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日本での投資におけるマクロ環境の追い風(2)

4月12日の日経新聞で、来日した米著名投資家のウォーレン・バフェット氏に関するインタビュー記事が複数掲載されました。世界で最も信用力のある投資家とも言われ、世界一の富豪になったこともあるバフェット氏の見解は、投資家だけではなく企業経営に関わるすべての人にとって示唆的だとされます。今回の来日では何を話したのか、今日のテーマにしてみたいと思います。

関連記事からいくつか抜粋してみます。

米著名投資家のウォーレン・バフェット氏は11日、日本経済新聞の単独インタビューに応じ、日本企業について「考えている会社は常に数社ある」と追加投資を示唆した。すでに保有する5大商社株の保有比率はすべて7.4%に高め、米国株以外では最大の投資になったことも明らかにした。「重要なのは良いビジネス、適切な価格、良い経営への投資だ」と、企業の本質を見抜くことの重要性を強調した。

米投資会社バークシャー・ハザウェイを率いるバフェット氏は、商社の保有を「とても誇りに思っている」と話した。着目した理由について「バークシャーと(事業が)非常に似ている」ため理解しやすいと説明。「将来、事業のパートナーとしての関係を築くことも不可能ではない」と、事業上のつながりを持つ考えを示唆した。

世界の金融市場では、米シリコンバレーバンクなどの連鎖破綻をきっかけに、金融不安が浮上している。バフェット氏は「マネーが引き潮になれば誰が裸で泳いでいたかわかる」という自身の格言に絡め、「(破綻した)銀行の人々は裸で泳いでいた」と、金融緩和に油断して無謀な経営をしてきた地銀を批判した。

企業の分析を尽くすことの必要性を強調した。商社の株保有も分析の結果だ。「購入を始めたときは、私にとって新しい企業ではなかった」と、長期間買う機会をうかがっていたことを明らかにした。

今後は「日本の全ての主要企業を観察するだろう」と日本株に関心を示した。投資する企業の条件は「事業内容を理解できる会社」と、株価が割安であることの2つだ。数十年保有する銘柄を引き合いに「コカ・コーラもアメリカン・エキスプレスも、5商社も理解できた」「商社の株価が(購入した当時の)2倍だったら買っていなかった」と振り返った。

岸田政権や植田和男氏が新総裁についた日銀については「必要なのは政府が民間産業を通じて経済を発展させることに賛同していると感じられることだ。その点では米国も日本も心地よい環境だ」と述べるにとどめた。

先日、日本での投資にマクロ環境の追い風が吹いているということを考えましたが、バフェット氏もやはり同様の見立てのようです。景気動向の動きに加え、地政学、金融、政策の観点から、米国と日本が有力だと見ていることがうかがえます。この時期に2度目の来日ということが、象徴的に感じられます。

事業内容を理解できる会社」を挙げている点は、示唆的です。言い換えると、本質的、長期的な観点から選んでいるということだと考えます。「何をやっているかよくは分からないが、トレンドと言われる分野で伸びているから」「チャートが買いのサインを出しているから」などは、投機としては有効な視点なのかもしれませんが、本質的な投資の視点ではないということだと思います。

この点について、投資家に限らず、企業内の事業活動での意思決定や検証に通じる視点だと思います。

先日もある企業様にて、「担当がこういうのをやりたいと言って、DX関連の提案をしてきて、予算を求められた。そういうのもやっていかないといけないだろうとは思っていたので、よくわからないが善は急げで、一任して予算を承認しようと思う」というお話を聞きました。投資のスピード重視は重要な視点ですが、責任者がよくわかっていないものへ投資を認めるというのは、本質から外れていると申し上げた次第です。この手の例は、身近にあるのではないかと思います。

バフェット氏は、日本企業について「かなりうまくやっている。100%出資している会社であれ、一部出資の会社であれ、経営に問題があると判断した場合はその会社は買わない。日本の5大商社に対しては経営者が良い判断をし、お金を使い果たすこともないという印象を持った」とも語っています。共通の領域として、事業活動でパートナーとなる社外の企業を求めていくにあたっても、候補先の経営陣がよい判断をしていると思えるかどうかが重要な視点だという基本的なことを、認識させられる示唆です。

また、バフェット氏が日本企業の中にも積極的な評価ができるところが増えたとしているのは、明るいニュースだと受け止められます。

インフレ抑制を狙う世界的な金融引き締めで景気が悪化し、同氏は再び輝く。米地銀の連鎖破綻で揺れる米国では、地銀への投資を模索していると取り沙汰される。「他人が怖がっているときは貪欲に」は、同氏の信条だ。

貪欲さを投資先にも期待する。愛読するケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」12章は、「企業がアニマルスピリッツを失えば死滅する」と警告する。

その点で見劣りするのが日本企業だ。世界の上場企業の研究開発投資に占める日本企業の比率は06年、21%を占めていた。15年後の21年はわずか10%だ。設備投資の比率も同期間に11%から8%に低下した。これでは世界で戦えない。

同氏は1989年と2021年の世界の時価総額上位20社を比べた。89年に上位を占めた日本企業は去り、米企業は石油や総合電機からGAFAMなどに一変した。「変わらない会社は消える」。冷徹な歴史だった。

バフェット氏は日本が巻き返せると期待する。「米国を買おう。私は買っている」。危機で真っ暗だった08年10月、同氏は米紙に寄稿してアニマルスピリッツを訴えた。「米国」を「日本」に置き換えたのが、11日の日本買いの表明だ。

野心が衰えた日本企業は現金をためた。時価総額に対する手元資金は22年、米欧企業の7%台に対して26%に及ぶ。成長にどう使うのか。「日本の大企業すべてを観察する」。92歳にして血気盛んな投資の神様の一喝が響く。

長期的な企業成長は、研究開発・設備投資・人材投資の3大基礎投資の結果で決まっていきます。バフェット氏の示唆も参照に、的確なアニマルスピリッツを発揮した投資活動を改めて考えるべきなのだと思います。

<まとめ>
よく理解したものに対して、適切な価格で投資する。


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