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聴力

 年を取れば取る程、人は耳が悪くなる。特に高音域から少しずつ聞こえなくなっていく。これが耳の仕組みというものである。

 音楽の仕事を行っている物にとって致命的なのが聴力の低下。とはいえ、音楽を長く続けている人であればある程、耳は悪い。そもそも音量大きめに出している人が多いから。

 正直な話をしてしまうと、私も以前よりも耳が悪くなってしまったのである。

 事の顛末として、以前私は20代の終わりぐらいにテレアポの仕事を1年ぐらい行っていた時期がある。音楽家が選んで良い仕事ではないのだが、当時は営業の延長戦でやるには丁度いいかな?ぐらいでやっていた。

 しかし、この仕事はただ通話をするだけであればいいのだが、基本的にチープなヘッドセットと装着するので耳がふさがれた状態になる。そこまではまあ、いいでしょう。

 問題は電話を繋ぐときのプツっていう音。あれが耳には答える。というのも鋭い音で勝つ、かなりの高音域が含まれているので耳だけじゃなく頭も居悪してくれる音だ。更に厄介なのは電話を切るときの音である。

 今の時代はスマートフォンであればボタン一つで切れるのであまり気にならないものの、相手が固定電話だと電話を切るときの仕組み上、受話器を置かなければならないのだ、その置いたときの音が電話口の人にはしっかり届くのである。これが音の暴力というか、それがガチャ切をされた時に不意打ちで発生するのだ。一番この音が耳にダメージとなるので、ガチャギリをしてきたバカに「死ねよバカ」と何度言いたくなった事だろう….

 思わず暴言が出てしまったのだが、そういう気持ちにさせるぐらい、電話を切る音というのは暴力に等しい行為なので、例えどんなに気に入らない相手の電話だとしても受話器を叩きつけるように電話を切るのはやめよう。本当に暴力だと思う。

 それから久々に最近私はテレアポの仕事をしている。正直臨時で始めた仕事のようなものなので….という話は置いておいて、久々にヘッドセットを装着して仕事をしているのだが、ある事に気づく。

 そういえばガチャ切りされても以前より耳が痛くない?最初は知り合いとかに「最近のヘッドセットは進化している」と言われ、鋭い音はリミッティングしてくれるものだと思っていたのだが、そんな訳はないと思い調べてしまった。

 簡易的な聴力検査で、特定の周波数帯域を鳴らして聞こえなくなる音域のチェックをしてみたのだが、私の耳は16kHz以上を聞き取る事が非常に難しい耳になっていた。

 16kHz以上は20代だとモスキート音となり、耳が痛くてその近くにいる事は難しくなるような、そんな鋭い音が鳴り始める領域で、音程として聴きとる事が出来ない範囲となる。その部分が私はもう聞こえなくなっていたのだ。

 ミキシングを続けるにはまだ問題のない範囲ではあるのだが、音の艶だったり、空気感というものは残念ながらもう本当の意味で感じることが出来る耳ではなくなってしまっている事にショックを受けてしまった。

 今はまだこの程度なのだが、年には逆らえない。特定の周波数が聞こえなくなることによって、音程に影響が出るようになってしまったら、私はもう音楽家を引退しなければならないだろう。ピアノの一番高いドの音が半音違って聞こえるようにでもなったらもうアウトじゃないかな?

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