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日本全国不動産掘り出し情報⑪

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を(株)遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年11月号』より、「松阪市」「北秋田市」を紹介します。

★松阪市

商都の伝統を今に引き継ぐまち。
駅前再開発を練り直し、にぎわい復活へ

再開発により複合施設が計画されている「松阪」駅西口北側

三重県のほぼ中央に位置し、伊勢湾に面する松阪市。現在の人口は約16万人、四日市市、津市と並ぶ県内の経済拠点となっている。古くは松阪商人で知られる豪商のまちとして発展、近現代ではブランド牛「松阪牛」の産地として全国的に知られるようになった。

その中心市街地は、JR紀勢本線・名松線・近鉄山田線が並行する「松阪」駅の西側一帯に広がっており、一部にはかつての商都をほうふつとさせるまち並みが残る。

また、県中部からの広域集客を誇る商業集積を有し、1980年代初頭には駅前商店街、80年代末期にはその先に続く中心商店街で近代化事業が完成。駅前商店では「現代版店舗長屋」とも言うべき、低層の店舗ビルがアーケード街を形成。中心商店街でも、当時の地方都市としては先鋭的な歩行空間の通りが整備された。

しかし、近年は中心市街地が空洞化し、駅前商店街も空き店舗が目立つようになってきた。2006年には駅直結の百貨店が閉店。その跡地は現在も更地(駐車場)のままとなっている。中心商店街では、空き店舗に今風なゲストハウス兼カフェなどが出店しているが、郊外へ流出した購買客は戻っていない。

そんな中、同市では駅西口北側の一体を再開発し、タワーマンションやホテルを建設する計画が持ち上がっていた。しかし、08年に一旦白紙撤回に。マンションなどが立地し、ビジネスホテルの建設も始まっているものの、今なお広い更地が広がっている状態だ。

同市では現在、ワークショップなどを開催し、複合施設の基本構想を練り直している。具体的な計画が明らかになるのはしばらく先になりそうだが、かつての商都を復権し、駅前の立地を生かしたたまちづくりの計画に期待したい。

★北秋田市

周辺広域に求心力を持つ旧鷹巣町。
相次ぐ新施設オープンの効果は?

公立病院跡地にオープンした複 合施設「北秋田 市民ふれあいプ ラザ・コムコム」

秋田県北部内陸に位置し、2005年に旧鷹巣町・合川町・森吉町・阿仁町の合併により誕生した北秋田市。由利本荘市に次いで県内第2位の面積を有し、市域の大部分は山林となっている。現在の人口は約3万人、市域全体で過疎化の進行が著しく、長らく減少傾向に歯止めがかかっていない。

中心市街地は、旧鷹巣町のJR奥羽本線「鷹ノ巣」駅・秋田内陸縦貫鉄道「鷹巣」駅の南側一体に広がっており、市役所もある。旧鷹巣町はもともと一寒村に過ぎなかったが、明治初期に村役場が設置されて以降は、行政の出先機関などが集中。それに伴って商業の集積も見られ、広域に求心力を持っていた。現在でも、「鷹ノ巣」駅に降り立つと、駅前からは比較的長い距離のアーケードが連なり、周辺広域から人々が集まるまちだったことがうかがえる。

なお旧鷹巣町の中心市街地は、1950年の大火で大部分が消失、その後の復興計画により再建された経緯もあり、人口規模に比して大きな市街地といった印象だ。ただ、エリア全体の急速な過疎化に加え、大型商業施設の郊外立地などにより、近年は衰退が著しい。

こうした中、16年、駅前から続く商店街の一画にあった公立病院の跡地に、公民館など多目的ホールを中心とした複合施設がオープンした。多くの来場数を集めているとの報道もあるが、商店街への波及効果は未知数だという。

一方、「鷹ノ巣」駅前でも、県内出身の建築家が貸しスペースやカフェなどのコミュニティ施設をオープンした。衰退する市街地にあって、これら個々の動きが、どのようにまちの活性化につながっていくのか注目したい。

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