中堅企業という区分
4月22日の日経新聞で、「小さくても勝てる(1)「隠れチャンプ」に光を 中堅・中小、大企業上回る潜在力 経済再生の主役に」というタイトルの記事が掲載されました。
「大企業」と「中小企業」の間に、新たに「中堅企業」の区分をつくることの意義について各所で聞かれるようになりましたが、その動きについて取り上げたものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
日本では、法人税の観点で、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人で、さらに一定の条件を満たした企業が中小企業として、さまざまな税制優遇措置が受けられます。(法人税以外の観点では、「中小企業」にはまた別の基準があります)
これは、中小企業が大企業に比べると自己資本が少ないことにより、業績が悪化する局面で資金繰りが悪化しやすく、倒産リスクが高いことを考慮したものと言えます。中小企業の倒産が増えれば経済への影響が大きいため、中小企業が安心して事業活動を行えるようにしている政策です。
中小企業の税制優遇には以下のような制度があります。
・法人税率の軽減
・欠損金の繰越・繰戻
・交際費等の損金算入の特例
・中小企業投資促進税制
・中小企業経営強化税制
・少額減価償却資産の特例
・固定資産税の特例措置
・研究開発税制(中小企業技術基盤強化税制)
・消費税の特例
これらの適用などを目的に、大手企業と言われている企業が資本金を1億円以下に減資して、中小企業に変身する事例も見られます。
企業は、税制優遇を受けるために存在し、経営がなされているわけではありません。その企業ならではの商品・サービスの提供を通して社会に貢献し、従業員をはじめその企業にかかわる人を幸せにするために存在します。その存在意義に沿って、企業を成長させたいという思いは、程度差はあれどの企業ももっているはずです。
一方で、企業の経営は厳しいものです。上り坂、下り坂に加えて、「まさか」があると言われます。従業員や社会に責任を負っている経営としては、自社の持続可能性を高め続けなければならないという大テーマを常に抱えています。
よって、リスクをとって成長を追い求めようにも、そのことによって様々な優遇措置を受けられなくなり持続可能性が下がってしまうなら、現状を維持して安全パイを引き続けようとしたくなるのは、自然なことだとも言えます。
そうした誘因と一線を画すよう、成長意欲のある中小企業を政策的に後押しし、より社会に広い影響力を与えられる企業を増やしていく動きは、とても有意義であると考えます。
同記事で、中小企業が賃上げしたほうが、大企業が賃上げするより経済効果が大きいとあります。近年でも、中小企業のほうが大企業より賃上げの動きが遅れています。このことからも、中小企業のほうが賃上げ分が可処分所得の比率上昇に直結しやすくなる状況と言えるため、賃上げ効果が大きいという事象は当然のことと言えます。
成長意欲のある中小企業を、中堅企業、さらには大企業へと押し上げていくことで、こうした正の効果も増えていくものと思われます。
中小企業としては、中堅企業向けの今後の政策的動向にも注目しながら、経営戦略・計画に反映していくことが望まれると思います。
<まとめ>
中堅企業という新たな区分に注目する。
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