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中国のデジタルファッションの現在(22年11月上海出張レポート)

株式会社FMBの親会社である株式会社TFLが運営するファッションテックスクールTFL(Tokyo Fashion-technology Lab)の上海校開設のため、2022年11月後半の2週間で上海を訪問しました。
ファッションDXの視点から訪問した企業の状況の一部をご報告させていただきます。

■Ribo Fashion Group Co., Ltd.
上海市街から車で約1時間の松江区に拠点を構える1997年設立の「Ribo Fashion Group」。サンプル縫製から量産、物流までサプライチェーンのほとんどを社内に備えています。

社員数は1,500人ほどで、企画部門、販売部門の他に刺繍や編機、生地プリンター、サンプル縫製室、量産縫製室、裁断機などを社内に持ち、企画から生産、物流、販売までの全てを社内に持つ革新的な企業です。

ゼロコロナ政策で非常に厳しい経営環境の中ではありますが(出張当時、22年11月)、政府支援の元、バーチャルヒューマン・プロジェクトを3年間行っているとお聞きしました。
4年ほど前にSTYLE3Dを使用した3Dモデリングを開始。専門スタッフの育成後、企画デザイン検討に活用しているそうです。生地スキャナや物性試験機は未導入で販売促進やPRに3DCGを活用するには至っていないという現状でした。

■ONTIMESHOW(OTS)
TFL上海を共同で設立するパートナー企業であり、国営企業Bailianのグループ会社「ONTIMESHOW」
アジア最大級のファッション合同展示会「ONTIMESHOW」を運営しています。

世界No1の糸、生地製品の輸出国である中国は世界最大のファッション供給国であり、国内市場も40兆円を超えてなお成長を続けるファッション市場でもあります。成功を収めた中国ファッション企業も2世代目に突入しており、ロンドンやNYで最先端ファッション教育を受けた2世代目ブランドが、資本力をバックにビジネス展開を広げています。

■Alibabaアリババ
2016年10月に創業者のジャック・マー氏が発表した「五新戦略」(Five News Strategy:ニュー・リテール、ニュー・マニュファクチャリング、ニュー・ファイナンス、ニュー・テクノロジー、ニュー・エネルギー)を展開中の世界的IT企業「Alibaba」

その戦略の一環で2020年9月に杭州に完成したスマートファクトリー「シュンシーデジタル工場」。アジア最大のショッピングサイトのビッグデータ分析とスマートファクトリーを連携させて新しいサプライチェーン開発を進めています。Alibabaの担当者は「この新しいプロジェクトに3Dモデリングは必要です。TFL上海で育成される優秀な3Dモデリストを採用したい。」と期待を寄せてくださっています。

■STYLE3D
2015年に設立されたStyle3D。
ベルギーでデジタル技術を学んだCEOが率いており、2022年7月には135億円の資金調達を行いました。

若いエンジニアの集団は、開発スピードも速く、先行するCLOや Browzwearにないハードウエアやその他関連するサービスも提供しています。レンダリングはクラウドかローカルかを選択でき、欧米のニーズにも対応できる体制を整えていました。中国国内でのSTYLE3Dユーザーは既に1000社を超えています。特に縫製工場やODM /OEMメーカーが導入を進めており、今後日本や欧米と中国との3DCGでの業務連携が加速することが見込まれます。
現在、海外への展開は東南アジアと中東の2カ国のみですが、今後、豊富な資金をバックに日本や欧米への展開を計画しており、TFL上海では既に授業用にSTYLE3Dを導入、TFL原宿でも導入予定です。

■ご参考までに
出張当時(22年11月)、上海はゼロコロナ政策で8日間の隔離&待機期間が必要でした。
成田空港の出国時にワクチン証明やPCR陰性証明などの個人情報をアプリに登録、情報は毎日更新、その情報を建物や公共交通機関への入場を制限する仕組みを導入していることに驚かされます。
中国の人口は14億を超えています。日本の人口の約11倍強です。
どれほどの量のデータ処理を行なっているのでしょうか?
頑張れ日本政府デジタル庁・・・・と感じるのは私だけでしょうか??

上海浦東新区

1992年複数の地区を合併し「国家の重大発展と改革開放戦略の任務を受け持つ総合機能区」である国家級新区として設置された上海浦東新区。区東には上海浦東国際空港を有しています。

中国で最も高いビル上海中心(上海タワー)最上部の龍。

床面に反射した2頭の龍は幸運をもたらすとのこと。
まさにデジタルで言われる「V2P(Virtual to Physical)」「P2V(Physical to Virtual)」を象徴する画像と思い紹介させていただきました。

2023年が「ファッションデジタル元年」になりますように!

文責:市川 雄司


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