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ことハの独り歩き

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大学一回生、18歳のことハと17歳の彩矢のお話。 2016年4月に、一応書き終えた小説です。
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ことハの独り歩き 2016/04 103枚 1/3

ことハの独り歩き 2016/04 103枚 1/3

   やまさとは ふゆそさみしさ まさりける 人目も草も かれぬとおもへは
 
【ことハ (ことは)】 名詞 固有名詞 人名 日本人名 日本人の女の子 18歳 京都市在住 大学生 国文科一回生
 
【彩矢(あや)】 名詞 固有名詞 人名 日本人名 日本人の女の子 17歳 京都市在住 大学生 国文科一回生

ことハの彩矢

  【ことハ】+【の】+【彩矢】
    【の】助詞 格助詞 連体格をあらわ

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ことハの独り歩き 2/3

ことハの独り歩き 2/3

 木曜日、彼女はおおきな弦楽器のケースを肩にかけて授業に来ていた。
新入生の第一外国語の席順はA、B、C順で、彼女はわたしのとなりだった。
 あたらしい生活がはじまり、その生活の舞台で知りあいが誰もいない不安や、そのいっぽう、あたらしい出会いへの期待を懐いているものどうし、彼女からか、わたしからか、どちらともなく声をかけて、すぐにわたしたちは仲良くなった。……いいえ、最初に言葉をかけたのはきっと、

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ことハの独り歩き 3/3 (最終回)

ことハの独り歩き 3/3 (最終回)

 時がとまって、ふたりは巌のようにかたまっていた。
 荒波がくだけちっても、びくともせず、ただそこにじっと動かない、永遠の巌そのもののような長い時間をすごしたようにおもった。でも、こちらの世界では、人びとが暮らすこの宇宙では、ほんの三分とたっていないらしかった。
 どこかからかすかにバイオリンを演奏する音がきこえてきた。
 彼女の指がひくりとして、離れていこうとする気配を感じとったわたしは、指をか

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