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明日も、あなたがいれば



死のうと思っていたとき。


いや、正確に言えば死のうと思っていたのではない。

消えようと、思っていたとき。

私は家族や友達のことを考えた。
ごめんなさい、と。
楽しかったよ、これまで。

けどもう限界なんだ、楽になりたい。

私がいなくなったところで、日々は続くでしょ?



LINEを消した。

トーク履歴はすべて消えた。

心残りなどなかったと言えば嘘になる。

もう一度、会いたかった。
そう思った人もいた。

けど。けど、それももう無理だ。



薬をあるだけ飲んで、泣いた。

猫にも謝った。
ごめん。私が、死にそうだったあなたを助けたのに、今は私が死のうとしてる。
最後まで面倒みれなくて、ごめんね。



布団に入り、ウトウトしながら、また考えた。

これできっともう、明日は来ない。
明日が来ないことがこんなに心を安心させるなんて。
私はこれからどうなるだろう。自殺だから、やっぱり地獄かな。でもそれでもいいや。
そこには私の知らない悪魔だか、鬼だか、とにかく私の知らないやつしかいないはず。
それならいいや。

ごめん、親より子が先に死んで。本当に…


_____________

来ないはずだった明日は、目を開くとそこにあって。
私は救急車にのっていた。 

朦朧とした意識のまま、かかりつけの病院に運ばれ、入院した。

病院の天井を見上げて、
なんでだろう、と思った。

なんで死ねなかったんだろう。それもあるけど。
なんで生きていたことを、安心している自分がいるんだろう、と涙が溢れた。



余命10年

映画を見たとき、
2人の恋物語よりも、日常を生きること、を考えた。
自分のことを考えた。


私もかずとくんと同じ、自ら死を選んだ人間だ。

「それってずるいよ」

まつりちゃんの言葉が、ズシンと重かった。


わかるよ。生きたくても生きられない人がいる。
そんな人がいるのに、生きられるのに、死を選ぶのはずるいし、逃げだし、弱いし。


けど、生きたくても生きられないって、一緒だと思う。
傲慢だ、屁理屈だ、と言われてもいい。

辛くて、苦しくて、生きたくても生きられない人もいる。

そんなに辛いなら、逃げればいい、相談すればいい、辞めればいい。

でもね、それができたら、生きられるんだ。


かずとくんは偉いな、と思った。素直にまつりちゃんの言葉を受け止めて、謝って、もう死にたいなんて思わないって約束して。


まつりちゃんの存在が、かずとくんが生きる意味になった。
結果的には、かずとくんの存在も、まつりちゃんの生きる意味になった。




私も、幸運なことに今はそんな人がいる。
私が、生きる意味を見出せる人。

私が、明日も生きようと思える人

人のために生きるより、自分のために生きられる人の方が強いんだと思う。

でも、世の中には弱い人もたくさんいるから。

私は明日も、あなたのために生きるよ。



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