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記憶に残るブランドのデザインとは?

こんにちは。FRACTA アートディレクター(以降AD)の宮崎です。

今回の記事は、この春デザイナーになる方にもぜひ読んでいただきたい内容です。ADになった今、つくづくデッサンを真剣にやってきてよかったと思うことがよくあります。
デッサンは、全体を俯瞰して捉えながら徐々に形にしていきますよね?
この俯瞰する視点を持ちながら全体が繋がるように、詳細を少しずつ詰めていくというちょっともどかしい進め方は、実はクリエイティブの基礎的な考え方です。ブランディングそのものと言っても過言ではありません。

作ることは得意だけど、なかなかうまく言葉にできない、伝わっているのか不安。。そういうブランド様のお悩みに対して、私たちは日頃デザインでサポートをしています。
自分たちのブランドを届けたい人にしっかり届けることが難しい時代となりました。なぜなら、今はブランドが溢れる時代。コミュニケーションの方法も多様化し、綿密に戦略立てて伝えないと、多くの情報に埋もれてしまうのです。。

でもブランドを運用していく上で、コミュニケーションは欠かせません。
そこで!今回は「記憶に残るブランドのデザイン」をテーマに、少しでも伝えることが楽しくなるような考え方をクリエイティブ視点で書いてみようと思います。

かっこいいデザインだけでは売れない。

ロゴやサイトデザインは今注目され、とても身近な存在となりました。
重要なタッチポイントですが、一方で顧客にとってはブランドとの一つの接点に過ぎません。
店舗の雰囲気、プロダクトの肌触りや使う時の音、重み、店員さんのおもてなしや、SNS投稿など実に様々なかたちでブランドに触れることができます。

この時顧客は、ロゴや色を表面的にみているのではなく、その背後にあるブランドの想いや顧客への配慮を体験の中から無意識に感知し、ロゴと一緒に記憶を重ねます。体験の中で、安らぎを感じたり、楽しくなったり、憧れの気持ちを抱いたりします。
つまり、各タッチポイントから無意識に感知している、ブランド特有の”フィーリング”があるのです。これを醸成することで、はじめてブランドの魅力が記憶され、顧客の共感が生まれるのです。

ブランド特有の”フィーリング”って何?

ズバリ「印象」です。
少し事例を見ていきましょう。

アップル

このロゴを見て、思い浮かぶイメージはありますか?
ストーリー性のあるCM、天上の高くて開放的なApple Store、やデジタルオタクでフランクな店員さんを私はぼんやり思い浮かべました。
そこに共通するフィーリングは先進的でかっこいいのだけれども気さくでオープン、そんな印象です。
引用:https://www.apple.com/jp/

スターバックス

今となっては定番となりましたが、「トール」や「グランデ」など言葉のチョイスは知的ですよね。イタリアのバール文化を感じさせるカウンターを使った店舗体験も他には新しかったですし、カップに手書きでメッセージを書いてもらえることをわかっていても、実際もらうとやっぱり嬉しかったと、私には様々な記憶があります。
共通するフィーリングは、自分を少し高めてくれる、ホッとする居場所といったところでしょうか。
引用:https://creative.starbucks.com/

シャネル

服、バッグ、靴、香水などあらゆるファッションの定番を作り上げたシャネル。どんな色を選んでもなぜかエレガントに見えるルージュの色合い、女性として勇気がもらえるココシャネルの名言、クラシカルで高級感のある店舗などが思い浮かびます。
自由を求めるクールでエレガントな女性像が共通するフィーリングとしてあります。
引用:https://www.chanel.com/jp


こんな感じで、様々な体験から得られる印象がいつも共通していると、次第に信頼や愛着が生まれます。

「印象」を作っていくにはどうしたら良いのか?

基本的には、ブランドコアから抽出されたブランドコンセプトをあらゆるカタチに落とし込んでいくというものなのですが、とても難しい行為です。
何もないところから考えろと言われても、何をどうしたら良いか途方に暮れてしまいます。

そこで、考えやすくするための一つのやり方として、ブランドをひとりの人として例えながら設計する「擬人化」という方法があります。
ブランドと顧客のコミュニケーションは、人との信頼関係を築く行為と似ていると私は思います。

ターゲットは普段どんなお友達と一緒にいるだろう?
ターゲットが嫌がることはなんだろう?
誰に憧れを抱いているのだろう?

そんな視点で考えていくと自ずとブランド(人)の見た目や、話し方、立ち振る舞いや雰囲気がぼんやり見えてきたりします。
つまり、ブランドを擬人化して考えていくと、あらゆるブランド体験設計に自然とつながっていくのです。

このフィーリングを作るための、ブランドを「擬人化」するためには大きく5つの視点があります。
・雰囲気 
・見た目  
・喋り方 
・振る舞い  
・夢に向かった挑戦 

上記をブランドで考えると以下のようなイメージです。
・雰囲気:店舗などの空間、香り、肌触り、音
・見た目:視覚情報であるVIやビジュアル
・喋り方:コピーやSNSなどの言葉使い
・振る舞い:象徴的なサービスや振る舞い方
・夢に向かった挑戦:サービス以外の取り組み

