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FRACTAのAI活用の現状と展望・戦略方針

[本記事は2023年8月8日にFRACTA Journalにて公開された記事の転載となります。]

昨今、AIの活用は全世界的に話題となっており、FRACTAにおいてもその活用についての議論が進んでいる。
一方で、AIは本当に使い物になるのか?我々を脅かす存在になり得るのか?様々な疑問や恐怖、抵抗があるのもまた事実であろう。

このレポートは、世界のAIに関するレポートを冷静かつ客観的な視点で捉えつつ、FRACTA Research&Implementation(RI)局メンバーの実体験を交えながら、AI活用の現状と今後考えるべき課題について取りまとめたものである。


AI活用における主要な5つのポイント

AIに関するレポートや記事を見ていると、生成AIは概ね今までの機械学習レベルとは次元の違うレベルのものとして認識されており、様々な業務・サービス・政策に組み込まれていくことは不可逆と思われる。
主要なポイントとしては下記が挙げられる。

①AIの進化と経済成長

AIの進化は生産性の向上、新たなビジネスモデルの創出、労働力の再配置などを通じて経済成長を促進する可能性がある。AIは労働力のスキルセットを変革し、新たな産業を生み出し、既存の産業を変革する可能性もある。

②AIと生産性

AIは労働力の生産性を向上させる可能性がある。AIは単純なタスクの自動化を可能にし、労働者がより高度なタスクに集中できるようにする。これにより全体的な生産性が向上する。

③AIと雇用

AIの導入は一部の職種を消滅させる可能性があるが、新たな職種を生み出す可能性もある。AIは労働力の再配置を必要とする可能性があり、これは新たなスキルと訓練を必要とする。

④AIがもたらす経済の不平等

AIの導入は経済の不平等を増大させる可能性がある。AIは高度なスキルを持つ労働者に利益をもたらす可能性がある一方で、低スキルの労働者は影響を受ける可能性がある。

⑤AIと政策

AIの影響を最大限に活用し、そのリスクを最小限に抑えるためには適切な政策と規制が必要である。教育と訓練、労働市場の規制、税制、社会保障制度など、多くの政策領域が関与する。

現時点でのAI活用の正解とは

また、労働市場においてどのような影響があるかは、定量化されたデータとしてゴールドマンサックスよりレポート「人工知能が経済成長に及ぼす潜在的な大きな影響」が公開されている。

以下はその一部を抜粋したものである。

1. AIと労働市場
AIが労働市場に影響を与える可能性がある職種の範囲を評価するために、O*NETデータベースの900以上の職種のタスク内容を使用する。このデータベースは、AIによる労働節約の自動化に影響を受ける可能性がある労働の割合を職種と産業別に推定する。

2. AIとタスクの自動化
この分析では、O*NETデータベースの39の作業活動のうち13の作業活動をAIの自動化に影響を受けると分類する。ベースケースでは、AIがO*NETの7点「レベル」スケールで4の難易度までのタスクを完了できると仮定する。

3. AIと職種の分布
AIが実行できるタスクの職種レベルの分布を報告する。その結果、米国の職種の約2/3がAIによる何らかの影響を受ける可能性がある。

4. AIによる労働の自動化
シナリオ分析によれば、最終的にAIによる自動化に影響を受ける労働の割合は15-35%の範囲になる可能性がある。これは既存の文献の推定値と一致しているが、一方で比較的保守的な推定値である。

5. AIとグローバルな労働
グローバルに見て、労働の18%がAIによって自動化される可能性がある。先進国では新興国よりも大きな影響があることが示される。

人工知能が経済成長に及ぼす潜在的な大きな影響

これらのレポートからは一見すると、AIによって人間の業務が奪われていくように感じられるが、現時点でAIのアウトプットは人間のそれにまだ追いついていない。
業務で使用するための具体的なアウトプットが定義されないまま漠然とAIが導入されるという状況はしばらく続くと予想される一方で、本質的な利用方法などは十分に議論されていない、というのが現状だと言える。
では改めて、現時点でのAI活用の正解とは何なのだろうか?

