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「年金」#05: 繰上げ・繰下げ受給

※このコンテンツでは年金=老齢(基礎・厚生)年金を指します。

年金シリーズ目次
#00:後悔しない老齢基礎年金と老齢厚生年金
#01:年金に対する考え方と受給のタイミング
#02:税金と社会保険料
#03:年金受給の条件と計算
#04:年金に関する制度
#05:繰上げ・繰下げ受給
#06:年金増額大作戦!!
#07:知っておきたい年金用語
#08:年金がさらにもらえる?!年金生活者支援給付金制度
#09:付加年金最高説


今回は、前回制度の中でも特に知っていただきたい、年金の繰上げ繰下げ受給特集~これまでお話ししてきた、年金額の減額・増額以外にも大事なことがたくさんありますので、一緒に確認していきましょう~


色々な繰上げ・繰下げについて


それでは、繰上げ・繰下げについて、色々見ていきましょう~

繰上げ・繰下げできる年金は?

老齢基礎年金と老齢厚生年金です。あと老齢基礎年金とセットで付加年金・国民年金基金の一部(付加年金相当額)も対象となります。

以降は老齢基礎年金=基礎、老齢厚生年金=厚生と表記します。


いつを基準として繰上げ・繰下げとなるか

65歳到達時(65歳以降に受給資格を得た場合は、そのタイミング)が基準となり、これより早いと繰上げ、遅いと繰下げとなります。

なお、これ以降の話はすべて「65歳到達時」に受給資格を得た前提でお話しします。


繰上げ・繰下げできる期間

繰上げは60歳から受給開始可能、繰下げは75歳まで繰り下げることができます。期間でいうと繰上げは5年、繰下げは10年が上限期間となります。※例外あり


繰上げ・繰下げ単位と下限期間について

繰上げ・繰下げとも1か月単位で行います。また、繰下げ時は1年以上繰り下げないと申請できません。(例:65歳7か月の場合は繰下げできない)なお、繰上げは1か月から申請可能です。


繰上げ・繰下げの開始タイミングについて

繰上げ時:基礎・厚生同じタイミングで受給開始しなければなりません。
例えば、基礎を64歳から受給したら、厚生も必ず64歳から受給となります。

繰下げ時:基礎・厚生はのタイミングで受給開始することができます。
例えば、基礎は69歳から、厚生は65歳から受給開始とすることが可能です。


年金増減率について

繰上げ時:一か月あたり受給額の0.4%が減額
繰下げ時:一か月あたり受給額の0・7%が増額
この増減率は、受給開始すると生涯変更されません


増減率が有効になる他の年金

・付加年金
・国民年金基金の一部(付加年金相当額)
どちらも基礎年金と同じ増減率が適用され、同時に受給開始となります。


受給開始したら国民年金被保険者になれない

国民年金の被保険者に成れないため、以前お話しした保険料の追納や任意加入して受給額を増額することができません。またiDeCoは加入条件として国民年金の被保険者であることがあるため、老齢年金受給開始後は掛け金を拠出できません。


繰上げ・繰下げをしたら撤回できない

一旦繰上げ・繰下げ受給を開始したら、撤回、取消は一切できません!!上記の通り年金増減率は一生涯続きますし、これ以降お話しする他の年金との受給調整や受給権が消滅しても取り消せません

老齢年金以外で年金を受け取る可能性がある方は、以降お話しする他の年金への影響もしっかり考えて繰上げ・繰下げを検討してください。とりあえず受け取ればいいや~では大きく損をする可能性があります!!


繰上げ・繰下げすることで影響のある他の年金


ここが一番重要!!しっかり確認して繰上げ・繰下げしないと、受け取れない年金が発生し、大きな損失につながります恐れがあります。繰り返しになりますが、繰上げ・繰下げは撤回ができません。慎重に確実に請求・申請を行いましょう。

下記に現在受給中の年金がある、または貰う予定や可能性のある年金がある場合は、要チェック!!めちゃややこしいので、まずは関係のあるところ、ありそうなところだけ見てくださいね。


障害基礎年金

■老齢基礎
・先に繰り上げ基礎をもらっていたら、障害を負っても、支給されません。
・先に障害基礎年金もらっていたら、繰上げ受給を開始した場合、障害基礎年金は支給停止
・障害基礎年金をもらっていたり受給資格がある場合は、繰下げできない。

■老齢厚生
・先に繰り上げ厚生をもらっていたら、障害を負っても、支給されません。
・先に障害基礎年金もらっていたら、繰上げ受給を開始した場合、障害基礎年金は支給停止。ただし、65歳以降は両方もらえる。
・障害基礎年金をもらっていたり受給資格がある場合でも、繰下げ可能、繰下げ終了後受給開始した場合は、両方受給(併給)可能

