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娘とわたし   6

近くにいてもなかなか逢えない。いま、わたしとあなたはそんな状態が続いています。せっかく復学した大学も、とうとうすっぱりと辞め、東京で一人暮らすこともなくなり、故郷の、わたしの両親のもとで、小さな子どもの時のように暮らす日々が続く今‥。でも何かあればすぐに駆けつけられる。きっとわたしは駆けつける。今、幸いなことはそれだけ。だから、「あの日」を境に大きく生活が変わったわたしだけれど、できるだけ、あなたにとっても、わたしにとっても故郷であるこの地を離れていたくない。

親として、「生きていてくれるだけでいい」と思うのは当然。地震、災害、事故、病気‥人間の力ではどうしようもないことで、それでも最悪の結果だけは免れた場合であれば、心の底からそう思えるだろう。けれど、年齢を重ねるにつれて、段々と心の病が重症化していったあなたに「ただ生きていてくれるだけでいい」と思うことは難しい。自分自身をそう納得させるのは難しい。今のあなたの姿が、本来のあなたのあるべき姿だとはどうしても思えないから。。

あの日。。あなたが東京でたった一人、完全に自己を見失い、自分の置かれている状況も、今いる場所も、何をしようとしているかさえも分からなくなって、完全にほうけたようにただ東京中を電車にも乗らずに歩き回って。。ほとんど奇跡的にやっとのことで見つけ出したわたしと、一回は抱き合って再会を喜ぶことができたけれど、それも束の間、あなたは目を異様に輝かせ、矢継ぎ早に訳の分からない言葉を発し、どう見ても普通ではない状態だった。わたしはそんなあなたをなんとか落ち着かせ、少しでもぐっすり眠らせて心と身体をゆっくり休ませようと、あなたのことをいちばん分かってくれていた元の主治医と連絡を取りつつ、そのとき、あなたがどうしても飲むのが嫌だと言い張っていた薬を飲ませた。ヨーグルトに混ぜるという、そうするしかなかった手法を使って。

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