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見られると喜んじゃう麹菌?全醤油の1%しかない木桶醤油「ヤマロク醤油」

いきなりですが、木桶で作られる醤油の割合はどれくらいでしょう?

そもそも木桶って?なんとなく字から想像つくけど、じゃあ他の醤油ってどう作ってるんだろう?と疑問符がどんどん増えていきます。

ひとまずそんな疑問は置いておいて、

驚くことに木桶で作られている醤油は全体の1%を切るのです。

私たちが普段使っているのは工場で作られた大量生産のものがほとんどなのです。もしかしたらまだ木桶で作られた本物の醤油を味わったことのない人がたくさんいるのかもしれませんね。

そんな貴重な木桶で生産された醤油のうちの約三割を作っているという小豆島の醸造所のうちの一つヤマロク醤油さんを訪ねて、新たに出会った醤油の奥深さについて書いていこうと思います。

醤油ができるまでの月日はなんと四年

実際にヤマロク醤油さんの蔵に足を運ぶと、事前の予約もないのに笑顔でお姉さんが迎えてくれました。

蔵に入る前からお醤油の香りが建物全体から立ち上っているのが分かります。たぶん自分の周りを醤油の香りで包まれたのはこれが人生初だったのではないかと思います。

入り口に着くと早速蔵の中へ案内されて、ヤマロク醤油や蔵について説明をしてくれます。

まずはヤマロク醤油さんの歴史からですが、明確な記録は残っていないものの確実に150年ほど前からはあったそうで、現在は五代目になるそうです。

桶に入っているのは「もろみ」です。もろみは塩水、小麦、大豆、そして麹菌を混ぜたものになります。このもろみを発酵させてできるのがお醤油になります。

一般的な工場生産の醤油は三か月から六か月のスパンで作るようなのですが、ヤマロク醤油ではなんと四年の歳月をかけて作り上げるのです。

ヤマロク醤油では鶴醤(つるびしお)という商品名で出されており、再仕込醤油になります。再仕込みとはどういうことかというと、もろみを二年間かけて醤油にした後、その醤油をまた桶に戻してそこにまたもろみを入れてさらに二年間熟成させるという大変手間のかかる製法のことを言います。

実際に味見してみると、ふわっと上品な醤油の味と香りが口の中に広がり、それから甘味とも苦みともつかない奥深さが幾重にもなり優しく包み込みます。

これが四年の歳月と二度の仕込みを経て作られた味の厚みなのだと思うと納得がいきます。

桶に入っているもろみの表面。乾燥させて表面は蓋のようになっています。中にはおいしいお醤油が......?

麹菌は神様?それとも見られて喜ぶ変態?

説明してくれたお姉さんのことでとても印象に残っていることがあります。それは菌に愛着を持っていて、そしてとても謙虚で、まるで神様に接しているかのようなのです。

お醤油作りに対してとても楽しそうに話し、蔵に住み着く菌のことをあの子たちと呼ぶお姉さん。

醸し出されるポジティブな空気は、なにかを作るという人為的な行為の持つ傲慢さからかけ離れた謙虚な姿勢からにじみ出てきていました。

お言葉を借りるとお醤油つくりは

「作るのは人間ではなく菌たちなので、人間は材料入れてちょっと混ぜるくらいのお手伝い程度です。」

ということなのだそうです。

蔵に住む菌は100種類以上といわれているようです。さらに蔵ごとに性格が違い、この蔵の菌は見られると喜んでおいしい醤油を作ってくれるので積極的に見学者を受け入れているのだそうです。

快く見学を受け入れてくれた背景にまさかそんな思いがあるとは。

ちなみにヤマロクのエースは入り口の入ってすぐ左右の樽だそうです。なぜなら入ってすぐでよく目につく彼らはよく歓声を浴びたり、写真を撮ってもらって気を良くしているからだそうな。

二階から見えている樽はあまり見てもらえずに拗ねているので、出荷するときは他の樽の醤油と混ぜるらしいです。おもしろいですね。

そんな大事な菌を大切にするために、繁殖力の強い納豆菌を持ち込まないよう普段は食べずに連休前を狙って食べたり、蔵の建て替えや引っ越しはせず補修も最小限にと努力しているようです。

桶屋がなくなれば、桶を作ればいいじゃない

先ほどの桶、創業当時から使われているようなのです。ということは150年......
あと数十年は持つらしいです。

とんでもなく長持ち!

昔のものは頑丈だと言いますが、まさかここまでとは。耐用年数が人生二回分とは恐れ入ります。

しかし実はここに問題があったのです。あまりに長持ちする製品のため発注数がほとんどなく桶屋さんの廃業が続いているというのです。しかも来年最後の一社が廃業になることが確定しているらしいのです。

このままでは日本から、いや世界から木桶で作る本物の醤油がなくなってまう。それどころか他の発酵調味料である「味噌」「酢」「味醂」「酒」までがなくなってしまいます。

こんな大変な事態にヤマロク醤油さんは、なんと自分たちで作ることを決意しました。

そして五代目と小豆島の大工さんが大阪で修行を積み、自分たちで作れるようにしてしまったのです。とてつもない熱量です。

工場生産に比べ費用対効果が低く採算性が悪いにも関わらず、日本の本当の味を残していくために邁進される姿には頭が下がります。

自分にできることはほとんどないのかもしれませんが、木桶で作られた醤油を買ったり、周りの人に少しでもその良さを広められたらと思います。

現在は盛況につきネットでの販売は中止しているそうですが、小豆島にお立ち寄りの際はぜひぜひ行ってみてください!

これまでの醤油観が変わること間違いなしです。

最後に言葉遊びが周りで流行っているので、ここで一つ。

I showed you shoyu of shoudo island.

複雑すぎて駄作でしたね。
またリベンジします。

醤油蔵からケイスケがお届けしました。

参照

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