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ハズキルーペのCMとヒガシマルのCMの共通点

2018年に一世を風靡?した2つのTVCMの「ハズキルーペ」と「ヒガシマル」。
今回はCMがもたらしたインパクト(=売上や認知度への寄与)ではなく、特長的なTVCMが生まれる「プロセス」についてブランドマーケティング目線で妄想します。

目次
1.ハズキルーペとヒガシマルのCM紹介(知ってる方は飛ばして下さい)

2.ハズキルーペとヒガシマルのトップ層(知ってる方は飛ばして下さい)

3.マーケティング企業におけるTVCMの作り方(ココだけでも勉強になるかも?)

4.ハズキルーペとヒガシマルのTVCMがもたらす影響

5.オーナー企業とマーケティング企業のTVCMにおける意思決定の違い

1.ハズキルーペとヒガシマルのCM紹介
まずは、広告関係者の度肝を抜いたハズキルーペのCM。誰に刺さるかが一瞬で分かる、この突き抜けた感じが各所で話題となりました。

https://youtu.be/0Efumx0B9VI

続いて、ヒガシマルのCM。これまた何とも耳に残る感じのCM。しかも歌い手は90年代にスマッシュヒットをもたらした「たま」。

https://www.youtube.com/watch?v=xa79Dz3geOk

個人的にはタイトルの問いの回収は早い方が嬉しいので早速問いを回収。

この2つのCM共通点は・・・放映する2つの会社がどちらもオーナー企業ということ

詳しい違いの説明は5章で説明。以降でご説明

2.ハズキルーペとヒガシマルのトップ層
ハズキルーペのCMについては様々な所で制作秘話が語られている通り、社長のトップダウンで作られたTVCMです。

【参考】ハズキルーペのCMが出来るまでのマーケティング戦略的な経緯は、こちらのブログで丁寧に説明されているので紹介しておきます。

会社ホームページによると、ハズキルーペは2007年にプリヴェ企業再生グループ(株)が買収し、現在の松村会長を据えたようです。松村会長の役職も「代表取締役会長兼最高経営責任者」と、全ての権力が集中している雰囲気を感じさせる肩書漢字の長さです。

出典:会社ホームページ https://www.hazuki-l.co.jp/company/index.html

同じく、ヒガシマルも鹿児島にあるゴリゴリのオーナー企業。会長から社長、取締役の過半数に東家一族の名前が連なっています。

出典:会社ホームページ https://www.k-higashimaru.co.jp/company/outline.html

3.マーケティング企業におけるTVCMの作り方

私の上司達はP&G出身者が多いため、いわゆるP&G型のプロモーションアプローチを教わってきました。ここでTVCM制作のやり方を簡単に紹介します。

1.製品の認知度・理解度を定量調査で数値化

2.売上目標(KGI*)を達成させるためのKPI*指標値を設定(シーズン商品やシーズン訴求の場合は、製品×シーズンでの使用理解度を数値化)

3.KPIを達成する事を目的としたTVCMの制作開始 ←ここがポイント①

4.TVCMのコンセプトを制作会社と共に決定

5.CMのシーン別に伝えたい内容を整理(Scene by Scene Objectiveと呼ばれ
ます) ←ここがポイント②

6.伝えたい内容を正しく理解する映像を制作

7.完成TVCMがシーン別に伝えたい内容が伝わっているか定量調査2回目

*KGI:Key Goal Indicater、KPI:Key Perfomance Indicaterの事。KGIを達成させる中間指標をKPIと呼ぶ事が多いです

つまり、上記プロセスによると、マーケティング会社におけるTVCMの役割はKPI(ひいてはKGI)を達成させる為の手段となります。その為、KPIを達成させないTVCMなどゴミ同然となります。

すると必然的に上記4~5のCM全体のコンセプト決定の段階から、手堅く入った内容となる事が多いのです。(手堅く進めたTVCMは過去紹介のブログからどうぞ)
加えて、ブランドマーケ担当者は様々なKPI指標を達成したいので、短いCM中で伝えたい内容がどうしても多くなってしまい、CMでの表現も説明口調となります。

4.ハズキルーペとヒガシマルのTVCMがもたらす影響

これに反して、ハズキルーペのTVCMでは製品の説明口調を敢えてネタにした全体の構成。
CM好感度やブランド好感度を考慮すると、ここまで突き抜けた演出を表現する事は普通のマーケティング担当者に許容できただろうか。
さらに100億円を超えるCM量を投下する事を決めている前提です。失敗は許されない中ではどうしても手堅い内容(=広告代理店から提示されるカッコいい内容)となる事は想像つきます。

さらに、ヒガシマルのTVCMに至っては「きつね~たぬき~」と歌のみ。
映像も丼の下で動物が謎のダンス。ほとんど何のCMだったのか理解できません。
私が見ても製品のKPIを達成させることを目的としたCMとは考えられませんし、シーンバイシーンオブジェクティブなどあるとは到底思えません。

だがしかし、つい耳に残ってしまい、気になってWEB検索する人が続出。
結果的にWEBで商品理解できるので、
TVCMとWEBが補完しあってマーケティングプロモーションが成り立っていると推察します。

5.オーナー企業とマーケティング企業のTVCMにおける意思決定の違い

4章のまとめ
・ブランドの売上目標を100%からちょっとだけプラスで達成させる事が求められるマーケティング企業
・大規模広告投資を前提としている中で失敗が許されない広告担当者

これらの人たちが考える良いTVCMとは「再現性が取れて設定した目標が達成できる内容」となります。

しかし「ホームランを狙って話題をかっさらうTVCM」を作ろうと思うと、どうしてもリスクを取ることになるので、それができるのはオーナー企業が相性が良いのではないかと思います。

まとめ

オーナー企業の社長と雇われ社員の立場で求めるものが異なり、それがTVCMの表現方法に影響を強く及ぼすだろう、という事でした。


個人的にはリスクを冒してチャレンジしたマーケターが評価される仕組みが出来ると、もっと面白い広告が生まれるだろうなと考えています。

藤本たぬき

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