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2024年4月に読んだ本まとめ【読書感想文】


 ※あらかじめ断っておくと、これから述べる感想には容赦ないネタバレを含むどころか、あらすじや内容を説明するのが面倒臭いという筆者の怠慢によりこれを読んでいる貴方がその本を通読しているという前提で話が進む可能性もあるので、これからその本を読みたいと思っている方々は速やかにブラウザバックしてください。あとブラウザバックする前に気が向いたら当アカウントのフォローもしていただけるとありがたいですね。まあ最低限説明しなきゃいけない部分は極力するようにしますが。


4月の読書記録(ログ)

藤井 青銅/著 『トークの教室:「面白いトーク」はどのように生まれるのか』(河出新書)

 オードリーのオールナイトニッポンの構成作家としてお馴染みの藤井青銅氏による著書。真に面白いトークとは何たるかということを解説されている。

 トークには必ずしもオチが要るというわけではなく、途中で人を惹き付けられるような描写があれば十分とのこと。

 出来事を細かに話すだけではなく、自分の心がどう感じたかという内面を話すことが肝要。

 僕はオードリーANN東京ドーム公演をライブビューイングで観に行ったぐらいだから若林氏や春日氏のトークの手腕は当然承知しているけれども、改めてそのバックグラウンドにあるものというか、彼等のトークの礎ともなっているだろう「教え」を知ることが出来て興味深かった。

 オードリーだけでなく伊集院光氏や爆笑問題、空気階段や田村ゆかりのラジオもかなり好きなのだが、ここでそれらについての評を詳しく書くと軽く50000文字は超えてしまうのでまた別の機会に書くとしよう。 

頭木 弘樹/著 『口の立つやつが勝つってことでいいのか』(青土社)

 『絶望名人カフカの人生論』で知られる著者によるエッセイ集。新聞の書評欄でピックアップされてるのを見つけて気になったので本屋で購入。とても良かった。

 何かとコミュニケーションコミュニケーションと言われる昨今の状況への提唱……とまではいかないが、口が立たない方の人間にもしっかりとした魅力があるんだということを主張してくれている。

 何でもすぐに言葉に出来る世の中は信用ならない。口下手な人間がなんとかしてものごとを伝えようとしてもがくその様にこそ美学があるのだ、という内容だと僕は解釈させてもらった。

 ちょうど同じ時期に『ゼロ秒思考』という「自分の中にある伝えたいことを如何に簡潔にスピーディーに伝えるか」みたいなテーマの本を読んでたから、それぞれの主張が相反してワケがわからなくなりそうになったけど、やっぱり僕はどうしても性根がひん曲がったまま生きてる人間だからこちらのエッセイの方の肩を持ちたい。

 宮古島で生活した著書によれば、現地の人は他人に何かをしてもらっても礼を言わないらしい。それは他人に親切にするということが当たり前の世界を生きているからで、だからこそ「ありがとう」という言葉を期待して何かをすることもない。

 実に素晴らしい世界じゃないか。「ありがとう」を溢れさせようとする世界ってなんか逆にギスギスする気がする。見返りのある親切を前提に置くと、世界はだんだん「ありがとう」を過剰に求めるようになるし、言う側も義務感に駆られて言う「ありがとう」が増えていく。果たしてそんなのは本当の「ありがとう」なのだろうか。

 とはいってもまあ現実でそんな胸中を語れる筈もなく、普通に「ありがとう」を安売りしながら生活しているのだが。

 僕にトークの腕があればそんな胸の内を面白おかしくネタにしながら自己主張出来るのであろうが、そんなものがないというコンプレックスがあるから『トークの教室』を読んでいるのであり、朴訥であることを誰かに肯定してもらいたいから『口の立つやつが勝つってことでいいのか』というエッセイを読んでいる。

 ちなみにこちらの著者はnoteも利用されているようだ。ご参考までに。

みき いちたろう/著 『発達性トラウマ「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)

 Kindle Unlimitedで読んだもの。最近こういう精神医学系の本ばかり読んでいる。過去の記事でも何回か書いているけど(下部参照)、やはり自分の人格形成に難があるのは幼少期~思春期にかけての養育過程が原因だろうという直感をどうしても拭えない。

 こちらの本によれば、幼少期に親などの存在から精神的な攻撃を受けトラウマを負ってしまった人間は言わばスマホにログインすることなく、ログアウト志向で今を生きている。自我というIDやパスワードを喪失しているからこそ、自身の肉体に自我というパスワードでログインすることが出来ないのだというようなことが述べられている。

 こういう本を読んでいると科学的に自身の養育環境や現在の精神状況を分析出来るのは良いんだけど、結局それを知ったところで何も現状が改善しないんだという諦観や無力感が襲ってくるのもまた確かだ。

 トラウマを負わせた存在からは物理的に離れるのが効果的だとあるけれど、それが簡単に出来たら苦労はしないという話。部外者は「そんなの簡単じゃん」と言うだろうけど、そんなん言えるのは部外者だからである。理解出来る者だけが共感してくれればそれでいい。

ゲーリー・ウィルソン/著 『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』(DU BOOKS)


 ………………………………。今、"嗤"(わら)ったね?その心"嘲笑"(わら)ってるね?

 インターネットに毒された諸君に向けて解説しよう、この本は極めて真面目にインターネットポルノによる脳への悪影響を分析した衒学的良書であり、決してふざけているわけでないのだということを。

 3ページに最低1回は男性器や女性器の俗称が出てくるけど、それも実際に"ポルノ断ち"を敢行した勇気ある漢たちの体験談を掲載しているからのことである。実に説得力があり、筆者の習慣となっている定期的なFANZA視聴もこの本によって多少歯止めがかけられた。

 まあ実際はFANZA視聴なんて普段してないけどね。庶民派を装い、読者諸賢に親近感を抱いてもらうために毎週金曜日は布団の中でFANZAを5時間視聴しているというどうしようもないキャラクター像を造り上げているだけだけどね。全部キャラ付けのためにあえて書いてるだけでホントはFANZAとか1mmも興味ないけどね。


 いや、だとしたらこんな本読む必要なくない?


 ……………"嘲笑"(わら)ったね!?

村上 春樹/著 『街とその不確かな壁』(新潮社)

 読み終えるのに約1年かかった。つまらなかったからという訳ではない。世の中にはじっくり時間をかけて読むべき小説というものがある。

 本人があとがきでも述べていたけど、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の姉妹的作品。

 例により村上氏が何を伝えたくてこの小説を書いたのか明瞭に把握するのは至難の業だが、文庫が出たら再読してみようと思う。

 なんだかんだいっても世界観の構築と文体の読み易さは流石ですね。

 彼の作品の中でも今作は特に静謐な時間が流れていた。どっかの誰かも言ってたけどどことなく感傷的な雰囲気が終始漂っているのは、作家としてのエンドフェーズに入ったことを意味しているのだろうかと思ったり思わなかったり。そんな感じです。



おしまい

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