いくつかの企業による品質不正問題が取り上げられています。検査結果の改ざんなどによる不正問題は、昔から存在していて、なかなかなくなりません。
いくつか記事を抜粋してみます。
5月11日日経新聞「「不正起きる環境変える」 トヨタ佐藤社長 初の決算発表」
5月11日日経新聞「管理職5000人と出直す 三菱電機社長が抱く危機感 三菱電機、不正からの再起(3)」
4月29日の日経新聞「ダイハツ社長「1回で試験通す重圧か」
上記などの背景として、「お客さまより自社優先となっていて、真の意味でお客さま第一の考え方が実践できていない結果」「目標という手段が目的化してしまい、目標マネジメントがねじ曲がっている結果」などの指摘ができそうです。
上記に共通しそうな別の観点としては、その組織に「心理的安全性がない」ということが、指摘できるのではないかと考えます。
ヤフーニュース「「心理的安全バブル」にご注意を! : 心理的安全とは「みんな仲良くぬるま湯につかること」ではない!」(中原淳立教大学 経営学部 教授 2020/6/19)に示唆的な内容があります。一部抜粋してみます。
もし「遠い存在の本社より、職場の人間関係に従うのが当然とみなす」の結果、不正は本来まずいだろうと思いながらも、「職場の人間関係で丸く収めていれば問題にならないのだから、前例にならって穏便にいこう」と思ったとしたら、それは上記指摘にある「ぬるま湯や単なる「関係の質」を高めること」に当たるのでしょう。
あるいは、もし「車作りに携わっていて、不正をやろうとしてする人間は本来いない。何か環境条件がある」ということで、不正に対して「これはまずいのでは?」と声をあげようとしてもそれが聞き入れられないと感じてしまって声をあげられない、実際に声を上げたが干されてしまっていた、などであれば、それは「対人関係上、亀裂や破壊がおこらないという共有された信念」に当てはまりません。
いずれにしても、上記にある心理的安全性の定義を満たしていないことになります。
「信念」とは、どういう意味合いでしょうか。Web辞書を引くと、「固く信じて疑わない心」「物事を正しいと信じて疑わない自分の気持ち」などと出てきます。
「経営理念」などで使われる「理念」とは、「ある物事において「このようにあるべき」というような根本となる考えを意味するもの」と説明されています。考えの共有である理念の共有よりも、「信じて疑わない気持ち」という、個人の感情の要素が加わる「信念の共有」である心理的安全性は、かなり実現が難しいと考えることもできそうです。
だからこそ、有力企業と言われる企業であっても、実現が難しいのだとも言えそうです。冒頭の事例は他社で起こった特別なケースというわけではなく、自社でもいつでも起こりえる事象だととらえるべきなのだと思います。
実現が難しいがゆえに、息の長い包括的な取り組みが必要なのだと考えられます。上記記事では、そのことについて次のように考察されています。
ちなみに、同記事では次のようなお話もあり、たいへん示唆的に感じました。
<まとめ>
不正問題発生の背景には、心理的安全性の大きな欠落が一因と考えられる。