ブランドコンセプトを中心に、あらゆる方向に体験を設計していくというイメージになります。その先にサイトや店舗などの具体的なコンテンツがあるというイメージです。
なぜこのような立体的な体験設計が必要なのかというと、人は五感を使って物事を普段から捉え記憶と結びつけるからです。
でも目に見えない「印象」というのは無意識に感知されるものなので、それをゼロから考えることは最初は難しいです。
ですが、私たちは普段の生活の中で、ありとあらゆる情報に触れて、無意識に印象を感知しています。このからくりに一度気づくと意外とできるようになります。

弊社が支援させていただいた「ワイン日和」を事例にもう少し掘り下げて観察してみましょう。

ワイン日和

「日本ワインでちょっと贅沢を」をコンセプトに、日本ワインに込められた物語やワインと過ごす贅沢なひと時を提供する日本ワインブランドの立ち上げを支援いたしました。
おおらかで気取らない、少し贅沢な気分にさせてくれる、この共通のフィーリングを持ってもらえるようなブランドの魅力とはなんだろうと5つの視点から考えました。

・雰囲気 -ワインの香り・鳥の囀りが聞こえる清々しい登美の丘という場所・ワインが楽しく選べるようなVMDを施した洗練された店舗- 
登美の丘という美しい場所の魅力がブランドの財産として既にあります。ここを最大限ビジュアルで伝えるとともに、日本ワインらしい”雰囲気”を作っていきます。
まず輸入ワインが作り上げた敷居の高い蘊蓄の世界観をいい意味で壊すようなブランディングにしたい!そういう意識がチーム全体としてありました。
課題の一つであったのが、ラベルだけではなかなか判断がつかないワインの味わいの伝えかた。ワイン日和らしく伝えるために、作り手の手書きのコメントをボトルの横に置いて販売。洗練されたモダンな空間としながらも、お客様の目線に近い部分には、あたたかみを感じるアイテムを置くことで、ワイン選びが楽しくなるよう工夫を施しています。

・見た目 -自然豊かなワイナリーの様子や人々・上質感のある明朝体 アースカラー-
山梨の登美の美しい丘に作られたワイナリー。絶景を眺めながら美味しいワインに浸れる、そんな場所の魅力にフォーカスして、ワイナリーでの美しい自然をビジュアルにしました。

・喋り方 -日本語を中心にコミュニケーション・作り手からの心のこもったメッセージ-
日本のワインということで、コミュニケーションもなるべく日本語を使い、飾らない素直な言葉使いを心がけました。
またたくさんの作り手の方からお話を伺い、暮らしに寄り添うエッセンスを抽出しコンテンツとして落とし込んでいます。

・振る舞い -ワイナリーでワイン選びを作り手が直接サポート・日々の暮らしに寄り添う提案をする-
日本は多国籍な食文化なので、様々な料理と相性が良いという日本ワインの特性をECサイトでも表現しています。簡単に作れるワインのお供のレシピも開発。

・夢に向かった挑戦 -地域の方を招いたワイナリーのイベント・地域のお店のご紹介-
ワインはテロワールによって味わいが異なるため、その土地を大切にしたいという想いがあります。
引用:https://japan-wine.direct.suntory.co.jp/

まとめ

記憶に残るブランドのデザインとは、人の五感を刺激し、共通のフィーリングを残せるようなコミュニケーション設計が鍵となります。
共通のフィーリングを設計するための考えかたの一つとして、ブランドを「擬人化」して考えるという方法をご紹介しました。
全体像を俯瞰しながら、共通のフィーリングを目指してビジュアルやサイトデザインなどの具体的なデザインを作っていけると、まるで生き物のような個性豊かなブランドになっていきます。

最後にブランドを運用される方にお伝えしたいことがあります。クリエイターに仕事を依頼する際は、これまで話した全体に共通する「フィーリング」や「擬人化」したブランドイメージを伝えていただくだけで基本的にOKです!あとはクリエイターに任せましょう。複数のデザインの中から選ぶ際もこのフィーリングを直感的に感じたものがほぼ正解です。なぜなら顧客が直感でブランドの魅力を感じられるデザインが、現代においては必要だからです。
ブランド(ある人)の一番のパートナーでいつつ、出会った頃感じた魅力を忘れずに周囲にも伝え続けると、ブランド(ある人)はいつまでも輝くことができます。そうすると、このブランド(ある人)を好きな人・支えたいと思う人たちが自然と集まって大切な仲間となっています。

ここまでお読みくださりありがとうございます!
FRACTAは、ブランドを最大限理解し、伴走しながらブランドの輝きを社会に実装するトータルブランディングパートナーです。「立体的なコミュニケーション設計」もチームでサポートいたします。今回は、FRACTAがブランドや企業を支援する中でも”クリエイティブ”な視点から、記憶に残るブランドのデザインについてお伝えしました。

参考書籍:事例で学ぶブランディング ランドーアソシエイツ[著]


FRACTAはブランドの立ち上げから強化、DX、体制構築まで企業の成長に寄り添い伴走するトータルブランディングパートナーです。ブランドの挑戦をテクノロジー、クリエイティブ、ビジネスの力で支えます。

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