実際のところ「AI」はインフラであり、道具でもある。
人々の生業、生活の様々なシーンに組み込まれていくべきであり、それは人類の歴史で言えば「棒」、「鏃」や「紙」、「馬」「火」のようなものだと言える。

つまりあらゆるシーンでその活用法は異なり、それに伴い考え方も変わるべきであるため一概にまとめることはできない。つまり、一方的に「盲信する」ことは避けるべきであり、あくまで我々の行動の「延長線」にあるべきなのだ。

AIを道具とするならば、それを使いこなす人間のことは「Augmented Human(*)」と定義することができる。これは学説的にも長い間問われていたことである。
*みずほリサーチ&テクノロジーズ : 人間拡張:Augmented Human(1/3)

人類の歴史を振り返ると、確かに道具や科学技術が出現する度にディスラプトが起きているが、その多くは「理解の不足」により淘汰されている。
つまり「道具」に「使われ」てはいけないのだ。 我々の根本概念として重要になるのは、AIも「棒」や「火」と何ら変わりないということである。

4つの方向性から示すAIの活用法

これらの観点を前提とすると、AI活用には4つの方向性が示される。

1. アシスタント系
2. 完全代替(パーソナライゼーション含む、完全自動化。複数パターンの高速生成)
3. 能力解放・強化・イノベーション系(クリエイティブ系、ディレクター系、サービス開発系)
4. 面白系

1. アシスタント系

1、2は、効率化による「余裕」を生み出すことにより人間が「思考」の時間を確保できるようになることで、「判断と意思決定能力」の向上が期待できる。

加えて1についてはMicrosoftの研究者たちが開発した、自然言語で指示を出してMicrosoft Officeを操作するAIシステム「Semantic Interpreter」や、Googleの対話型AI「Bard」が「暗黙的なコード実行」を導入する(*)など、既存のLLMに対してより広範囲での活用や精度向上に向けた新たな研究が日々進行している。
*Googleの対話型AI「Bard」がバックグラウンドでコードを実行できるようにする「暗黙的なコード実行」を導入、文字列の操作や論理・推論を含む複雑なタスクに対する回答精度が向上-GIGAZINE

LLM自体の次バージョンについてはまだ不透明だが、現時点のモデルにも可能性は十分に残されており、それらの発展とともに「人のアシスタント、相棒=コパイロット」としてのAIは2023年中にかなり実用的なものとなると考えられる。

また、AIの活用はコスト削減や生産性向上の側面で語られることが多いが、真の恩恵は、コンセプト作りから計画実行までのサイクル=回転数を上げることによる質的な変化である。
例えばソフトウェア開発では、コンセプトを考えても実際にプログラムを構築するコストが莫大なため、表に出さずに終わってしまうものも多い。しかしChatGPTのような生成系AIは、思いついたコンセプトに基づく実行計画を素早く作ることができ、更にプログラミングまで容易にできる。多くの商品をユーザーに届けることができれば、その分多くのフィードバックを得ることができる。
こうした試行錯誤の回数がChatGPTによって増えていくことから、結果としてイノベーションが生まれやすくなるのだ。

これらの効率化はそれだけでも高い生産性という付加価値を生み出すが、そこで生まれた時間を活用し、「アナログコミュニケーション」の生成までをセットとすることで、より高い情緒的価値を創造することが可能になる。社会におけるアナログコミュニケーションは今後、「リアル」と「無駄(とされてしまいそうなこと)」を重視する方向へ向かうと予想できる。

2. 完全代替(パーソナライゼーション含む、完全自動化。複数パターンの高速生成)

2についてはすでに多くのサービスが開発されており、学習系のサービスをはじめとした実用段階にのっているものや、多くの投資を集めグロースのフェーズに入っているものもある。

代表的なのは「siena.cx」で、これらが目指すべき方向は「究極のパーソナライズ」、「真の意味での1to1」である。
今まではオンライン上で全ての顧客に対して詳細な1to1を実現することは不可能に近かったが、生成系AIの出現により、レコメンドやテキストはもちろん、ビジュアルイメージやコミュニケーションのトーンすらもパーソナライズが可能になった。今までにない新しい体験の創出は今後AIに期待できる領域の一つと言える。
また、先日リリースされた、eコマースプラットフォーム「Shopify」に搭載されている「Shopify Magic」も十分な実用性が感じられた。

