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統合型リゾート(IR)の影響を考える(2)

前回は、大阪で計画されることになった、日本初のカジノを含む統合型リゾート(IR)をテーマにしました。雇用面において相応の影響をもたらすのではないかと考えました。今回は、売上面について考えてみます。

蓋を開けてみないと分かりませんが、カジノの売上については、日本人利用者ではなく、ほぼ外国人旅行者に依存する形になるかもしれないと想定します。

例えば、事実上の公営ギャンブルと言われるパチンコ産業ですが、縮小が続いています。かつては30兆円産業と言われたパチンコビジネスの市場規模は、レジャー白書によると2012年には約26兆円だったのが、2022年には約15兆円まで減少しています

ピークで3000万人と言われた遊技人口も、2022年に720万人まで減っています。以前はパチンコ依存症という言葉も盛んに取り上げられた時期がありましたが、その候補となる人口が減っていることになります。

この間、スポーツ振興くじ、ボートレース・競馬等の公営競技の参加人口は増えました。例えば、JRAによると競馬は2012年の参加人口約1億6200万人(これは、延べ人数と思われます)だったのが、2022年には約1億9700万人にまで伸びています。売上も、この間約2.4兆円から3.5兆円まで増えています。決して、日本におけるギャンブル人口・規模そのものが減ったというわけでもなさそうです。

ではなぜパチンコ産業は大きく減らしているのでしょうか。台の魅力の低下などもあるのかもしれませんが、オンラインで可能なものが広がったことの影響が大きいと想定されます。

つまりは最大の要因は2つで、パチンコという娯楽は「現地現物でないと遊技できない」「遊技に時間がかかる」ことが、遊技人口・市場規模の減少につながっているのではないかと考えます。

例えば、上記競馬も、競馬場への入場者数は、2012年620万人から、2022年279万人にまで減っています。コロナ禍の影響もありそうですが、コロナ禍前の2017年でも617万人と、2012年からほとんど変わっていません。上記の参加人口の伸びは、オンラインによる馬券購入や町中にある場外馬券売り場によるものと想定されます。

現地に行かず、オンラインで馬券購入するなら、事前に予約購入しておき当日終了後に結果を確認するだけでも参加できます。一方で、パチンコはこの楽しみ方ができないわけです。

オンラインで様々な娯楽や休日を過ごすライフスタイルに慣れ、タイパも重視する若者には、「現地現物で長時間」のパチンコは、今の形のままでは訴求が難しいのが現状だと考えられます。

この記事を考えていたところなので、パチンコ店をのぞいてみました。遊技者の多くは高齢者。若者も所々見かけますが、ほとんどの人が台を見ておらず、打ちながらスマホを見ているという感じです。

「現地現物で長時間」のIRによるカジノも、パチンコに近い結果になるのではと想像します。加えて高い入場料が課されるとなると、カジノ目当てで頻繁に来店する日本人は、実質的にはあまり出てこないのではないでしょうか。

運営側としては、カジノでの売上・集客に関しては、外国人に対する訴求と外国人が楽しみやすい環境づくりに施策の的を絞るのがよいのかもしれない。そして、日本人に対しては、カジノ以外を訴求の主軸に捉えたほうがいいかもしれない。そのように考えてみた次第です。

<まとめ>
同じギャンブルという領域でも、「現地現物で長時間」は縮小しているが、時間・場所を問わないものは伸びている。

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