補足:障害基礎年金は、国民年金被保険者でないと受給資格を得られない。老齢基礎・厚生を受給開始した時点で、国民年金被保険者になれないため、原則、障害基礎年金は支給されることがない
障害基礎年金と厚生は65歳以上であれば併給可能


障害厚生年金

★基礎、厚生共ともに
・先に繰り上げ老齢年金をもらっていて、障害厚生年金の受給要件をクリアした場合、どちらか一方のみ支給。(非選択の年金は支給停止)
・先に障害厚生年金もらってたら、繰上げ受給を開始した場合、障害厚生年金は支給停止
・繰下げ待機中に、障害厚生年金の受給要件をクリアした場合、繰下げはその時点で終了、年金額が確定され、どちらか一方の年金を選択し支給。(非選択の年金は支給停止)
・障害厚生年金を受給中および受給権がある場合、繰下げできない。

補足:障害厚生年金は、厚生年金に加入している場合、年金受給開始後も受給資格を得る可能性がある。
障害厚生年金と基礎・厚生は併給されることはない。


遺族基礎年金

★基礎、厚生ともに
・先に繰り上げ老齢年金をもらっていて、遺族基礎年金の受給要件をクリアした場合、どちらか一方の年金を選択し支給。(非選択の年金は支給停止)
・先に遺族基礎年金もらっていたら、繰上げ受給を開始した場合、遺族基礎年金は支給停止。
・繰下げ待機中に、遺族基礎年金の受給要件をクリアした場合、繰下げはその時点で終了、年金額が確定され、どちらか一方の年金を選択し支給。(非選択の年金は支給停止)
・遺族基礎年金を受給中および受給権がある場合、繰下げできない。

補足:遺族基礎年金は年金受給開始後も受給資格を得る可能性がある。
遺族基礎年金と基礎・厚生は併給されることはない。


遺族厚生年金

■基礎
・先に繰り上げ基礎をもらっていて、遺族厚生年金の受給要件をクリアした場合、どちらか一方のみ支給。(非選択の年金は支給停止)65歳以降に要件をクリアした場合、両方受給(併給)可能
・先に遺族厚生年金もらってたら、繰上げ受給を開始した場合、遺族厚生年金は支給停止。ただし、65歳以降は両方もらえる。
・繰下げ待機中に、遺族厚生年金の受給要件をクリアした場合、繰下げはその時点で終了、年金額が確定され、両方受給(併給)可能
・遺族厚生年金を受給中および受給権がある場合、繰下げできない。

■厚生 
・先に繰り上げ厚生をもらっていて、遺族厚生年金の受給要件をクリアした場合、どちらか一方のみ支給。(非選択の年金は支給停止)
・先に遺族厚生年金もらってたら、繰上げ受給を開始した場合、遺族厚生年金は支給停止。ただし、65歳以降は、遺族厚生年金が老齢厚生より年金額が多い場合は、超過分を受給できる
・繰下げ待機中に、遺族厚生年金の受給要件をクリアした場合、繰下げはその時点で終了、年金額が確定され、どちらか一方の年金を選択し支給。(非選択の年金は支給停止)。ただし65歳以降は、遺族厚生年金が老齢厚生より年金額が多い場合、超過分を受給できる
・遺族厚生年金を受給中および受給権がある場合、繰下げできない。

(例)超過分について
遺族100万円、老齢70万円の場合→老齢70万円、遺族30万円支給
遺族100万円、老齢120万円の場合→老齢120万のみ ※老齢の方が多いため

補足:老齢基礎と遺族厚生は65歳以降併給が可能。またこちらも65歳以降併給の可能性がある老齢厚生と遺族厚生について、ややこしく書いてますが、遺族厚生が老齢厚生よりも多かったらその多い分を支給するよということなので、結局遺族厚生年金受給額がもらえるとの理解でOK。この場合、老齢基礎・老齢厚生・遺族厚生の一部と3つが併給可能となる。


加給年金 ※要注意※

■基礎
・繰上げ、繰下げ共に一切影響を与えません。

■厚生
・厚生の繰上げ支給を開始しても、加給年金は65歳からの支給
・厚生の繰下げ申請を行った場合、支給開始は厚生と同タイミングになるが、年金受給額は一切増額されません。(繰り下げ期間中は支給停止)

補足:加給年金は厚生年金に240か月以上加入し、老齢厚生受給開始時に65歳未満の配偶者または18歳到達後の3/31まで(20歳未満の一定の障害を持った子も同様)の子がいる方に、原則65歳から支給されます。

特に注意なのが老齢厚生を繰り下げても増額はされずに支給は老齢厚生と同タイミングで支給開始となるため、支給が遅れる点。

加給年金の支給要件を満たせそうな場合は、老齢厚生の増額分と加給年金の停止額の試算を行ってください。老齢厚生を繰り下げた結果、加給年金が停止され大きく損する可能性があります!!


