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#13 1と無限

Contact High Zine Issue 4: Into the Parallel
澤田雄斗

2024年のある日。
体に上下の揺れを感じると、同じ方向に向かっていたはずの車が逆を向いて隣を通過していった。
違和感を感じつつも先へ進むと、そこにはひび割れたコンクリートが辺りを埋め尽くしている。いつもと変わらない車内からはまるで別世界のような景色が見えた。

スタイリスト島田辰哉が中心となり、不定期で発行されるインディペンデントマガジン「Contact High Zine 」。
パーソナルな部分を起点として、独自の観点からファッションやアートをミックスして作成されている。

TATSUYA SHIMADA (島田·辰哉)
スタイリスト SHUN WATANABE氏に師事し、2012年に独立。 以降、ファッションを中心に数多くのブランドや雑誌でスタイリングを手掛けるかたわら、 2015年から自らのインディペンデントマガジン『CONTACT HIGH ZINE』を出版。

@tatsuyashimada1984

そんな第4号となる本作のテーマは「パラレルワールド」。
大きく6編に分かれる本作は、10名以上にもおよぶ数々のアーティストたちとのコラボによって制作されている。
表紙には燃える本。
ターコイズの段ボール紙を開くと現れる、解読不能な文字の数々。
繰り返される一枚のページは別の世界へと私たちを誘っているようだ。


様々なアーティストとコラボしている本作品だが、今回はオノツトム·光崎邦生·YUKAHIRAC と制作した「「REAL WORLD INTERFACE」と題したファッションストーリーに注目した。
 


人間とコード·ロボット(人間のようなヘアスタイル)とステッカー。
混ざりえない要素が身体をまとっている様子が見られる。
混沌としているその全体像は、一枚の写真に収めるには一貫性がなく、所謂カオス状態である。

普段の私たちの世界では身に着けることない、素材やメイク、不自然な位置のベルトやジッパー、ましてや充電器が絡みつく様子は、あらゆる方面から違和感を生み出す。
後に、それは偏見だったと気付く違和感にそっくりなこの感覚。

ルールやマナーを強く求められる日本人がこの写真を見たときにどう感じるのだろうか?
ネット社会が進み、自分の興味の範疇で物事を見てしまう現代人はどう感じるのだろうか?
まるでその違和感から拒絶するかのように、ショート動画をスクロールするように、この本は読み進められるのだろうか。

2,3,4週目···
すると不思議と最初の違和感が消え、なぜかバラバラに見えた要素たちが1ページにまとまっているように見えてくる。
何週目でそうなったのだろうか。
すでに別の世界へといざなわれ、私たちの世界に自然と飛び込んでくるのである。
恐らく最初に感じた違和感こそがパラレルワールドと現世界との分岐点であり、それぞれの世界から同時に一枚の写真を見たときに、それは一体化するだろう。

パラレルワールド:とある現象が違う結果につながるもう一つの世界
        ※一つの宇宙では一つの結果しか起こらない

https://ja.wikipedia.org/wiki/パラレルワールド

多数の分岐点を行き来することで成り立つ、カオスの融合。
そこには一つの現象を基にした無限の宇宙が広がっていた。
視野を広く、さらに次元を超えて、、、
何か物事を見たときに今まで感じたことのない感覚や考え方が流れてくるだろう。

燃えた本が真っ黒な炭と化したとき、手元には別世界への入り口の鍵が残った。

―作品詳細―
【参加アーティスト】
山谷佑介/YOSHIROTTEN/我孫子裕一/オノツトム/光崎邦生/YUKAHIRAC/片山真理/PSYCHOGEM/MIDI/RYUIKA/草野庸子etc.

判型280 × 222 mm
頁数375頁
製本ハードカバー
発行年2023
エディション300

―参考―
DAIKANYAMA T-SITE
https://store.tsite.jp/daikanyama/event/art/36577-1716561016.html
本書〈STATEMENT〉
Words:TATUYA SIMADA
Edit:KIWAMU SEKIGUTI

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執筆者
澤田雄斗
1999年生まれ 石川県出身
鉛筆以外は左利き
興味があるもので文章を書いてみたい
ファッション-アート-映画-音楽
特にファッションに興味があります
IG: @sd_house21
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サポートされたい。本当に。切実に。世の中には二種類の人間しかいません。サポートする人間とサポートされる人間とサポートしない人間とサポートされない人間。