一方でこれらを実現するためには顧客を理解するための「1stPartyデータ」や「参照用DB」の整備が不可欠であり、データ設計とセットで計画を立てていく必要がある。言い換えると、これらのデータセットを持っている企業が大きな強みを発揮していくため、データセットの整備は急務であるとも言える。

3. 能力解放・強化・イノベーション系(クリエイティブ系、ディレクター系、サービス開発系)

3については特にクリエイティブにおいて効果を発揮する。
クリエイティブを生業としている人間は元々持っている素養や修練してきた技術などを思考及び嗜好の基礎ベクトルとし、それらを可変させていくことで顧客の要望やトレンドへの適合を行っていく。しかしその場合、基礎ベクトルは個々人が無意識かつ精神的・時間的安全圏内に収まった範囲での稼働がメインとなるため、アイデアやアウトプットの幅は限られる。

しかしAIを活用すれば元となるアイデア出しの段階で、超高速かつ広範囲のサンプルを出力できる。 これは旧来の大手建築事務所やデザイン事務所において、大御所と呼ばれる人が多数のアシスタントにアイデアを出させ、それらを精錬し、まとめ上げてアウトプットを作ってきた工程に近い。 この場合は、AIを活用して作業を代替する、効率化するというよりも、可能性を広げることが主な目的となる。自分の領域の「足場を広げる」といった表現がわかりやすいかもしれない。

同様に、ビジネスサイドの人間が単一機能のプログラミングをローコードで実現できるようになるといったアシストも期待できる。つまり「人」の可能性を引き上げることが期待できるということだ。
ここで重要になるのは「審美眼」と「コミュニケーション」だろう。市場のニーズや顧客のペインをいち早く感じ取り、それらをプロセスに反映していく能力も求められる。 端的にいえば「クリエイティブ系がマーケティングの能力を得る」またはその逆のパターンとなっていくだろう。

AIではないが、テクノロジーを活用して人間の可能性を広げた一つの例をご紹介しよう。

「ボカロP」をご存知だろうか?ボカロPとは、ボーカロイドソフトを用いて楽曲を制作し、それを公開する人々のことを指す。
この「ボカロP」は基本的にボーカロイドを活用して楽曲を作り上げていくのだが、極端な例で言うと「人間が歌うことが困難、または歌い辛いメロディー」も合成できる。つまり楽曲制作段階で人間の限界を考慮することなくクリエイティビティを発揮できるのだ。
そして、このボーカロイドが歌った楽曲を人間がカバーすることで、ストーリーの劇的な展開やトーンの変化、キャラクターの個性を更に強く表現することが可能になる。 これは、ボーカロイドが歌う表現というベースに、歌い手の個性を加えることで、先述した「足場を広げる」ことを実現し、元来持っている能力が最大限に引き出されている状態であると言える。

もちろんこのやり方は非常に難易度が高いため諸刃の剣であるが、アップデートされた新たなる表現として、徐々に広がりつつある。
アートやエンターテインメントの世界では、今後AIの力で表現の限界を超える事例が増えていくのではないだろうか。そしてそれは、14世紀のルネサンスに匹敵する規模の社会現象を引き起こす可能性まで秘めている。

4. 面白系

4については業務効率化などには直結しないが、エンターテインメント要素として活用できる。
例を挙げると、画像生成AI「StableDiffusion」ではQRコードと美麗なイラストを融合させる試み(*)が行われている。 また、少し範囲は広がるが今後の可能性として、Apple Vision ProのAI活用などといった未来も考えられる。

こちらについては効率化や生産性向上というよりも、まだまだ模索、実験の段階と言えるだろう。今後2〜3年を目処に進化を遂げた全く新しいエンターテインメントが生まれるかもしれない。
*画像生成AI「Stable Diffusion」で美麗イラストとQRコードを融合させる試み - GIGAZINE

おわりに

AIブーム、と呼ばれる一過性の波は一旦は過ぎ去ったようにも感じられるが、本質的な活用はこれから始まると予想される。
改めて我々の課題と、その課題に対してAIが有効に活用できるかの検討は今からでも遅くはない。
本レポートがみなさまの検討のきっかけになってもらえれば幸いである。


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