振替加算

■基礎
・繰上げしても、一切影響は与えません、支給開始は65歳から
・基礎の繰下げ申請を行った場合、支給開始は同タイミングになるが、年金受給額は一切増額されません。(繰り下げ期間中は支給停止)

■厚生
・繰上げ、繰下げ共に一切影響を与えません。

補足:この年金は、配偶者に加給年金が支給されていた方のみに支給される年金です。
65歳で支給終了となる加給年金が、振り返られて65歳から支給されるものです。

繰上げ・繰下げとは関係ありませんが、厚生年金に240か月以上加入して、老齢厚生を受給した場合、振替加算は支給停止。厚生年金加入が240か月未満の場合は併給可能です。

加給年金は、厚生年金被保険者だった方への老齢厚生年金に加算される年金
振替加算は、加給年金の支給要件対象だった配偶者の老齢基礎年金に加算される年金
です。


寡婦年金

★基礎・厚生とも
・先に繰り上げ老齢年金をもらっていたら、支給されません
・先に寡婦年金もらっていたら、繰上げ受給を開始時に、寡婦年金は消滅。
・繰下げ受給時は一切影響がありません。

補足:この年金は60歳~65歳到達までもらえる時限年金です。そのため繰下げ時は一切影響を与えません。


では、これまでお話ししてきた、内容について補足の注意点です。

支給停止と受給権消滅は異なる

支給停止:支給されなくなるが、再度支給可能となった場合は、支給が再開される
受給権消滅:権利自体がなくなるため、再度支給可能状態になっても、支給は再開されない

例えば、老齢基礎と遺族基礎両方の受給権がある場合、遺族基礎年金を選択し受給した場合、老齢基礎年金は支給停止となります。その後遺族基礎年金の支給が終了したのちは、老齢基礎年金の受給を開始することが可能です。

寡婦年金を受給中に老齢基礎年金の繰上げ受給を開始した場合、寡婦年金の受給権は消滅します。その後再度寡婦年金の受給を希望しても、受給権が消滅しているため、再受給することはできません


遅れて請求と繰下げ申請は違う!!

年金の受給にも時効があり、年金を受け取れるようになってから、5年以内に年金受給の請求を行わないと、年金が消滅し受給することができません。そう年金は請求しないともらえません!!

例で、68歳の時に遅れて請求した場合と繰下げ受給を開始した場合をお話しします。
違いは一括払いと増額です。

■遅れて請求
65~67歳までの未支給分を初回支給時に全額一括支給し、年金支給が開始されます。ただし、年金受給額は一切増額しません

★繰下げ
65歳~67歳までの未支給分は一切支給されず、年金支給が開始されます。年金受給額は65歳時に提示された年金額より25.2%増額(0.7%✖36か月)されます。

じゃあ同じパターンで72歳の時はどうなるか。

■遅れて請求
65~66歳分は時効により消滅、しかしながらこの期間は繰下げ申請したとみなされ、年金受給額は2年分16.8%増額(0.7%✖24か月)されます。67歳~71歳の未支給分は初回支給時に一括支給され、年金支給が開始されます。

★繰上げ
年金受給額は65~71歳までの7年分58.8%が増額(0.7%✖84か月)され、年金支給が開始されます。なお未支給分の一括支給はありません

わざわざ請求を遅らせる方はいないと思いますが、年金には時効があることと、時効成立前については、遅れても一括支給があることを覚えておきましょう。


とりあえず65歳からもらえばいいか~ではダメ!!


これからの時代、悲しいかな年金を受け取るにもしっかり準備し、計画しないと死活問題になる可能性が高いです。

面倒なのもわかります。先のことだからっていうのもわかります。ただ貰うタイミングになって準備できないことや、今よりも判断能力は確実に劣っています。

60歳になって細かな計算しろっていわれても無理ですよ、それこそ社労士やFPに相談できれば良いですが、それにもお金も時間もかかりますし、直前になって準備できないこともあります(受給資格の10年など)。

準備できる・考えられる今のうちに、将来の自分のために頑張って年金のこと考えてみてください。


最後まで読んでいただき、まことにありがとうございます。今回はめちゃややこしかったですね…もし何かご質問等ありましたら、お気軽にコメントくださいね!!

さいごに、どれくらいもらえるの?いつからもらい始めたらいいの?自分の年金額を試算して欲しい!!など、年金に関する気になることをお手頃価格(1,100円から)でお答えするサービスを提供しております。

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