんな繊細な肉でコースを作るわけだが、野山を駆け巡るジビエの肉はやはり食べ応えがある。これは肉質の要素が多くその分満足度が高いせいだろう。
なので一皿のボリュームが多過ぎないように配慮した。



構成としては淡白な雉肉でスープやハムを作り、同じく淡白な白身質の山ウズラは乳製品でコクをプラス。

血の味の濃い山鳩はじっくり長時間コンフィにしてサラダに。

鹿は美味しいスープがとれるので山菜と合わせる。

水鳥の鴨は牡蠣と。

猪はその食べ応えそのままに炭火で焼き上げる。

そんな料理を並べてみた。

ぜひこの機会に野山の恵を感じていただければと思って仕込みに励んでいる。


ジビエコース
2月26日まで
¥22,000(税込)
前日までのご予約にて。

お時間はその日の状況でご相談させて頂きます。










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