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現預金から投資へのシフト(2)

5月1日の日経新聞で、「個人投資家調査(上)20代の36%、給料の2割以上投資」というタイトルの記事が掲載されました。新NISA・株高もあって個人の投資意欲が高まっていることを取り上げた内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

日本経済新聞社は3月下旬、調査会社マクロミルを通じて投資経験のある20代から60代までの2900人にアンケートした。明らかになったのは、「貯蓄から投資」の加速だ。今年からスタートした新NISAがこうした変化に拍車をかけている。

資産運用のイメージを複数回答で聞いたところ、最多は「将来の生活資金の備え」(78%)で、「貯金のようにコツコツ行うもの」(50%)が続いた。「ギャンブルの一種」(12%)や「お金持ちがやるもの」(16%)との答えは少数派だ。

投資の一般化を示すデータといえるのが、給料や年金といった定期収入の何%を資産運用に回しているのかとの問いだ。「10%以上」とする回答は50%に達し、「20%以上」も26%に上った。

世代別でみるとより顕著だ。Z世代である20代は、「10%以上」が62%、「20%以上」が36%に達した。「50%以上」との回答も7%あった。娯楽費や食費などを切り詰めて投資に回す姿が見て取れる。

「投資が上向けば生活が楽になる」。東京・銀座にある投資家バー「STOCK PICKERS」を24日に訪れた20代男性はこう語る。2020年に会社に入ると同時に投資を始めた。現預金は100万円を上限にし、それを超えた額は全て投資に回す。月10万円ずつ米株指数連動の投信に積み立て、残りは国内の中小型株に振り向けているという。

個人はかつて短期売買の傾向があるとされたが、今や昔だ。投資方針について尋ねたところ、最多は「長期保有だが、ある程度の値上がり益があれば売る」の36%だった。次いで「長期保有で値上がり益が出ても売らない」が28%に上り、「長期保有」は計64%に達した。「値上がり益を重視し、短期で売却」は11%にとどまった。

多くの個人が投資に目を向けるのは、インフレの影響も大きい。円安の加速も相まって、生活の中で円の価値が日増しに目減りしている。少子高齢化の進展で将来もらえる年金が減る可能性は高く、「老後2000万円問題」を貯金だけで乗り切るのは困難な情勢だ。デフレから脱しつつある中で、老後の生活のために投資せざるをえない現実がある。

国内最大級の日本株アクティブ型投信を扱うレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長は「新NISAが始まり、脱デフレが実現しつつある24年はリセットの年」と語る。個人もこれまでの殻を破り、新たな時代にあわせた投資行動が求められそうだ。

上記記事は、「投資経験のある20代から60代」ですので、投資経験のない人は対象に含まれていません。よって、記事の内容は、日本人全員の投資に関する行動の平均どころというわけではなく、全体で考えるには少し割り引いてみる必要があります。

そのうえで、若手世代がけん引し投資意欲が高まっていること、投資という行動が日常的になっているであろうことがうかがえます。

今年1月に投稿した「現預金から投資へのシフト」では、次のように紹介していました。同記事の様子から、その後も投資資産の比率は高まっているものと想定されます。

・約2年間で、家計の金融資産に占める現預金の比率が54%→52.5%に減り、投資資産の比率が15%→20.2%に増えた

・資産形成に積極的な若手世代が、新NISAなどの情報にも感度が高く、この比率変化の要因の大半を担っていると想定される

1年前の6月に投稿した「若手世代の投資意欲」でも、「これから労働力人口となる世代は、インフレ・株価上昇を当たり前のものとして、投資に向き合うようになると想定される」ことについて考えました。その流れは、所与のものとして定着に向かうのではないかというのを、同記事からも改めて感じます。

「定期収入の10%」は、手取りの所得が年300万円だとすると、30万円になります。20%なら60万円です。私が20代だった頃は、周囲でこのような金額を投資に回す人は皆無でした。私自身はその頃も多少取り組んでいましたが、そこまでの規模ではありませんでした。

私が学生時代に、教師から「投資はギャンブルのようなもの」という内容の説明を受けた記憶があります。当時としては、その感覚が一般的だったのだろうと思います。その後、金融教育の概念と内容も変わっていき、社会全体で投資というものへの向き合い方、具体的な行動も変わっていったものと思われます。

「失われた30年」などという言われ方をすることがありますが、その期間は投資が停滞していた時期だとも言えます。

投資が消費や次の投資を喚起し、経済を好循環させる流れができてくれば、経済環境もこれまでとは違った流れになるかもしれません。

企業の視点としては、投資が一層日常的になって消費余力も高める個人に対して、訴求できる自社の商品・サービスが何かを追求することが一層大切になってくると考えます。

<まとめ>
現預金から投資資産、の流れは続いている。

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