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コア以外のサービス要素を手放す

先日、仕事の旅程の関係であるホテルを利用しました。同ホテルでお話もお聞きしたところ、もともとマンションだったようです。今では、マンションとして居住されている人と、私のようにホテルとしてスポット利用する人と併存しているということでした。

同ホテルは、大手の宿泊予約サイトで予約しました。温泉地でもあったため、せっかくなら温泉利用ができるホテルを探しました。和室で1泊数万円の高いところから、3,000円程度の安いところまでいろいろ出てきた中で、1万円弱の適当そうな同ホテルが目に留まったので、そこにしてみた次第です。

なんといっても魅力的だったのは、「部屋の浴室で源泉が出る」ということでした。贅沢なつくりには見えませんでしたが、サイト内の説明と写真のイメージでは、他に出てきた候補とさほどの違いは感じず、いわゆるホテルかなという感じでした。

当日泊まってみたら、事前の期待とはいろいろな点で違っていました。

・連泊の場合、連泊時の客室清掃をしない(清掃するのが基本で、「清掃不要」を申し出たら清掃しないやり方ではなく、清掃自体を受け付けない)。連泊時はタオル交換のみ。アメニティ類を希望する場合は、申し出が必要。

・製氷機がない。氷が欲しい場合はフロントで有料にて販売。

・正面玄関は22時~6時まで施錠。その間に外出したい場合は、フロントに相談。

・大浴場にタオル、アメニティは設置なし。必ず部屋から持参。

・朝食は定食のみ(ビュッフェ形式の選択なし)。それも、和洋のどちらかを選ぶ形式ではなく、和の一択で統一メニュー。

・19時以降は部屋の精算ができない。19時を過ぎた場合は、朝チェックアウト時に行う。

一言でいうと、「手間を省いてコスト削減している」です。マンションの居住者向けがベースになっているため、ホテル利用だと一般的となっているサービスを行わないのでしょう。受付は、マンションの管理業務も兼ねることができるため、効率的に見えます。

大浴場は、部屋の浴室より広いもののさほどのスペースでもなく、「サイト掲載の写真は、うまい角度から撮ったものだ」という感じです。

部屋のつくりは、コンロを取り外して調理できないようにしている以外は、1LDKのマンションそのものです。居住用ベースなので、個人的にはうれしい、風呂とトイレが別室。簡素なつくりです。一般的なホテルのイメージで行きましたので、期待と大きく異なりました。

それで、どう感じたかというと、失望ではなく大いに満足でした。

同ホテルの強みは、何といっても「部屋の浴室で源泉が出る」、この1点です。水を入れてうめないと、そのままでは入れないような熱い源泉が、部屋でたっぷり堪能できました。値段もそこそこリーズナブル。それ以上のサービスは特に求めていません。このことが当てはまるのは、私だけかもしれませんが、価格帯等の設定から他の多くの利用者もおそらく同様だと思います。

私のように、大手の宿泊予約サイトで検索して宿泊した人の場合、他のホテルのサービス内容から連想するために、上記のようなサービスは間違いなく期待を下回るでしょう。私も、チェックイン時に受付で説明を受けた時は、「いろいろなものがないのね」という、少しネガティブなイメージでした。

しかし、部屋に入って源泉を利用すると、それだけで満足です。簡素なつくりですが不便はありません。朝食もメニューは一択でしたが、よく作り込まれていておいしい食事です。もともと、高級旅館やサービスが充実しているホテルなどと思っていません。十分な内容でした。

・お客さまの期待に対して、外してはいけないコアの要素は、外さないようにする。
・コア以外の要素は、思い切って捨てる。

同ホテルに、マーケティングの本質を見たような出来事でした。身の回りの仕事でも応用できる視点だと感じた次第です。日本のサービス産業は生産性が低い、などと言われることがありますが、同ホテルは高そうです。

インバウンドや民泊なども、また盛んになってくることと想定されます。収益性向上も兼ねた、こうしたタイプの宿泊施設も増えてくるのかもしれないと思います。

<まとめ>
集中すべきことを定義し、それ以外は捨てる。

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