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ヨルダンの本屋で働くってどんな感じ?「戦力外通告」をのりこえろ!

中東ヨルダンにある素敵な本屋に一目惚れし、「ここで働かせてください!」と飛び込み、本屋で暮らしていたときの話。(詳しくはこちら

本屋ファミリー

当店で働くスタッフ8人には、本屋、大工、キッチン、バリスタなど色々な業務があった。この記事では「本屋」の仕事を紹介する。

●とにかく仕分け!本屋業務の仕事

私が着いた時は、こんな整然としていなかった

私が本屋に到着したばかりの頃。当店の本はカテゴリ別にまとまっておらず、ごちゃ混ぜで床にどさっと置かれていた。これを「仕入れたてホヤホヤ」と言うか「置きたてぐちゃぐちゃ」と呼ぶかは、スタッフに委ねられている。なぜなら当店では個人の裁量が大きいからだ。

店長に「ブックショップガールズ」と呼ばれる私とラウラの任務は、本の仕分けだった。先に言語別に分け、そこからジャンル別に分けていくらしい。

●言語別に分ける仕事(撃沈)

「仕分けちゃうわよ〜!」と意気込む、ブックショップガールズ

当店には、色んな言語で書かれた本がある。英語の本が5割を占め、4割はアラビア語で、残りの1割に「その他の言語」が混在していた。大きくその3種類には既に分け終わっているようだ。

まずは「その他語」をさらに細かく分類していく業務が残っていたので、やってみることに。

さて、どれどれ。「その他語」の本の表紙をよく見てみるとÄ」や「è」のように「謎の記号付きアルファベット」が並んでおり、「どうやら英語ではない」ことだけは分かる。きっと様々なヨーロッパ系の書籍が混ざっているのだろう。

しかしそれぞれ何語なのか?まじまじ見たところで見分けがつく訳もなく、私は参ってしまった。

しかしイタリア人のラウラにとっては「ご近所の言語」であるためか「これはドイツ語だわ。あ〜イタリア語の本もあるのね」と、スイスイ仕分けをしている。

くっそ〜〜!!!私だって、漢字の本なら「日本語、繁体字、簡体字」に分けられますけどね?

しかしその「漢字分別スキル」は当店において、「メダカのオスとメスなら見分けられるんですけどね」という書店員ぐらい、需要がまるでなかった。

この本屋で「ドイツ語とフランス語」を見分けられない無力な私。それはまさに、レタスとキャベツの違いが分からぬ八百屋スタッフ…いや、アジとサンマの違いを知らない魚屋スタッフ…

いや、半袖と長袖を見分けられないアパレルスタッフのレベルで、全く役に立たなかった。


ラウラ、あとは頼んだぞ。

私は静かに部屋を後にした。

●カテゴリ別に分ける仕事(恐怖)

アカデミックルーム。最初、全ての棚は空っぽだった

セルフ戦力外通告に撃沈し、本屋をウロウロ。ふと「アカデミックルーム」という別部屋に行ってみると、無力な私にもできそうな業務を発見。それは「英語の本をジャンル別に分ける」ことだった。

このアカデミックルームでは本棚が空っぽで、収められるべき大量の本が床に「山」…いや「山脈」を作っていた。歩くたびに砂埃が舞い、それが光にキラキラと照らされ、神秘的とも荒廃的とも言える状態だ。

そこで、山脈を成しているこの英語の学術書を一つ一つ手に取り、「これは会計の本だ」「これはサイエンス」「看護学と医学は同じってことでいいのかな…いや、一応別にしておくか」と、分類しながら棚に詰めていくことに。

途中でラウラも参戦

床にある「本の山札」はカテゴリごちゃ混ぜで砂をかぶっており、一冊一冊手にとって砂埃を払うまで内容は分からない。

なんだかこの「岩っぽい空間で本の表紙をはたく」状況、ハリーポッターの世界観みたいで楽しい!と思った。そして私はハリーポッターを観たことがない。怖いからである。

この作業で「要注意」なのは、医学の本だ。なぜなら医学書には手術関連の本も多く、なんと表紙が「手術中の写真」だったりした。

ホコリを払って「その写真」がうっかり見えてしまうとめちゃくちゃ恐怖。作業していたみんなで「ギャアアアアア」「よりによって、何でこの写真を表紙にするかね!?」「最悪…また見ちゃった、無修正よ」とか言いながら、ビクビク分類していた。

ハリーポッターさえ怖くて観られないのに、手術書なんか見たら私はショックで倒れるに違いない。せっかくヨルダンに着いたのに日本に救急搬送されてしまうだろう。マリオパーティーで「スターのマス」まで来たはずなのにトラップで遠くに飛ばされた、あの苦い記憶が蘇る。

やっとスター(ヨルダン)まで来たのに…!?

私は絶対に医学書という「ジョーカー」を引かないべく、なるべく数学っぽい本を手にとるよう意識していた。コツは、グラフや数字のデザインがうっすら砂に透けた表紙を選ぶことだ。

ここアカデミックルームでの「本山」の仕分けには、ひたすらやって1週間ほどかかった。ついに全て棚に収まった時は本当に達成感を感じたものだ。

私たちはこの後しょっちゅう、「ああ、なんで棚に本が入る前の『before写真』を撮らなかったのかしら…」「ね、あの山の状況ほんとすごかったのにね、しまった…」と反省をしていた。

カテゴリのパネル。私が来る前にいたスタッフが描いたらしい

床に積まれた大量の本は、こうしてなんとか言語やカテゴリ別に分けることができた。すごい達成感だ。この店の恐ろしい本は全て「医学」の棚によけておきましたので、どうぞ安心してお越しください。

当店の「安全」は、私たちの"体を張った"業務の賜物なのであった。(涙)


「本屋」の仕事紹介編・fin

●次回:大工チームの仕事はどうなの?

●本屋の仕事一覧
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第1話 「ヨルダンの本屋に住んでみた」
本屋のルームツアー
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